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コロナ療養のみなし入院給付金。支払い条件見直しは有り?無し?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
給付金見直しのイメージです。(写真:イメージマート)

保険会社が販売している医療保険では、新型コロナウイルスに感染し療養が必要となった人に対して、一律に入院給付金を支払ってきました。ところが、今後は支払い対象者を限定すると報道されています。コロナが不安で医療保険に加入した人もいるでしょう。支払い基準の見直しは、改善なのか?改悪なのか?契約者にとって有り?無し?どちらでしょう。

今後のコロナ感染による医療保険の支払いは限定へ

今後、大手保険会社を中心に2022年9月26日以降のコロナ感染による在宅療養などへのみなし入院の対応が変わります。

具体的には「みなし入院」のお支払いの対象が「重症化リスク」の高い人になります。

・65歳以上の方

・入院を要する方

・重症化リスクがあり、新型コロナ治療薬の投与または新型コロナ罹患により酸素投与が必要な方

・妊婦の方

年齢制限に意味があるのかわかりませんが、入院が必要な人や重症化する可能性がある人には、みなし入院であっても給付金が支払われますが、上記に限定された場合、64歳未満の現役世代や未成年は対象から外れることになります。

なんだか不公平な気もします。

コロナ禍で対応を迫られた保険金・給付金

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年に遡ります。

2020年1月下旬に、厚生労働省から新型コロナウイルス感染症を指定感染症とする旨の通知がありました。(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000589747.pdf)そのため、生命保険会社各社は、約款の解釈変更などを実施、新型コロナウイルス感染症による死亡、高度障害に対し災害保険金を支払う取り扱いを始めました。

これにより、死亡保険金、高度障害保険金については通常の保険金の他、災害保険金等の特約がある場合は、保険金支払い対象となりました。保険商品は常に法律を支払い根拠とする必要があり、これは妥当な対応と言えます。

続く2020年4月には金融庁から保険業界団体に対し、新型コロナウイルス感染症に関する保険約款の適用等について(要請)https://www.fsa.go.jp/news/r1/hoken/20200410/01.pdf

を実施しました。

金融庁からのこの要請は、保険会社がそれぞれ「よきに取り計らう」よう要請があり、具体的な対応については各社で判断を促す内容となっています。

この対応はコロナ感染に伴う、突如の入院や出社停止など仕事がストップしてしまう人にとっては干天の慈雨と呼べるべき対応でした。

しかし、ワクチン接種が進み、重症者が減る中で、軽症者や無症状感染者にとっては、コロナボーナスと呼べるような状況を生み出しつつありました。

入院しなくても、コロナに感染していればお金がもらえるという商品設計では、予防意識が薄れることが懸念されます。一部には感染対策をしないといった行動をとる人も増えているのかもしれません。

入院給付金を悪用する人の手口と対策

医療保険では1回の入院の期間が保険会社ごとに定められています。60日、90日、180日などとなっており、例えば180日タイプの場合は、コロナで二回みなし入院となっても、一時金は一度しか支払われません。※入院日額タイプの場合は、自宅療養日数×入院日額が支払われます。

そのため、いろいろな保険会社の商品に加入し、感染による給付金請求を行い解約。別の保険会社で、新たに加入して給付金請求を行う、といった行動があったようです。

制度の死角を突かれた形ですが、対応する方法はあります。1つ目に、保険業界のシステムを活用し、医療保険の不審な契約や契約と解約を繰り返すような人物がいないか確認することです。契約申し込みの段階でお断りすることができます。

2つ目は、今後指定感染症等による給付金請求は、契約成立後180日経過後とするような免責期間を設けることです。有名な免責期間はがん保険の90日、3年の自殺免責があります。

3つ目は、保険金支払いのデータベースを設けて、1つ目のように頻繁な給付金請求が無いか確認する仕組みを作ることです。不審な場合は警察に通報するなどとして対応することになるでしょう。

4つ目は、コロナ完治後の保険加入については、保険金を払わない期間を1年設ける(特別条件)などの措置が必要でしょう。現在多くの保険会社では、コロナが完治した後に、後遺症等なければ新規保険契約に制限はありません。特別条件を設ければ、不用意な感染による保険金支払いを誘発するような、新規加入は告知義務で排除することができます。

新規に保険を売りたいがために、コロナ完治直後に保険に即加入できるような保険診査では、脇が甘いと言われても仕方ありません。

一連の報道で十分な説明がされない、保険金・給付金支払いの経緯と今回の見直し

報道のイメージです。
報道のイメージです。提供:イメージマート

今回の給付金支払いの見直しは、筆者は有りだと考えます。理由はみなし入院は期間限定の特別対応だからです。

報道各社の内容を見ていると、保険会社の収益を圧迫するから支払いを絞るような見せ方が多いのが気になります。

事実の1つとして収益を圧迫しているのは確かです。しかし、保険会社がなぜみなし入院を適用することになったかの背景と、今回の見直しの背景の説明が省かれているように見えることが気になります。

筆者のお客様でも2021年から最近まで、新型コロナウイルス感染症に伴うみなし入院の給付金請求は非常に増えています。多くの方は、コロナ以前から保険に加入しているので、今回の給付金受取で保険加入のメリットを実感されたことでしょう。

筆者が今回感じたのは、正社員や公務員など、休んでも給料が変わらない人にとっては、新型コロナによる給付金支払いは不要ではないかということです。むしろ、家族が感染し自身が濃厚接触者に該当することで出社できない場合や、パート・アルバイトのように休んだ分だけ収入が減る人には医療保険が必要だと感じます。

また、濃厚接触者から出社の機会を奪うような対応を求めるのであれば、公的保険制度のなかから何らかの対応が必要だと感じます。

今後も、新たなウイルスなどによる感染対応の問題は出てきても不思議ではありません。その際に、何も学ばなかったと言われないよう、政府による情報公開や報道機関によるフラットな情報発信について、誠実に対応してほしいものです。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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