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たばこ代アップで税収は増加しているのか

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ たばこ税の引き上げ等でたばこ代は上昇しているが、税収は…?

先日たばこ代の何割が税金なのだろうかでも解説した通り、たばこ代金の約2/3は各種税金で占められている。そしてたばこ税(国税のたばこ税とたばこ特別税、地方税の都道府県たばこ税と市町村たばこ税、すべて販売本数あたりの額面で決定される)や消費税の引き上げに伴い、たばこ価格は漸次上昇している。原材料費の値上がりなど他の理由に寄るところもあるが、たばこは概して税金周りで価格が変更されていることになる。

それではたばこ販売による税収は、たばこ税などの引き上げに伴う価格値上げに従い、漸次上昇し続けているのだろうか。代金の多分を税金で占められていることもあり、特に喫煙者にとっては「自分の吸ったたばこでどれほどの税収が生じているのか」について、気になる人も多いはず。

そこでたばこによる税収の推移を計算してみることにする。国税および特別税は財務省の統計一覧から逐次会計年度の確定値を抽出、地方税は総務省の地方財政白書内にある決算資料を基に確定値を抽出し、算出していく。

↑ たばこ販売による税収推移(兆円、2012年度の地方税は予算額)
↑ たばこ販売による税収推移(兆円、2012年度の地方税は予算額)

想像とは裏腹に、実のところ前世紀末から、たばこ販売によるたばこ税の税収は2兆円強のままでほぼ横ばいとなっている。むしろたばこ消費量の減退で、2008年度あたりから税収も漸減してしまっている。販売本数毎に税金がかけられるのだから、本数が減れば減収となるのは当然である。次のグラフは日本たばこ協会のデータを基にした、同期間におけるたばこ販売本数の推移だが、前世紀末をピークに漸減を続けている。

↑ たばこ販売実績(億本)
↑ たばこ販売実績(億本)

2010年度以降は2010年10月のたばこ税大幅引き上げにより、どうにか税収も息を吹き返し、2兆円切れをせずに済んでいる。

ちなみに「たばこ代金に含まれる税金」という点では消費税も同様だが、たばこ税と消費税は多様な体系面で性質が異なり、ひとまとめにするのには無理がある。仮に概算をしてみたが、たばこ販売で毎年徴収される消費税額は0.12兆円~0.20兆円の枠内で、上記グラフの大勢に影響は与えない。

今件で算出した税収動向からは、冒頭で触れたイメージ「たばこによる税収は漸増している」が単なる憶測で、税収は横ばいで推移しているのが確認できる。むしろ2008年度からの減少傾向を見る限り、たばこの消費量の減退に伴うたばこによる税収の減少を危惧し、税率を上げている感すらある。2010年10月より前の値上げのタイミング、2003年7月と2006年7月それぞれの直前に、やはりたばこ税の減収傾向が見られるところを見ると、その推測にも納得がいく(ちなみにグラフ中にある1997年度の凹み部分においても、その直後の1998年にたばこ特別税が新規導入され税収が増加している)。

つまりたばこ税率は、たばこ(税)による一定税収の確保のため、引き上げられていると考えれば道理が通る。かなりざっくばらんな表現だが「たばこ消費量が減る」「税収が減る」「税率を上げて1本当たりの税収を増やす」「税収が回復する」「たばこ消費量がさらに減る」の繰り返しである。元々健康志向の高まりにつれてたばこ消費量は減少傾向にあるが、値上げでさらに拍車がかかることになる。

無論「税率引き上げによりたばこ代金が上がり、喫煙者の負担が増えることで、喫煙を抑えることができる」という健康面上の施策効果への期待も、たばこ税の引き上げの一因。しかし税収の実情の限りでは、大義名分に過ぎない気がしてならない。

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ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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