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節電しつつ快適にエアコン冷房!消費電力の見える化が決め手!

鴻池賢三オーディオ・ビジュアル&家電評論家
(写真:show999/イメージマート)

エアコンの「30分以内の外出ならつけっぱなしがお得」という話題を目にする機会が多くなりました。多くの方は、節電に大きな関心を寄せていることがうかがえます。

一方で、エアコン冷房の効率は、地域や住まいなど環境に応じて違いが少なくなく、一概に「これがベスト」と言うのは無理があります。

この記事では、筆者が約20年に渡って記録してきた自宅の電気料金や、最新エアコンの消費電力を測定しつつ見出した法則に基づき、使いこなしのポイントをご紹介します。決め手は「消費電力の見える化」。

みなさんのご家庭に合わせて応用してみてください。実は快適に過ごしても、意外なほど電気代が安く済むかもしれまません。

■実は安くなっている!エアコンの電気代

若者世代よりも中高年層の方がエアコンの電気代を気にする方が多いように見受けられます。その背景には、年代を遡るほどエアコンの効率が低く「電気を大食い」していた事実に加え、収入に対して電気料金の単価が高かったことも影響しているようです。

例えば1980年と2021年の差を各種データから推測すると、現在のエアコンの電気代"感"は4分の1程度、少なくとも半分以下と言って良いと思います。

もし身近な高齢者などが熱さを我慢していたり、熱中症の心配があるようなら、是非、「昔のように電気代は高くない」と教えてあげてください。

■「30分以内の外出ならつけっ放しがお得」は本当?

エアコン電気代の節約術として話題の「つけっぱなし」は本当なのでしょうか?

「こまめに電源を入切するよりも、つけっ放しの方がお得」という考えは昔からありました。これは、エアコンの電源をオンにした際、起動に大きな電力を消費することと、冷房の場合暖まってしまった室内を冷やす必要があるためです。しかし、「何分ならつけっぱなしがお得か」という結論のようなものはありませんでした。

そんな中、空調機器大手のダイキンによる実験結果発表(2018年)は画期的でした。

エアコンの電気代「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」冷房で節電なのはどちら?(ダイキン)

ここでは実際に同条件のマンション2室を使用した結果、「日中は35分まで、夜は18分までの外出なら「つけっぱなし」がおトク。」と明確に述べています。

この明瞭で説得力ある結果は、「外出時もつけっぱなしがお得」という考え方を広めることに繋がったと思います。

しかし、注意すべき点があります。それは、天候や部屋といった条件の違いです。同レポート内でも「外気温の変化や日差しなど天候の影響を大きく受ける」と述べられています。読者が参考にする場合、住宅の断熱性能も加味する必要があります。

因みに、同レポートには、次のような詳細説明もあります。

「30分の外出から帰宅した14:30の温度・しつどを計測したところ、「つけっぱなし」にした部屋が温度26.5度・しつど69%、「こまめに入り切り」した部屋が温度27.5度・しつど77%という結果に。」

つまり、この部屋は30分で1度上昇する状態で、この場合、「35分までつけっぱなしがお得」が成立すると考えられます。

実際のご家庭においては、日中にエアコンを停止した状態で室温の変化を計測し、1度高くなるまでの時間を計測すると、「外出時もつけっぱなしがお得」になる時間の目安になるでしょう。例えば、スキマ風があったり、断熱性能が低いなどで、15分で1度上昇するなら、「つけっぱなしがお得」になる時間は15分と考えて良いでしょう。暖まってしまった部屋の空気を再び冷やすには相応の電力が必要ですが、断熱性能が低くロス(損失)が多い条件下では、温度維持により多くの電力が必要と考えられるためです。

■エアコン冷房前の換気はお得か?

日中に帰宅すると、換気で熱気を逃がしてから冷房したくなるものです。しかし、これも状況によります。

筆者が断熱性能の低い古めの木造住宅に住んでいた頃、日照の多い日中に窓を閉め切ると、室内温度が外気温よりも高くなりがちでした。現在は断熱性能が高い省エネタイプの住宅に住んでいますが、日照による温度上昇は非常に少なく、室温上昇の主な原因は外気の流入によるものと分かりました。

つまり、外出時など冷房をしない時も窓は閉めておき、日中に帰宅して冷房運転を始める前も換気しないほうが、エアコンの消費電力を抑えられるという訳です。(換気扇による24時間換気あり)

実際のご家庭においては、温度上昇の原因が日照によるものか、外気流入によるものかの見極めをお勧めします。

■最近のエアコンは消費電力の確認が可能!自身でも実験を!

筆者宅のシャープ製エアコン(アプリ画面)の例。
筆者宅のシャープ製エアコン(アプリ画面)の例。

最近のエアコンはWi-Fiに対応し、スマホで操作が可能なほか、消費電力を確認することもできます。グラフは筆者宅の例です。部屋のドアを開けっぱなしで使用する正午から18時くらいまでは300~400Wh消費していたところ、閉じて15畳(LDK)程度に制限すると、グラフのように消費電力が半減することが分かりました。

エアコン冷房の消費電力は、設定温度が同じの場合、冷やす空気の量に比例します。当然と言えば当然ですが、こうして見える化すると、効果が分かり易く、実践に繋がるものです。ドアの閉め忘れにも注意するようになりました。

また、このように詳細なグラフが表示できると、カーテンの開け閉じによる差異も知ることができます。当方宅は日中直射日光が室内に入らず、ペアガラスで比較的断熱性能が高いと思い込んでいましたが、カーテンを閉じること10%程度の節約ができるのは発見でした。

一概な"説"では、各家庭の環境に沿った最善策を見つけるのは困難です。IoT技術を活用して、各家庭で快適かつ節電に繋がる方法を見つけてみてはいかがでしょうか?

■エアコン1台、それとも2台?

1台の大型エアコンで複数の部屋を冷やすか、各部屋に適度な能力を持つエアコンを設置して複数同時運転するのはどちらがお得か。

これも長年気になっていましたが、上記のようにエアコンの消費電力が分かるようになったことで、各御家庭で判断できるはずです。

因みに筆者宅では、2台同時運転がお得なことが分かりました。先述のとおり、ドアを開けっぱなしにした際、300~400Wh消費していたところ、閉じることで平均180W程度に減少。また、離れた部屋の6畳間を2.2kwクラスのエアコンで冷やした際の消費電力は100W程度と少なく、合計で300W弱と同等以下という結果に。

2台稼働するとトータルの効率は落ちるはずですが、廊下や玄関などを冷やさないことで、それ以上に無駄が抑えられた格好です。

廊下や玄関を冷やすことが無駄かどうかは、各ご家庭の考え方にもよると思いますが、消費電力を見える化すれば、いろいろなパターンを試して確認することができます。

■最新エアコンの電気代はどれくらい?

エアコンの効率を知る指標として「APF」(通年エネルギー消費効率)があります。各社上位の省エネモデルほど、このAPFの数値が高く、電気代の節約にもつながります。稼働時間が長い部屋なら、エアコン本体が高価でも、節電による電気代削減により、トータルで出費を抑えられる可能性が高くなります。逆に稼働時間が少ない場合は、結果も逆に。エコという視点では省エネタイプを選びたいところですが、出費という観点では各御家庭でそろばんを弾いてみてください。

筆者宅のリアルなエアコン電気代
筆者宅のリアルなエアコン電気代

グラフは筆者宅のシャープ製4.0kWクラスエアコン(APF7.2の省エネタイプ)の7月実績です。マンションで約20畳を、正午頃~24時まで、28度設定で運転した結果、約1,200円でした。20年前の当方宅のデータと比べると約半分。住宅の断熱性能向上やエアコンの進化を感じます。1日50円程度なら、冷たい飲み物を摂るよりも安上がり。適度なエアコンの利用が快適かつ合理的と言えます。

6畳間エアコンの消費電力
6畳間エアコンの消費電力

また、同じ筆者宅で、6畳間に設置したエアコンの消費電力も測定しました。このエアコンは時間毎の詳細な消費電力が表示できないため、別途消費電力を測定できる機器を用いて確認しました。日中外気温が32度の時に室内を28度に保つと、約100Wh(1時間あたり100W消費)することが分かりました。電気代に換算すると2.5円/時程度。APFが5.8と特に省エネタイプではありませんが、6畳間程度の部屋を冷やし過ぎない28度程度に設定すると、消費電力はテレビなどと大差ないことがわかりました。(因みに筆者のゲーム用パソコンは300Wh程度消費)

■さいごに

長文になってしまいましたが、消費電力を見える化し、使い方を工夫すれば、エアコンの消費電力は実はそれほど大きくないことがご理解頂けたと思います。

この記事を通して、我慢せず快適かつ、節電と節約も両立した生活の実現に繋がれば幸いです。

オーディオ・ビジュアル&家電評論家

AV機器メーカーで商品企画職を務めた後、米シリコンバレーのマルチメディア向け半導体ベンチャー企業を経て独立。オーディオ・ビジュアル評論家として専門誌などで執筆活動を行うほか、エレクトロニクス 技術トレンドに精通し生活家電を含むホームエレクトロニクス、ネットワーク家電、スマート家電の評価、製品の選び方、賢い使い方、および未来予想をメディアを通じて発信中。NHKほかテレビ出演も多数。ビジュアルグランプリ(VGP)審査副委員長/米ISF認証ビデオエンジニア/米THX認証ホームシアターデザイナー/一般財団法人家電製品協会認定家電製品総合アドバイザー/甲種防火管理者

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