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大反響の大人向け「プリキュア」どこがどう新たな試みなのか

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:イメージマート)

今週火曜日、ご存知「プリキュア」シリーズが、大人になったファンに向けた新作アニメの制作を発表し、大きな反響が起きました。

「プリキュア」といえば日曜朝の顔として、キッズファミリー層を中心に展開しているイメージが世間的にも強いと思います。

そんな中で発表された大人に向けた新作アニメとは一体どういったもので、これまでの作品とはどこがどう違った新たな試みとなっているのでしょうか。

■大人向け「プリキュア」

今回発表されたのは、シリーズ4作目である「Yes!プリキュア5」及び5作目「Yes!プリキュア5GoGo!」の主人公を中心に、作品キャラ達の成長した姿を描く「キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~」。そしてシリーズ13作目である「魔法つかいプリキュア!」の続編「魔法つかいプリキュア!2(仮)」です。

「キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~」は、NHK Eテレにて今年10月から放送予定、「魔法つかいプリキュア!2(仮)」は、2024年度にABCテレビ・テレビ朝日系列にて、なんと“深夜アニメ”の放送枠で放送予定であることも発表されました。

どちらも「プリキュア」シリーズが20周年の節目を迎える施策として、これまでのメイン視聴層である子供達だけでなく、プリキュアと共に成長した大人達にも向けた映像作品となるそうです。

実は「プリキュア」シリーズの大人向け施策自体は今回が初めてではなく、これまでにも、大人に向けた読むプリキュアとして、歴代シリーズのいくつかが、オリジナルストーリーを描いた小説版として発売されてきました。

しかし、アニメのその後を描く物語がテレビシリーズ化するのは今回が初めてです。

さらに、日曜朝のイメージが強い「プリキュア」が深夜にも放送されるということで、当時シリーズをリアルタイムで視聴していた大人達はもちろん、シリーズのファンからも大きな反響が起きました。

■どこがどう新しいのか

とはいえ、今回のような子供をメイン視聴層とする作品の大人向け展開そのものは、大人も幅広くアニメを視聴し、グッズ購入等も楽しむ昨今、珍しいことではありません。

「プリキュア」と同じ東映アニメーションによる映像化作品だけでも、例えば「美少女戦士セーラームーン」や「おジャ魔女どれみ」等が、シリーズ放送終了後しばらくして、大人になった当時の視聴層にも向けた展開を行ってきました。

そうしてコスメやアパレルグッズの発売、「魔女見習いをさがして」といった映像作品も生まれてきたそれらの作品と比較して、今回の「プリキュア」シリーズの大人向け新作映像化は、一体何が違い、どこがどう新しい試みといえるのでしょうか。

一番の大きな違い、そして新たな試みといえるのは、シリーズ放送終了後期間を空けての展開ではなく、今も現役でシリーズ放送中の作品が大人向け展開を行う点です。

「プリキュア」はほぼ毎年登場人物や世界観が変わるので、その意味では今回新作が作られるタイトルの放送終了後何年か経っての展開ではありますが、現在も「ひろがるスカイ!プリキュア」が放送中であるように、シリーズ自体は継続中です。

そのため大人向け「プリキュア」放送中は、世にも珍しい、子供をメイン視聴層とした現役シリーズと大人向けの作品がそれぞれ同時に放送される状態となります。

こうした状況下では、単にファンが現役シリーズと大人向け作品の両方を楽しめるだけでなく、親子で現役シリーズを楽しむファンの親が『自分達が子供の頃のプリキュアだ』と大人向け作品を視聴したのをきっかけに、子供達が歴代シリーズに興味を持ち視聴しだすといった展開も、配信が定着した現在無きにしも非ずです。

これまでにも「プリキュア」シリーズでは、歴代シリーズのキャラが共演する劇場版作品が数多く作られてきましたが、それらとはまた違った形で、シリーズを縦に結びつけるきっかけにもなっていくのではないでしょうか。

また前述の通り、「プリキュア」シリーズは「スーパー戦隊」等と同じく、シリーズ毎にキャラや世界観が違う作品が作られてきたこともポイントです。

そのため、今後も同じように大人向け展開をしていく時に、同じキャラや世界観でその後の物語を延々と描いていくのではなく、まだアニメでその後が描かれていない他の歴代シリーズで、新たに大人向け展開をしていくこともできます。

実際に、今回の発表を受けて早くも『このシリーズの続編もみたい!』という声も挙がり始めている中、まずは最初に放送される2本が、一体どう展開されていくのか。長年愛されてきた「プリキュア」シリーズの新たな試みには、これから放送に向けても熱い視線が集まっていきそうです。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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