ずっとコロナ禍中で学生生活を過ごした「コロナ世代」の就職活動学生のために「学業について聞く面接」を!
■「コロナ世代」の学生が就活に不安を感じています
2022年4月から大学3年生になる学生さんたちは、入学時点(2020年4月)からずっとコロナ禍の中で学生時代を過ごしたことになります。まさに彼らは「コロナ世代」と言ってもよいでしょう。
そして、その後、すぐに夏のインターンシップが始まり、就職活動に突入していくのですが、彼らの話を聞くと、異口同音に「就職活動の際にアピールできる材料がない」「ガクチカ(「学生時代に力を入れたこと」の略で、企業が採用面接の際に頻繁に聞く質問の俗語)を話せない」と悩んでいます。
彼らはコロナ禍の社会情勢の中で、他の世代が経験してきた「ふつうの学生生活」を送ることができていません。イベントも中止になり、留学も行けず、クラスメイトとの交流も少なくなっています。特に課外活動は他の世代よりも激減しています。
それなのに、就職活動について調べていくと、「ガクチカ」、しかも課外活動を中心に質問されると聞いて、「何か具体的に言えることなど思いつかない」と悩んでいるわけです。
■「課外活動」ばかりで採用評価をしてもよいのか
私は、長年人事や採用に関する仕事をしてきたのですが、そもそも企業が採用面接において、学生の本分である学業「以外」の課外活動(アルバイトやクラブ・サークルなど)「ばかり」聞いている現状には疑問を持っていました(もちろん、課外活動「も」重要ですが)。
なぜならば、確かに課外活動はいろいろなエピソードが聞けて、その人らしさがわかりやすく思える一方で、それらはたいてい「自発的に」「好んで」やっている活動であるからです。
仕事は自分の好きなことばかりできるわけではありません。最初は義務から始まりますし、トラブル対応など「できればやりたくないこと」さえたくさんあります。それなのに、「自発的にやった好きなこと」の話だけ聞いていて仕事での活躍を予測できるでしょうか。
■「学業」における考えや行動からも人となりはわかる
一方、本来の学生の本分であり、本分だからこそコロナ禍でも学生が取り組んできた学業はどうでしょうか。学生にとって学業とは、勉強して単位を取らなくては卒業できないので、まずは義務です。やらなければならないことです。
義務である学業に対して、どのようなことをしてきたかでも、「人となり」はわかります。例えばある人は「いかに効率的に単位を取得して自由時間を増やすか」という工夫をし、またある人は「どうせ勉強するなら自分の幅を広げたいので興味が無かった授業も受ける」と考え、これまたある人は「成績上位になれば奨学金が取れるから、この成績を目指そう」と明確な目標設定をしています。このように、学業に対する取り組み方を掘り下げて聞くことで、いろいろなことがわかるのです。
しかも、採用選考の基本は「その人に関する事実から、その人の性格や能力、価値観を推定する」ということですが、学生の本分である学業については、当然ながら成績表などのきちんとしたエビデンスに基づいてヒアリングをすることができます。
■「課外活動」+「学業」について聞くという常識を定着させよう
そこで、私たちが社会、もっと言うと新卒採用を行なっている企業の皆さんにご提案したいのは、上述のように、採用面接において、就職活動学生の皆さんに対して、「課外活動」だけではなく「学業」についても併せて質問をするということを常識にしませんかということです。
コロナ禍によってオンライン選考が進んでいますが、それによって「情報量が減った」と選考精度が下がるのではと危惧している企業人事の皆様にとっても、きちんとしたエビデンスに基づいてヒアリングができる「学業」についての話は有益なはずです。
ついては、特に新卒採用市場に影響力の強い日系大手企業が集まっている経団連の皆さんや、有名企業、人気企業の皆さんから率先して「学業」についてヒアリングする面接を導入していただければ、きっと採用面接において「学業」を聞くということが常識になっていくのではないかと思っています。いや、常識にしようではありませんか。