40年にわたるサラリーマンのこづかいの推移をさぐる(2019年版)
昨今では1979年当時の水準に届かないこづかい
新生銀行発表の「サラリーマンのお小遣い調査」(※)によれば2019年のサラリーマンの平均こづかい額は3万6747円とのこと。過去の値はどのような状況だったのが。前世紀からの経年推移を確認する。
次に示すのは、「サラリーマンのお小遣い調査」で公開されている限りのサラリーマン(男性会社員)における月額のこづかい推移。さらには公開値としてはもっとも古い1979年のこづかい額を基準値の1.00とし、その額と比較した指標としての推移もグラフ化した。グラフの形状は同じになるが、変移の観点では後者の方が分かりやすい。
最高値は1990年の7万7725円。1979年比で6割強のプラス。一方最低額は1982年の3万4100円。
30年間の推移を記した過去発行の報告書では、サラリーマンの平均こづかい額の動向について
・2001年までは収入と相関。
・前年の日経平均株価に相関。
・2000年以降は消費者物価指数に相関。
との傾向分析を行っている。今世紀に入ってから収入との相関関係が見られなくなったのは、収入の減収幅よりもこづかいの下げ幅が大きいからとのこと。また数年前まではデフレが継続していたので、こづかいが減額されてもかろうじて耐えられていたとの言及もあった。
もっとも、こづかいが足りなくなった時の対応方法としては、「我慢する」との回答率が一番高い状況が続いている。
価値観が変わり「使わずに我慢」が当たり前となり、こづかい額にあまり影響されなくなった可能性もあるが、サラリーマンの金銭に関する精神面に留意する必要があるのは否定できまい。
消費者物価指数を考慮すると
以上は単純な金額ベースでの比較。そこで今度は実質購買力の変化を見るため、消費者物価指数を考慮に入れる。1979年の消費者物価指数の値を基準に、各年のこづかい額を実質購買力で修正する。例えばこづかい額が同じ金額の1万円だったとしても、1979年から2019年の間に物価が2倍に跳ね上がっていれば、実質的な2019年のこづかいの購買力は(1979年ベースで)5000円分となる。
20世紀末以降は消費者物価指数の動きに大きな変動は無い。それでも1979年の値と比べると色々な流れが見えてくる。
額面ベースでは1979年の6割強増しだった1990年も、実は消費者物価指数の上昇に伴うものであり、実質的には2割強の増加でしかなかったことが分かる。それとともに今世紀に入ってからはしばしば、金額ベースでは最低額だった1982年をさらに下回る実質購買力でしか無い値をつけていることも把握できる。「デフレが継続しているのでこづかいが少なくなっても何とかなっている」のは事実だが、元々の実質購買力が低いため、その下げ幅が小さい程度の慰めにしかならない。またここ数年はデフレ脱却の施策が効き始めており、物価も上昇する気配を見せているが、こづかいはそれに追いついていない。
さらに昨今では各人が痛いほど実体験している通り、こづかいの内訳として飲み代や昼食代以外に、携帯電話代の存在が無視できないもの、圧迫感を増すものとなりつつある。自らのこづかいについてサラリーマンは、より一層の工夫が求められそうだ。
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※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2019年分は2019年4月5日から8日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2717人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料では多くを占める会社員は男性1252人・女性841人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が40.3対59.7、女性は60.3対39.7。今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけでは無いことに注意。
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