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全米プロ2日目。辛くも予選通過のタイガー・ウッズは、まだ勝てる?「もちろん!」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
2日目のウッズは、新パターを働かせる以前に、バンカーやラフで苦しんだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 全米プロ2日目のリーダーボードの最上段には大方の期待を覆す意外な名前が浮上した。

 この日、スコアを5つ伸ばし、通算8アンダーで単独首位に立ったのは中国のハオトン・リー。通算6アンダーの2位タイ・グループには初日トップのジェイソン・デイ、大会3連覇を狙うブルックス・ケプカといった注目選手たちがしっかり付けているが、その中にフランスのマイク・ロレンツィオ・ベラが食い込んでおり、それは開幕前には誰も予想していなかった大健闘と言える。

 松山英樹は3つ伸ばして16位タイへ急浮上。極端な肉体増強と飛距離アップで注目を集めているブライソン・デシャンボーは、この日はスコアを伸ばせなかったものの、25位にとどまっている。

 一方で、新パターを握って初日に好発進したタイガー・ウッズは、2日目はバンカーやラフに手こずり、パットも振るわず、予選通過が危ぶまれる状況だったが、スコアを2つ落としながらも通算イーブンパー、44位タイで辛くも決勝進出を果たした。

 大会2勝目を狙う世界ナンバー1のジャスティン・トーマス、生涯グランドスラム達成を狙うジョーダン・スピースはカットライン上の通算1オーバー、60位タイで予選通過を果たしたが、メジャー初制覇を狙っていたリッキー・ファウラー、石川遼は通算2オーバー、80位タイで予選落ちした。

【無欲の浮上?】

 単独首位に躍り出た中国のリーは、欧州ツアー2勝の実績があり、2017年全英オープン3位とメジャー大会で活躍した経験も有しているが、今大会は文字通り「無欲の挑戦」をしている。

 コロナ禍の中、母国で自宅にこもっていたというリーは、「試合があること、試合に出られることだけでも幸せだ」と噛み締めるように語った。

「あとは、なるようになるだけ」

 優勝の二文字も歴史に名を刻むことも意識せず、決勝2日間も無欲でプレーしたいと言う。とはいえ、午前組で早々にホールアウトしたリーが、午後組がホールアウトするころまで長時間、練習場で球を打ち続ける姿がTV画面に何度も映し出され、そのたびに米TVの解説者やアナウンサーが「まだ練習している」「メジャーの決勝2日間が控えているのだから、もう帰りなさい、休みなさい」と苦笑していた。

 無欲だが、驚くほど練習熱心。そんなリーが明日からどんなプレーを見せるのか、そこに興味を覚える。

 無欲と言えば、2位グル―プに食い込んだフランスのベラも無欲の挑戦をしている一人だ。欧州ツアー未勝利の35歳。しかし、世界ランキングでは82位で同大会に出場しており、その意味では底力はあるのだろう。

 メジャー大会で無名選手や意外な選手が無欲ゆえに上位に浮上すること、優勝争いに絡むことは、しばしば起こりうる。最終的に勝てるかどうかは、また別の話だが、まずは無欲で挑み、首位と2位に立った2人の3日目に注目したい。

【ウッズは、まだ勝てる?「もちろん!」】

 辛うじて予選を通過したウッズ。この日は、いいことづくめのはずだった新パターを活かす以前にバンカーやラフにつかまってばかり。挙句にパットも入らず、苦戦した。

「でも、ドライバーはグレートだった」

 かつては、好スコアをマークしても、完璧を求めるかのように、その日の悪かった点を自ら指摘し、険しい表情を見せていたウッズだが、今では振るわなかったラウンド後も、何かしら良かった点を見つけて口にする。

 それは、負け惜しみ的な面もあるが、年齢や体力と上手く付き合いながら戦っていくためのウッズなりの術なのだろう。

 そして、百戦錬磨のウッズは、無欲ではなく、あからさまに勝利を狙うことを決して諦めない。

「明日はピン位置がとても難しくなる。早朝スタートで波に乗りたい。今日のように、グレートなドライバーショットを打ち、アイアンのキレを取り戻し、アグレッシブにパットしたい」

 開幕前、「勝てると思うか?」と問われ、「Of course(もちろん)」と答えたウッズ。2日目を終えた今、同じ質問に答えた。

「Absolutely(もちろん)」

 当然のごとく、ウッズはメジャー16勝目を目指し、残る2日間を戦う心づもりだ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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