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縦走登山気分をお手軽体験! 東京・高尾山稜のもうひとつのハイキングコース「南高尾セブンサミッツ」

上町嵩広登山レポーター

◆東京近郊ハイキング・レポ◆(0004)
東京・高尾山の南側に並行する丘陵地帯。最近では「南高尾セブンサミッツ」とも呼ばれ、気軽にミニ縦走登山を楽しめるルートとして多くの登山者が訪れています。

<趣意>
東京とその近郊のハイキングで個人的なお気に入りのコースをピックアップして紹介いたします。

<こんな方にオススメ>

(1)東京都心から近いところでハイキングを楽しみたい
(2)半日程度のショートハイキングコースに行きたい
(3)ちょっと縦走登山気分を体験したい

<概要>

南高尾セブンサミッツ (みなみたかせぶんさみっつ)
所在地: 東京都八王子市・町田市、神奈川県相模原市
南高尾山稜を相模湖寄りの大垂水峠から7つのピーク(大洞山、コンピラ山、中沢山、入沢山、泰光寺山、榎窪山、草戸山)を縦走するルート。
関東ふれあいの道(湖のみち)におおむね重複する。

<ハイキングコース>

大垂水峠を起点に南高尾山稜を東へ進み7つのピークを踏んで京王線「高尾山口」駅へ下山するルートです。南高尾セブンサミッツは東京都心から近くアクセス便利で登山初心者や入門者もミニ縦走気分を楽しむことができるハイキングコースという印象です。

「大垂水」バス停からスタート
「大垂水」バス停からスタート

甲州街道に架かる陸橋を渡ります
甲州街道に架かる陸橋を渡ります

関東ふれあいの道などの道標は要所に設置されています。まずは「梅の木平」方面へ向かいます
関東ふれあいの道などの道標は要所に設置されています。まずは「梅の木平」方面へ向かいます

南高尾山稜の稜線に出て富士山が姿を現します
南高尾山稜の稜線に出て富士山が姿を現します

大洞山の山頂
大洞山の山頂

コンピラ山の山頂
コンピラ山の山頂

「大垂水」バス停からスタートです。甲州街道(国道20号線)に架かった陸橋を渡ってルートに入ります。やや細い道を甲州街道沿いに進みます。ゆっくりと高度を上げていき稜線に出ると右手に富士山も見えてきます。スタートから30分ほどで最初のピーク・大洞山に登頂です。さらにその先に少し進めば2番目のコンピラ山へと続きます。

東京のハイキングコースといえば高尾山が筆頭に挙げられるでしょう。ミシュランガイドブックにも取り上げられるほどで、週末ともなれば登山者で大賑わいの山頂は渋谷駅のスクランブル交差点並に人で溢れかえっており、昼食のために座るところを見つけることすら難しいときもあります。南高尾山稜はそこから一歩外れでいますが、風景、眺望や環境はほとんど異なることなく、高尾山に比べて人出も少ないですので比較的ゆっくりと登山を楽しめます。

尾根道と巻き道に分岐するポイントがいくつもありますが、基本的に尾根道を歩きます
尾根道と巻き道に分岐するポイントがいくつもありますが、基本的に尾根道を歩きます

右手に丹沢の山並みが見えます
右手に丹沢の山並みが見えます

コンピラ山から稜線を先へ進みます。尾根道ですが、樹林帯なので左右どちら側も木立があります。左手の東京側は杉など、右手の神奈川側は広葉樹中心となり、ハッキリと林相が異なっています。やがて右手の神奈川側に丹沢方面の眺望が出てきます。右端の方に富士山もチラリと頭を出しています。一方、右手の東京側・高尾山の山稜は背の高い杉などのためにほとんど視界はありません。

登山道はおおむねなだらかで快適に歩くことができます。ザレ場やガレ場などはほとんどありません。ルートは尾根道と並行して巻き道も付けられているところも多いです。セブンサミッツを踏破する場合は尾根道を歩くことになります。尾根道は起伏はありますが、急登といえるようなところはあまりなく、あったとしてもほんの短い区間だけです。

左手の稜線へ上がる中沢山への登山道に入ります
左手の稜線へ上がる中沢山への登山道に入ります

中沢山の山頂の石像
中沢山の山頂の石像

見晴台からの眺望はまるで箱庭のようなロケーション
見晴台からの眺望はまるで箱庭のようなロケーション

石仏の置かれた3番目のピーク・中沢山まで来ると、丹沢の山並みを垣間見ることができます。中沢山からいったん下ると、稜線の右側をトラバースする道となります。しばらく歩くと見晴台が出てきます。右手(南側)の木立が切り払われており大きく展望が広がっています。丹沢の山脈を一望できるような景観となっており、おそらくこのコース一番の展望スポットといえるかと思われます。

今回のルートの特徴のひとつを挙げますと、本格的な登山というよりも丘陵地帯のハイキングコースというところでしょうか。山歩きしながら山仲間とおしゃべりを楽しんだり、春先にこれからの登山シーズンへ向けての足慣らしや山ごはんをつくって楽しむというロケーションにはうってつけだと思われます。ベンチが要所に数多く設置されていますので休憩時間を楽しむにも格好のポイントがいくつもあります。

左手の尾根道は立入禁止だそうです。ここは右手の巻き道を進みましょう
左手の尾根道は立入禁止だそうです。ここは右手の巻き道を進みましょう

入沢山山頂からの眺望
入沢山山頂からの眺望

見晴台からさらに東へ進むと、4番目のピーク・入沢山の直下に辿り着きます。左手に直登の斜面への道、右手に巻き道と分岐しています。右手の直登ルート(ロープが架かっている)は「立入禁止」とのことですので、巻き道を進みます。その先に左手への登坂があるのでここからから入沢山へ上がります。山頂では南側の展望とともに東側の相模原の街並み(橋本あたりでしょうか)も見通せます。

西山広場の竜の彫り物のベンチ
西山広場の竜の彫り物のベンチ

西山峠
西山峠

泰光寺山の山頂
泰光寺山の山頂

入沢山から上がってきた道を下ってまた巻き道に戻ります。先を進むと龍の彫り物が伏せている西山広場に出ます。ルート上にはいくつもの多くのベンチが設置された休憩適地がありますので、気の向いたときに自分のタイミングで休みを取って一息入れることができます。西山広場を通り、西山峠を越えると、5番目のピーク・泰光寺山まで来ます(あと2つ)。

今回は7つのピークを踏む南高尾山稜の登山ルートを紹介しています。一方、関東ふれあいの道(湖のみち)として設定されているルートは高尾山口駅からすこし離れた梅ノ木平から南高尾山稜へ上がり西進して大垂水峠を経て奥高尾縦走路にふたたび上がり、そこから高尾山を目指して折り返すように東に進み高尾山口駅に至る周回コースとなっています。このルートはその軌跡がハート型のため別名「ハートルート」などとも呼ばれていることがあるそうです。ハートルートを歩いた場合には7~8時間程度かかります(標準的タイムによる目安で休憩は含みません)。今回のコースでは「物足りない」「ガッツリ1日歩きたい」という方はチャレンジしてみてもいいかと思わます。

フクロウの柱
フクロウの柱

三沢峠の広場
三沢峠の広場

三沢峠の周辺図
三沢峠の周辺図

榎窪山の山頂
榎窪山の山頂

泰光寺山の先にあるトーテムポールのようなフクロウの彫刻のある柱が立つ広場を過ぎて津久井湖方面への分岐があるポイントを左手に山稜を進みます(「梅ノ木平」方面と指示がある方向へ)、三沢峠を通過しさらに先へ進むと、榎窪山まで来ました。あと残り1つ。最後のピーク・草戸山へ向かいます。

ふれあい休憩所の東屋。城山湖がちらりと望めます。
ふれあい休憩所の東屋。城山湖がちらりと望めます。

草戸山への直下の登り
草戸山への直下の登り

草戸山の山頂が見える
草戸山の山頂が見える

草戸山の山頂
草戸山の山頂

草戸山の周辺図
草戸山の周辺図

草戸山の山頂からの眺望。橋本方面でしょうか
草戸山の山頂からの眺望。橋本方面でしょうか

鉄塔の下を通り抜けて「ふれあい休憩所」に辿り着くと東屋があります。ここからは城山湖の湖面がちらりと望めます。先へ足を進めると展望台のような建物が見えてきます。ようやく草戸山です。おそらくこの草戸山がセブンサミッツのなかで一番整備されている場所でしょうか。山頂も広くベンチも設置されています。残念ながら展望デッキは老朽化のためか立入禁止です。

今回の登山コースは全体でおおよそ4時間強。半日のアクティビティとしてはちょうどよいプランではないかと思います。高尾山口駅に下山して駅併設の極楽湯でひと風呂を浴びて近くのお店でとろろ蕎麦をいただく。登山以外のお楽しみも取り入れてのんびりとハイキングを楽しむことができると思います。

高尾山の山稜が左手に見えてきます
高尾山の山稜が左手に見えてきます

山稜に見える建物は薬王院でしょうか
山稜に見える建物は薬王院でしょうか

草戸峠からは「四辻・高尾駅」方面に進みます。
草戸峠からは「四辻・高尾駅」方面に進みます。

四辻の分岐です。高尾駅と高尾山口駅に分かれます。
四辻の分岐です。高尾駅と高尾山口駅に分かれます。

登山口への登山道
登山口への登山道

登山口を振り返る
登山口を振り返る

甲州街道への合流地点。信号を渡りまっすぐ進めば高尾山登山口へ、右手に進めば高尾山口駅です
甲州街道への合流地点。信号を渡りまっすぐ進めば高尾山登山口へ、右手に進めば高尾山口駅です

草戸山からはあともう少しです。先へ進むと今度は左手の高尾山稜の方の視界が出てきます。草戸峠から「四辻・高尾駅」と記された方向へ進みます。鉄塔の脇を通り、ぐんぐんと下りていきます。やがて左手にふもとの建物の屋根などが見え始めます。高尾山口駅と高尾駅の分岐点まで来たら、あとは一気に下るだけ。住宅の脇を抜けると登山口に出て、その先が甲州街道です。甲州街道を右手へ進めば高尾山口駅に辿り着きます。今回はここがゴールです。

高尾山はもう何度も行っており少し飽たかなーという方も多くいらっしゃるかと思います。そんな方に高尾山の別の魅力や新しい側面を知っていただくにはちょうどよい登山コースなのではないかなと感じます。気軽に楽しめる高尾山稜のハイキングのもうひとつの選択肢ではないでしょうか。

[行程表]

※標準的タイムによる目安(休憩除く)
「大垂水」バス停→ 大洞山(30分)→ コンピラ山(15分)→ 中沢山(30分)→ 入沢山(30分)→ 西山峠(15分)→ 泰光寺山(15分)→ 三沢峠(25分)→ 榎窪山(10分)→ 草戸山(30分)→ 高尾山口駅分岐(25分)→ 四辻(40分)→ 高尾山口駅(15分)
コースタイム/ 4時間40分程度
標高差/ 350m程度 (大垂水峠:392m、大洞山:536m、中沢山:494m、草戸山:364m、高尾山口駅:190m)

[アクセス]

●往路
JR中央本線「相模湖」駅から路線バス(神奈川中央交通バス)で「大垂水」バス停まで約15分程度。※バスの本数は非常に少ないです。
●帰路
京王線「高尾山口」駅まで徒歩

[ハイキングコースの補足]

ルートはおおむね「関東ふれあいの道」に重複しますので、道標は要所に丁寧に設置されており、迷うことはほとんどないと思います。一部、作業道と交錯しているところもありますので迷い込まないようにご注意ください。
登山道はほぼ樹林帯のなかにあります。稜線歩きですが眺望はあまりありません。一部、南側(神奈川側)に開かれており丹沢の山並みや富士山の姿を見ることができます。
入沢山に登る際には、大垂水峠からスタートした場合、山頂下の直登ルートと巻き道の分岐点では巻き道に進んでからその先にある登り坂から山頂へ上がります。分岐点の左手の直登ルートは立入禁止だそうです)。山頂からは登ってきた道を下りて巻き道に戻ります。
●水場やトイレなど
水場は登山道上にはありません。
トイレは登山道上にはありません。相模湖駅と高尾山口駅にあります。

[難易度・危険箇所など]

とくに大きな難所や危険箇所などはほとんどありません。
●エスケープルート
ルート上にある中沢峠、西山峠、三沢峠で甲州街道(国道20号線)の梅ノ木平方面へ下りていくことができます。いずれも40分~50分程度です。梅ノ木平から高尾山口駅までは徒歩でさらに30分程度かかります。

<南高尾セブンサミッツの魅力>

(1)高尾山登山とはもうひとつ別のハイキングコース
高尾山といえばミシュランガイドブックにも取り上げられた「高尾山」登山が有名です。また最近では高尾山の南方に位置する南高尾山稜も高尾山と同じく「高尾山口」駅からアクセスできるハイキングコースとして注目されています。
(2)奥高尾縦走路よりも気軽に縦走気分を楽しめる
高尾山稜の縦走と言いますと、高尾山と陣馬山の間をむすぶ奥高尾縦走路が有名ですが、ちょっと長い。そんなときにより気軽に縦走感覚で登山を楽しめるコースのひとつになります。起伏の大きくない丘陵地帯ですので体力面の不安も少ないです。

<補足情報>

[売店等]

登山道上には売店等はありません(大垂水峠から北側の奥高尾縦走路に入れば売店はあります)。
相模湖駅の近くに売店があります。相模湖駅には自動販売機があります。
高尾山口駅に併設して売店があります。高尾山口駅から甲州街道(国道20号線)をすこし東京側に歩くとコンビニエンスストアがあります。

[日帰り温泉など]

京王高尾山温泉 極楽湯

[お食事処]

高尾山口駅周辺には複数の飲食店があります。とろろ蕎麦が有名です。
極楽湯のなかには食堂があります。

[付近の山]

関東ふれあいの道
東海自然歩道
奥高尾縦走路(高尾山・陣馬山)
石老山
石砂山

[そのほかの補足]

●高尾山口観光案内所
高尾山口駅併設の観光案内所。各種パンフレット等備置。
●相模湖観光案内所
相模湖駅そばの観光案内所。各種パンフレット等備置。

<今回お立ち寄りした施設>

「高尾599ミュージアム」入口
「高尾599ミュージアム」入口

「高尾599ミュージアム」建物
「高尾599ミュージアム」建物

●高尾599ミュージアム
高尾山口駅近くにある高尾山の自然や生態に関する博物館です。比較的最近リニューアルオープンしたのでとてもキレイです。白を基調としたモダンな建物で大きなガラスをふんだんに使用した開放的な広々としたスペースが特徴です。高尾山の植物や昆虫などが丁寧に分かりやすく展示されています。駅からケーブルカー駅まで行く途中にすこし脇へ入った先にあります。ミュージアムショップやカフェも併設されています。入館料無料。
リンク先: 高尾599ミュージアム ※公式サイト

<参考リンク>

観光情報サイト いこうよ八王子・高尾山 (八王子観光コンベンション協会)
ぶらり相模湖 (相模湖観光協会)
高尾登山鉄道 ※公式サイト

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登山レポーター

登山やトレッキングに関する極私的な観点からの感想や記録のレポートがメインです。登山道の情報だけでなくお食事処や立寄り湯などの関連情報もお伝えしていきたいと思います。皆様の今後の山行のお役に立ち、またこれから登山を始めたいと考えていらっしゃる方のためになれば幸いです。登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。雪山やテント泊もやっています。ブログ「note」内でマガジン『登山の魅力』や『歴史に連なる山登り』なども掲載しております。よかったら併せてご覧ください。好きな山は「編笠山」(八ヶ岳)。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」

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