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【東京/白金】名店の血統!女性職人が焼き上げる名店が港区に!柔らかな接客、力強い焼鳥のギャップが魅力

今回冒険するのは、東京都港区の「陽火」。陽火と書いて、はるか。最寄りの白金高輪駅からは徒歩10分ほどのところにあり、オープン時から予約困難店として名を馳せてきた。前回訪ねたのはもう4年前のことで、それから焼き手が変わったのだという。しかも、焼鳥業界としてはまだ珍しい女性の焼鳥職人だ。

目黒の名店「阿部」の姉妹店

高級店らしくシックな店構え。ここ「陽火」は目黒の焼鳥屋「阿部」の姉妹店として知られ、席数はたった8席だけ。2カ月先までの予約がすぐ埋まってしまう白金屈指の人気店だ。

今、焼き場に立つのは中田さん。髪を団子にまとめ、ねじり鉢巻きでピシッと決めて……。こうした鮨屋のような高級焼鳥だと男性の職人は坊主であることが多いのだけに新鮮。パリッとして小粋で、絵になるなぁ。

焼き手の中田さん
焼き手の中田さん

最初に出されるネタは決まって、せせり

せせり
せせり

「陽火」の焼鳥は鹿児島県産の地鶏「黒さつま鶏」を主体に使ったおまかせコースのみ。アラカルトもセットもないので、2軒目使いには向いていない。焼鳥をたらふく食べて、ごはんで締める。そんなシンプルな食事を楽しむ店というわけだ。

「せせりです」と差し出された1本目。そうそう。1本目に必ずせせりが出されることも「陽火」の特徴だ。プリッとしてうまみ豊かで、誰にも食べやすい。それに、1本目のネタを固定することで店を印象付けられる。ささみや抱き身(むね肉)もいいけれど、ジューシーなせせりも、もちろん大あり。

ハツ
ハツ

ハツは開いて。さすがは地鶏というか、まとわり付いた脂に甘みがあり、1.5羽分と小ぶりながら食べごたえは充分。せせりからのハツ……。ジューシーさの流れでぐっと惹きつけるような、いい出だし。

口直しは大根おろしじゃなく、ガリ!?

ガリ
ガリ

昔から焼鳥屋の口直しというと、大根おろしが大定番なのだけど、ここではまさかの〝ガリ〟が添えられる。みずみずしく辛みはおだやかで、あと味にほのかな甘み。うーん。こういうアプローチもおもしろいよなぁ。

「陽火」が暖簾を掲げる前、この場所にあったのは鮨屋だったそう。鮨も焼鳥も職人の世界。そう思うと、不思議と馴染んでくるもんだ。

サクッとしたスナップえんどう
サクッとしたスナップえんどう

ねぎま
ねぎま

うずらの玉子は、とろっと半熟に

うずらの玉子
うずらの玉子

ここでうずらの玉子だ。半熟に仕上げているので、白身は歯がいらないほどやわらかく、黄身がとろり。

いいねぇ。玉子は焼鳥の流れに緩急を生むほか、口の中をリセットする役割もあるから大事なネタ。うずらの玉子好きとして何本でも食べられそうなのだけど、これは1本だからいいんだ。

かしわ
かしわ

東京の焼鳥屋でよく見かける「かしわ」はもも肉をミルフィーユ状に打ったもの。多くの店では「たれ」で仕上げるのだけど、ここではあえて「塩」で。ギュッとした弾力。こういうネタで、しっかりとした火入れは珍しいかも?

手羽ねぎまに、抱き身(むね肉)

手羽ねぎま
手羽ねぎま

ここで技あり。手羽の骨を抜いてねぎを挟んだ「手羽ねぎま」の登場だ。手羽は焼鳥屋を代表するネタではあるものの、骨付きかつ弾力に富む地鶏となると、やや食べにくさも出てしまう……。

だから骨を抜いて、そこにねぎを詰めて。皮目をパリリッと焼き上げればクリスピーで軽やかな口あたり。

抱き身(むね肉)
抱き身(むね肉)

続く抱き身(むね肉)は肉厚で、ふっくらとした仕上がり。ほかのネタに比べてポーションもやや大きく、水分量も多めだ。手前のネタがしっかりと火を入れたネタだったものだから、これはいい緩急。

とろとろのなす
とろとろのなす

運が良ければ希少部位のえんがわも

えんがわ
えんがわ

そして、砂肝の壁のやわらかい部分だけを集めたえんがわ。シャクシャクと小気味よい歯ざわりで、さりげなく忍ばせたねぎの香味と食感で奥行きが増している。

この1本を作るのに何羽もの鶏が必要になるため、焼鳥好きなら間違いなくハマる希少部位ネタ。ここ「陽火」に限らず、出合えたら幸運のあかし。

歯ざわりのいいヤゲン軟骨
歯ざわりのいいヤゲン軟骨

しっとりとしたささみ
しっとりとしたささみ

弾力に富むだんご
弾力に富むだんご

野菜も含めれば17品、選べる〆も

野菜も含めれば17品。全体的に串のポーションは小ぶりなものの、黒さつま鶏の食べごたえもあって物足りなさを感じさせないおまかせコースだった。

〆はそぼろ丼や煮麺から選べるというので、煮麺を。鶏スープで仕立てたそうめん、というわけだ。焼鳥を17品食べたあとだというのに、これがまたするっするっと喉を通っていく。焼鳥がメインなのだから、これくらいさっぱりとした〆でもいいのかもしれないなぁ。

中田さんのたおやかで丁寧な接客、それでいて力強く焼き上げる焼鳥の数々。それが「陽火」の魅力だ。世の中はジェンダーレス。「女性らしさ」という言葉も死語になっていくのかもしれないけれど、それでも、中田さんが生む空気は確かにあった。それは言葉や所作やの一つ一つに表れていたと思う。

中田さんは以前は大塚にある系列店「結火」で働いてた。しかも、その時は焼き場ではなく、着物姿でサービスを担っていた。それが今ではすっかり焼鳥職人の出で立ち。聞けば「もともと焼鳥職人になりたかったんです。まだまだですが、機会に恵まれました」とどこまでも謙虚に。

両腕に刻まれた火傷の跡は覚悟の表れ。きっと焼鳥に限らず、鮨も天ぷらも女性職人が活躍していく時代になる。「陽火」のますますの成長が、楽しみだ。

▼冒険のおさらい

①黒さつま鶏主体のおまかせコース

②女性職人ならではのたおやかな接客

③目黒の名店「阿部」の姉妹店

【予約方法!】
・月初めに2カ月先の予約まで可能。9月末までの予約は7月1日に受付。
・食事の開始時間は「16:00」または「19:00」
・予約は電話(080-8495-7977)にて

店舗情報
【店名】陽火
【最寄り駅】白金高輪駅
【住所】東京都港区白金5-8-13
【予約】080-8495-7977
【定休日】日曜、月曜
【串のアラカルト】なし
【コース(セット)】おまかせコース
【鶏メモ】黒さつま鶏

毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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