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国債にやっと金利が戻る。個人向け国債10年変動の利子が0.33%に。

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 財務省は6日に1月10日から31日にかけて募集される個人向け国債の発行条件等を発表した。

「個人向け国債の発行条件等」 https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p20230106.pdf

 固定タイプの3年ものの利率は0.05%と前回と変わらずとなっていたが、5年ものは0.18%と前回の0.07%を上回ってきた。これは2013年10月の0.24%以来の高い利率となる。

 そして10年変動タイプの初回の利子の適用利率が0.33%となった。これは2015年8月の0.34%以来の高い初期利子となる。

 日銀は昨年12月20日の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大した。

 日銀は現在、本来であれば市場で形成されるはずの長期金利をコントロール目標として、毎営業日無制限連続指し値オペなどを用いて、無理矢理、おさえ込んできた。しかし、海外の長期金利の上昇のみならず、国内の物価上昇もあり、そのレンジを拡大せざるを得なくなった。

 これによって、かろうじてではあるが、国債の利回りが上昇してきたのである。国債にやっと金利が戻ってきた。

 我々は本来物価などに応じた金利を得られるはずであるが、日銀がそれをおさえ込むことによって、我々が得られるはずの金利をなくしていた。これは普通の姿ではない。金利は付かなくて当然ではなく、付いてあたりまえのものである。

 5日に実施された10年国債の利率は0.5%と前回の0.2%から引き上げられた。入札時の落札利回りも0.5%となった。これを受けての10年変動タイプの初期利子の引き上げとなった。

 3年と5年の固定タイプはそれぞれ利子が0.05%と0.18%に固定される。銀行によっては1年定期でこれらを上回っているところもあるが、メガバンクなど大手銀行の定期預金金利と比べると利率は高い。ただし、個人向け国債は1年間は売却ができないという点にも注意したい。

 同様に10年変動も1年間は売却ができないが、こちらは半年毎に利率が10年国債の利回りに応じて変化する。10年国債の入札の結果を受けた基準金利に0.66を掛けて算出される(但し、下限は 0.05%)。

 今後の長期金利がどうなるのか。これも当面は日銀次第となるが、今後再び低下するというよりも、本来市場で形成されるものに近づくとみるのが自然だと思われる。現在の本来の長期金利の位置がどのあたりになるか、いろいろと試算はあろうが、物価や海外の長期金利などから考慮して、1%を超えていてもまったくおかしくはない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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