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習近平の顔に泥!――北朝鮮ミサイル、どの国への挑戦なのか?

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)

一帯一路国際サミットに招待を受けて参加している北朝鮮が、なぜその初日にミサイル発射などをしたのか?習近平は思い切り顔に泥を塗られた形だ。サミット後に北朝鮮に見切りをつけるのか?そうすべきだ。

◆習近平、最大の判断ミス

(以下、敬称を全て省略する。)

5月14日から北京で開催されている一帯一路(陸と海の新シルクロード)国際サミットに北朝鮮代表を参加させることによって、中国は北朝鮮を改革開放の道へといざない、何としても対話の道を選びたかった。というより、「中国は北朝鮮に対話の道を選ばせることに成功した」ということを、世界に見せたかったものと推測する。

中国は今般の一帯一路国際サミットを中華人民共和国誕生以来、最大の事業と位置付けてきた。中央テレビ局CCTVは毎日そのように呼び掛け、連日「一帯一路特集」を報道してきた。

トランプがTPP撤退を宣言して以来、中国こそがグローバル経済のトップリーダーと自らを位置づけ、これで「中華民族の偉大なる復興」が達成され、「中国の夢」が叶うと意気込んできたのである。

そのために自信過剰になっていたのかもしれない。

4月中に核実験をしようとした北朝鮮に、「もし実行したら国境線を封鎖する」とまで脅して核実験を思いとどまらせた。

トランプも、「条件が整えば、会ってもいい」というニュアンスの発言をしていた。

韓国には親北の文在寅政権が誕生する見込みも確信へと変わっていった。

条件がすべてそろったと判断した中国は、北朝鮮をグローバル経済のトップを走る(と中国が位置づけている)一帯一路国際サミットに招待。北朝鮮もそれに応えた。

しかし残念ながら、金正恩という人間は、習近平の期待に応えるような人物ではなかったことが、これで十分に判明しただろう。

こともあろうに、習近平が待ちに待った「晴れの舞台」のその日に合わせて、ミサイルを発射したのだから。これ以上の恥はないだろうというほどの、最高レベルの恥のかかせ方を、金正恩は心得ていたことになる。

習近平の政治人生、最大の判断ミスではなかっただろうか。

いや、驕りであったかもしれない。

◆誰に対する挑戦なのか?

しかし、それにしても、これだけの好条件は、金正恩にとってもないほどの、すべての条件が揃い、それを選びさえすれば、北朝鮮にも道は開かれている、おそらく「唯一にして最後のチャンス」だったはずだ。

そのチャンスを、なぜ金正恩は捨てたのか?

いま、何か、「思い知らせてやりたい」とすれば、誰が対象だったのだろう?

これまでのミサイル発射に関しては、それぞれ北朝鮮が抗議を示したいであろう相手あるいは現象を見つけ出すことができた。

しかし今回は全く見当たらない。

そのことから逆に、金正恩という人物がいかなる考えというか、心理状態を有した人物であるかを分析することができる。

彼はただ、「自分は譲歩したわけではないからね」という強がりを、いよいよ譲歩を実行するしかない状況に来て見せただけではないのだろうか?

◆今度は中国が追い詰められた

習近平の判断の甘さというか、登りつめた驕りというか、あまりに一帯一路国際サミットに意気込んでいたが故の判断ミスと位置付けるしかないだろう。

今般のサミット参加は、中国が北朝鮮に与えた最後のチャンスになるだろうと考えたい。

習近平の怒りたるや、尋常ではないにちがいない。

サミット閉幕後に爆発するかもしれないが、もしここで北朝鮮に見切りをつけなかったとしたら、中国の国際社会における立場はなくなる。29ヵ国の首脳や日米を含む130ヵ国の代表団を集めて開催した責任上、習近平はこのケリを付けなければならない。

残されている手段は国境封鎖、断油、そして中朝軍事同盟の破棄だ。

第三次世界大戦に発展しない範囲内で、これまで見せつけてきたカードを、実際に切る以外にないところに、今度は中国が追い詰められた。

もう、「緩衝地帯だ」などと、言っている場合ではない。隣国に米軍が来ても仕方がないと覚悟を決めて、見切りをつけるべきだ。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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