桜花昇ぼる、“男”も“女”もどちらも武器に!
OSK日本歌劇団の元トップスター・桜花昇ぼる(おうか・のぼる)さん。退団から2年2ヵ月を経て、10月16日にファーストコンサートを大阪・松竹座で開催します。退団後は髪を伸ばし女優として活動する人が多い中、男役時代と変わらずショートカットにパンツ姿。「女性としての役も、そして男役も、2つともできるのが自分の持ち味。どちらも自分だし、しっかりと両方やっていきたいと思っているんです」と言葉に力を込めました。
全部自分でやらないといけない
退団して2年2ヵ月。感覚としては、あっという間でしたね。劇団にいた時よりも、毎日が目まぐるしいというか。
卒業してから1年はフリーでやってたんですけど、正直な話、フリーはいろいろしんどくて。辞めてすぐは“ご祝儀”と言いますか、ディナーショーをさせていただいたり、いろいろなお仕事もあるんですけど、フリーということは事務所もマネジャーさんもないので、全部自分でやらないといけない。
舞台上でのことだけでなく、仕事先の方とお金(出演料)の交渉も自分でやらないといけないし、共演者の方々のスケジューリングもやるのは自分。それに加えて営業活動というかチケットも売らないとダメですし。朝起きた瞬間から業務開始で、寝る直前まで携帯電話が手離せないような状況でした。さすがに「これはアカン…」と思い、去年から事務所にお世話になることになったんです。
道のりが全部力になる
フリーの期間も本当に大変ではありましたけど、今から思ったら貴重な経験やったなと思います。また、歌劇団にいた時には、歌劇団の存続が危ぶまれ、何年にもわたって存続活動もしました。あまりの寒さでボールペンも持てないような真冬に街頭で署名活動をしたり、この先仕事がどうなるか分からないからハローワークに通いながらけいこをしたり。スタッフさんもいなくなってファンクラブ会報の封筒詰めも自分たちでやりましたし。
本当にきれいごとじゃなく、その時はものすごくしんどいけど、今は全部が自分の糧(かて)になっているなと。道のり全部が力になるというか。
だから、退団しても、今、私が髪の毛も短くして、パンツスタイルでいるのは自分が歩んできた道への思いがあってのことなんです。
確かに、退団していただくお仕事は、女優としての出演を求められるものが多い。男役というのは歌劇団の中での特殊な役回りですから、外の舞台ではなかなか表現しにくいというか。ただ、私はずっと男役をやってきて、もともと女性ということに加え、今も男役ができる。なので、男性も、女性も、どちらもできるというのが自分なのかなと。
自分の持ち味を活かせる
去年、講談師としても初舞台を踏ませてもらったんですけど、講談というのは瞬時にして男性だったり、女性だったり、お年寄りだったり、子どもだったり、自分一人があらゆる役になって演じていく。これも、男役を長くやってきた自分の持ち味を活かせるかなと思ってやらせてもらったことなんです。
あと、ずっと乗馬をやっているんですけど、将来的には、たとえば、馬に乗った状態で歌うとか、自分にしかできないものを模索していけたらなと思っています。本当に、いろいろやれたなと思うんです。欲張ってますかね(笑)。
■桜花昇ぼる(おうか・のぼる)
9月23日生まれ。奈良県出身。幼少期からOSK日本歌劇団の舞台を見て育ち、91年に日本歌劇学校に合格。93年、「桜花昇」としてOSKデビューを果たす。2007年にトップスターに就任し、その後、芸名を「桜花昇ぼる」に改める。2014年8月に歌劇団を退団。また、講談師の旭堂南陵に師事し、今年2月から旭堂南桜(きょくどう・なんおう)としても活動している。10月16日にファーストコンサートを大阪・松竹座で開催する。