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マイケル・コペックはドジャース中継ぎ陣の窮状を覆す救世主になれるのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ドジャース移籍後圧倒的な投球を続けるマイケル・コペック投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ドジャース移籍後初セーブを挙げたコペック投手】

 現地時間8月16日に行われたカージナルス戦で、7対6の1点差で迎えた9回裏にドジャースのデーブ・ロバーツ監督がマウンドに送ったのは、マイケル・コペック投手だった。

 トレード期限日前日の7月29日にホワイトソックスとカージナルスとの3チーム間によるトレードで中継ぎ陣の補強要員として加わったMLB屈指の速球右腕にとって、移籍後初のセーブ機会での登板となったが、最速102.6mphを計測するなど相手打者をパワーで圧倒し、見逃し三振、三塁ゴロ、空振り三振の3者凡退で試合を締めくくった。

 最後の打者を打ち取った瞬間、コペック投手はマウンド上で雄叫びを上げるほど、気合い十分で臨んだ登板だった。

【今季ドジャース中継ぎ陣のセーブ成功率は60.3%】

 ドジャースは現在、白熱した地区首位争いを演じている。

 故障者続出のチーム事情もさることながら、シーズン後半戦に入りパドレス、ダイヤモンドバックスが快進撃を続けドジャースを猛追。一時は2位に最大で9.0ゲーム差をつけ独走態勢を築きつつあったが、現在は3チームが3ゲーム差でひしめく大混戦状態になっている。

 早くも1試合も落とせない戦いを強いられる中、山本由伸投手に続きこの日タイラー・グラスナウ投手まで戦線離脱してしまった先発陣のみならず、中継ぎ陣もブレイク・トライネン投手、ライアン・ブレシア投手、ブルースダル・グラテラル投手(復帰登板で右太もも裏を痛め再び戦線離脱)らの主力組が戦線離脱しており、シーズンを通して磐石な状態をつくれていないでいる。

 それを裏づけるように、元々クローザーを特定しない今シーズンのドジャース中継ぎ陣はセーブ機会で痛打を浴びるケースが多く、セーブ成功率は60.3%(63回のセーブ機会で成功したのは38回)に止まっている。

 ちなみにセーブ機会失敗数25回は、ホワイトソックスの30回に次ぐMLBワースト2位だ。もちろんこうした状態でシーズン終盤を戦うのはかなり厳しいといわざるを得ない。

【ドジャース移籍後8試合で許した走者はわずか2人だけ】

 そんな窮状が続く中継ぎ陣の中で、現在最も安定感ある投球を続けているのが新加入のコペック投手その人だ。

 移籍前のコペック投手は9セーブを記録しているものの、2勝8敗、防御率4.74と、ホワイトソックスがセーブ機会失敗数でワースト1位になっている要因となった存在だった。

 ところが移籍後のコペック投手は、まったく別人のような投球を続けている。ここまで8試合に登板し8.1イニングを投げ、許した走者は四球と単打の2人のみ。もちろん防御率はゼロのままであり、被打率は.074、三振率48.2%、死球率3.7%と絶対的な安定感を誇っている。

 この日初めてクローザーに起用したロバーツ監督は「我々には試合を締めくくれる投手が何人かいるが、(コペック投手は)有力候補になってくるだろう。ただ8回に好打順から始まる場面ではそちらも大切になってくる」と話し、コペック投手をクローザーに固定せず中継ぎ陣のキーマンとして最も重要な場面で登板させる考えを示している。

 間違いなくコペック投手は、残りシーズンにおけるドジャースの成否のカギを握っている存在といえそうだ。

【2025年シーズンまでドジャースが支配下に置く権利】

 ドジャースにとってコペック投手獲得は彼の変身ぶりにより、単に今シーズンだけの臨時補強だったわけではなくなった。

 というのも、コペック投手のMLB在籍日数はまだ5年未満なので、FA資格を得られるのは2025年オフになる。ドジャースが今オフにノンテンダー(事実上の戦力外)しない限り、彼は2025年シーズンもドジャースの支配下に置かれるわけだ。

 つまりドジャースはコペック投手獲得で、来シーズンの主力中継ぎ投手を1人確保できたことを意味しているのだ。

 とにかく現在のドジャース中継ぎ陣は、コペック投手が牽引しているといっていい。彼が現在のような投球を続けてくれる限り、何とか中継ぎ陣の崩壊は免れそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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