日銀の言うところのコストプッシュとは何か
9日に10月30、31日に開催された金融政策決定会合における主な意見が公表された。このなかの「物価」に関する議論で次のような発言があった。
「物価見通しは上振れているが、その主因はコストプッシュである。2%の持続的・安定的な実現には、コストプッシュがなくなった後も、自律的に賃金と物価の好循環が回り続けることが必要である。」
インフレにはコストプッシュ型とディマンドプル型に分けられるという説がある。景気拡大によって需要(ディマンド)が増加することにより、物価が上昇する。需要サイドに起因する物価上昇をディマンドプル・インフレと呼んでいる。
これに対し供給サイドである企業など生産者のコストが上昇した場合に起こるのが、コストプッシュ・インフレと呼ぶ。
そもそも物価上昇要因をコストプッシュとディマンドプルに明確に区別はできない。
さらに上記発言に矛盾があるのは、企業など生産者のコストが上昇した場合に起こるのが、コストプッシュであり、つまり賃金が上昇した場合に起こるのもコストプッシュに含まれている。
日銀は消費者物価指数(除く生鮮)が18か月連続で、日銀の目標とする2%を超えているのに、物価上昇の主因はコストプッシュであるとして、正常化、つまり普通の金融緩和策に戻ることすら拒否している。
さらに、金融政策の正常化となるイールドカーブ・コントロールとマイナス金利政策の解除は、どのような条件で行うのか、具体的な数値も示していない。
その上、自律的に賃金が上昇してもコストプッシュ型のインフレとなってしまうという矛盾をどのように解釈したら良いのかも示していない。