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遺産への考え方、一人暮らしと世帯持ちでは大きな違いが

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自分が手にした資産は当然死後まで持ち運べない。遺産として残すのか…(ペイレスイメージズ/アフロ)

自分の資産を単身世帯は使い切る傾向

亡くなった人が残した資産を遺産と呼び、遺言や様々な法に基づいて分配される事になる。人は自分の手持ちの資産に関して、遺産として死後分配される事に、いかなる想いを抱いているのだろうか。金融広報中央委員会の「知るぽると」が2016年12月付で発表した「家計の金融行動に関する世論調査」から確認していく。

同調査の中で「遺産についてどのような考えを抱いているか」に関する項目では、主に財産処分方法と、子供に残すか否かの2つの視点から複数の選択肢を提示し、回答者にもっとも自分の考えに近いものを選ばせている。つまり自分が遺産を残す立場となった時、該当する資産をいかなる方法で、子供に遺産として残すか、それとも残さないかを選んでもらっている。当然回答者の中には現在遺産を残すどころか受け取る立場にある年齢の人もいるが、将来そのような立場の年齢になった場合を想定し答えてもらっている。単身世帯・二人以上世帯それぞれの世帯主に聞いた結果が次のグラフ。

↑ 遺産についての考え方(択一、2016年)
↑ 遺産についての考え方(択一、2016年)

単身世帯での具体的な選択肢における最多回答は「子供がいない&人生を楽しみたいので財産使い切り」派。一方二人以上世帯では「老後の世話か稼業引き継ぎなどの条件無しに、子供に財産残したい」派。それぞれ「独り者」か「子供が居る(今は居なくとも将来的な話も含む)」かによって、遺産への考え方が大きく異なってくる状況が良く分かる結果である。要は「残す相手がいなければ手持ちの資産は自分で全部使い切りたい」「残す相手が居ればとにかく残したい」。

他方、「稼業引き継ぎ」を遺産相続の条件に挙げている人はごくわずか。元々引き継ぎが必要な稼業をしている人が少数なのも一因だが、遺産をネタに稼業引き継ぎを「強要」することを是とはしていないようだ。一方で交換条件的に何かを要求する選択肢としては、「老後の世話をしてくれれば遺産を」とする意見が、二人以上世帯で2割近くに達している。子供を持つ親の考え方としては現実的。

気になるのは「子供は居るが、自分の人生を楽しみたいので(遺産は残さず)使い切りたい」との意見。単身世帯(将来結婚して子供を設けるとの仮定、あるいは諸事情で子供と別居中)はともかく、二人以上世帯でも13.5%が同意している。決して少なくない人がこの選択肢を選んでいるのは興味深い。

年齢で遺産への考え方は変わるか否か

直近分につき、回答者の年齢別に動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 遺産についての考え方(2016年、単身世帯、択一、世帯主年齢階層別)
↑ 遺産についての考え方(2016年、単身世帯、択一、世帯主年齢階層別)
↑ 遺産についての考え方(2016年、二人以上世帯、択一、世帯主年齢階層別)
↑ 遺産についての考え方(2016年、二人以上世帯、択一、世帯主年齢階層別)

大勢はそれぞれの世帯構成における全体値と大きな違いは無い。一方で詳細を見ると、年齢により考え方にいくぶんの違いが生じているのが分かる。単身世帯の場合、まだ将来結婚をして子供を設ける可能性が多分にあることから、「老後の世話をしてくれるならば、子供に財産を残してやりたい」が高めだが、これも歳と共に減少。他方、子供は居るが使い切りたいとの回答は、若年層の場合回答者が単身赴任か何かで単に子供と一時的に離れている可能性が高いため少数だが、歳を経るに連れて別居状態が継続している場合が多くなるため、値が高くなる(60代ではやや減るが)。

二人以上世帯の場合は、子供が同居している場合が多々あり、また自身の体の衰えを実感することも合わせ、「老後の世話をしてくれるならば、子供に財産を残してやりたい」が50代以降は歳と共に上昇する。他方、「老後の世話をしてくれるか、家業を継ぐかなどに関わらず、子供に財産を残してやりたい」は歳と共に確実に減り、70歳以上になると3割を切る。「老後の世話」の増加と合わせ、歳を重ねて自分の衰えを実感するに連れて、遺産を世話のための交換条件・材料とする思惑が強くなる様子がうかがえる。同時に世話をしてもらう必要のない高齢層が「子供はいるが使い切りたい」との意見を積み増ししてくるのも興味深いところではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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