30年以上ぶりにMLBに選手兼任監督は誕生するのか?
現役選手が監督業を兼任することは「選手兼任監督」と呼ばれている。NPBでは2014年シーズンに谷繁元信氏が中日で選手兼任監督に就任するなど今でも決して珍しくない存在だが、MLBでは1984~86年シーズンでピート・ローズ氏がレッズで兼任監督を務めていたのを最後に、30年以上も誕生していない。
そんな中選手兼任監督に興味を示した選手がいる。現在MLB屈指の頭脳派捕手と謳われるカージナルスのヤディアー・モリーナ選手だ。ESPNが、彼のインタビューを交えて報じている。
モリーナ選手はベンジー、ホゼと2人の兄もMLBで捕手として活躍した“ベンジー3兄弟”として名を馳せた。兄弟の中で最も才能ある選手として期待され、2000年のドラフトでカージナルスから4巡目指名でドラフト指名され、現在もカージナルス一筋15年目の36歳ベテラン選手だ。
2004年にMLB初昇格を果たすと、翌05年シーズンからマイク・マシーニー選手(前カージナルス監督)に代わり正捕手の座を獲得し、それ以降現在に至るまで“カージナルスの頭脳”であり続けた。その間ワールドシリーズ出場4回(うち2度制覇)、オールスター戦出場9回、ゴールドグローブ賞受賞8回──の実績を誇り、引退後は殿堂入りも確実視される球史に名を残したといってもいい名捕手だ。
カージナルスはつい先日(7月15日)、チームは勝率5割前後を維持していたが監督就任7年目のマイク・マシーニー氏の解任を決断。残りシーズンはベンチコーチだったマイク・シルト氏が代理監督を務めることになった。シルト氏が後半戦の巻き返しに成功しチームを4年ぶりのプレーオフ進出に導くようなことになれば、引き続き彼が指揮をとる可能性も残されているが、シーズン終了後に本格的な新監督の選任作業に入ることになる。もしチームが選手兼任監督に前向きな考えであるならば、誰もがそのベースボールIQの高さを認めるモリーナ選手ほど適任者はいないだろう。
ESPNの記事によれば、モリーナ選手は選手兼任監督について以下のように話している。
「どんな選手にとっても、そうした役割を担えることは夢のようなものだ。自分はどんなことに対しても自分からドアを閉めるようなことはしない。何に対してもオープンだ。もちろん家族と過ごす時間もすごく大切だけど、もしそうしたチャンスをもらえる日が訪れるなら、自分はそれを受け入れるだろう」
ただESPNの記者がモリーナ選手にどのように質問したのか判然としないが、記事の流れではモリーナ選手が契約最終年を迎える2020年シーズンでの選手兼任監督について言及している。実はモリーナ選手は2017年4月にチームと3年間(2018~20年)の契約延長に合意したのだが、18年シーズンを迎えるにあたり「今回の契約が完了したら引退する」と引退表明をしているのだ。つまり現役最後となる記念すべきシーズンで選手兼任監督に興味があるかという主旨のようなのだ。
だが前述した通り、チームはマシーニー監督を解任したことで、早ければ来シーズンから頼れる新監督に指揮を任せたい状況だ。すでにモリーナ選手は選手兼任監督に前向きな姿勢を見せているのだから、チームの方針次第では来シーズンからの選手兼任監督就任の可能性も十分にある。
もし来シーズンから2年間モリーナ選手が選手兼任監督を務めチームが成功すれば、引退後はそのまま専任監督に移行し長期政権を築くこともできる。チームとしてもモリーナ選手がカージナルスで果たした功績を考えれば、引退後も残ってほしいと考えていてもおかしくはない。そうした意味でも選手兼任監督を任せるのは理想的なアイディアの1つだろう。
個人的にもモリーナ選手の指揮に非常に興味がある。できれば彼の選手兼任監督就任が実現することを待ち侘びたいところだ。