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世代別に正規・非正規就業者数の詳細な推移を確認してみる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 就業者数やそのうち非正規の全体数は語られることが多いが世代別で見ると……

雇用市場に関する動向が注目を集めている。就業者の人数やそのうち非正規の人がどれほどいるのか、全体的な様相は語られるものの、世代別の流れは案外触れられていない。世代別に区分した上での、就業者全体に対する非正規の比率はすでに「世代別に非正規社員率の動向を確認してみる」でチェックをした通りだが、今回は人数の上での内情を、総務省統計局の労働力調査の公開データを基に確認していくことにする。

雇用状況が男女で大きく異なるのは承知の通り。社会全体の動向を概観的に探るレベルなら男女をまとめた値での精査でも構わないのだが、雇用状況をより深く確認する必要があるため、今回は男性に限った上で、世代別動向を見ていくことにする。各世代別でデータが取得可能な(毎年第1四半期の平均値、2001年以前は(2月と8月のみ調査が行われているため)2月の値)1984年~2014年までの男性全体、そして世代別の正規・非正規の人数をグラフにしたのが次以降の図。会社役員は除いてあることに注意。

↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(15-24歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(15-24歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(25-34歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(25-34歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(35-44歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(35-44歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(45-54歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(45-54歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(55-64歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(55-64歳)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(65歳以上)
↑ 世代別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(男性)(役員を除いた雇用者数)(65歳以上)

非正規就業者の数の増加、比率の増大が問題視されているのは事実。その問題と指摘される状況を作るきっかけの一つが関連法案の改正にあったのも事実で、全体値ではそのきっかけ(1999年と2004年)以降人数・比率共に増大しているのが確認できる。

ところが世代別に見ると、若年層では非正規の数はほぼ横ばい、良くて微増の範囲に留まり、正規が漸減し、就業者数全体が減り、結果として非正規の比率が大きく伸びている実態が分かる。一方中堅層では総就業数は横ばいか漸増、正規も横ばいかやや増、非正規は漸増となり、若年層とは状況を異にしている。

そしてもっとも大きな変化を示しているのが55歳以上の高齢者。特に65歳以上では正規の数はあまり変わらず、非正規の数が大幅に増加し、この世代における就業者数がかさ上げされているのが分かる。この増加の原因は定年退職後に勤め先にパートやアルバイト、嘱託や顧問として再雇用される場合や、ボランティア的な低賃金の就労に当たる場合が多い。

社会全体の労働状況は次の通りと見ることが出来る。若年層の雇用は抑えられ、特に正規が削られ、少しずつ非正規が増えていく。代わりに高齢層の非正規があてがわれていく。これは就業者の世代的な新陳代謝がスピードダウンすることを意味する。若年層の就労実態を調査した厚生労働省の「若年者雇用実態調査」でも同様の結果が導き出されているが、今件データはそれを裏付けたことにもなる。

↑ 産業別労働者割合(若年層率)(2009年-2013年)(全就業者に占める若年層(15~34歳)の割合。「若年者雇用実態調査」より作成)
↑ 産業別労働者割合(若年層率)(2009年-2013年)(全就業者に占める若年層(15~34歳)の割合。「若年者雇用実態調査」より作成)

女性の動向は略するが、非正規率が高めな以外は男性と大きな違いは無い。高齢層は正規が横ばいで、非正規がグンと伸びる形となっている。

若年層の就業者数が減退しているのは、若年層の人数そのものが減っていることに加え、大学への進学率が上昇しているのも一因。しかし高齢層の急激な非正規率・人数の増加によるところが大きい。そして企業内の新陳代謝が遅れることになる(これは結果であると共に、原因の一部でもあるのだろう。新陳代謝を遅らせる動きがあるからこそ、若年層の就業が抑圧されることになる)。

就業者全体としての非正規率の上昇原因は、各世代における非正規数の増加・正規の減少に寄るところに違いはないが、多分に男女ならば女性、そして世代別ならば高齢層の非正規の増加が大きく係わっていることが分かる。

また今回は精査を略するが、ここ数年に限れば就業者数は漸増し、完全失業者数・率、非労働力人口は漸減の傾向にある。上記グラフでもこの数年において、若年層でも就業者数が増加しているのもその表れ。正規・非正規の問題は全体として見れば大きな要件に違いないが、表面的な部分だけにとらわれず、複数の側面、そして関連する各種動向も合わせ、考える必要がある。その位置側面が、今回の世代別動向という次第である。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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