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2017年ルターの宗教改革から500周年(その1) ルターが修道士として暮らした街エアフルト

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
ルターが暮らしたアウグスティーナー修道院回廊にて・(c)n.spitznagel

宗教改革の創始者マルティン・ルターが、大学生(1501年~1505年)として、そして修道士(1505年~15011年)として暮らした街エアフルトは不思議な魅力を持った古都です。ルターだけでなく、ゲーテ、ナポレオン、シラーなどを魅了したエアフルトとはどんな街でしょうか。

2017年の宗教改革500周年に向けて、ドイツ各地でルターの足跡を辿る展示会や祝典、コンサートが開催され注目を集めています。まずはルターゆかりの街エアルフトへ行ってきました。  

ゲーテ街道の街エアフルトの魅力

なだらかな丘陵地帯にあるエアフルトはゲーテ街道(ドレスデン・フランクフルト間)の中ほどに位置するテューリンゲン州の州都です。

建都は742年。13世紀には国内やヨーロッパの商販路が交わる場所だったことから、エアフルトは商業ならびに学園都市として成長を遂げました。

ルターは、修道院や教区教会など計80にも上る教会施設があるこの街を「塔多きエアフルト」と讃えたそうです。偉人たちの故郷として、そして出会いの街として、エアフルトの不思議な魅力は人々を惹きつけたといいます。

東西統一から25年経った現在、朽ち果てかけていたエアフルトは急速に修復がなされ、モダンな美しい街に生まれ変わりました。 

またエアフルトは世界大戦でほとんど被害を受けなかったため、古い建造物や歩道など中世の街並みが残されており、伝統的で静かな佇まいも持ち合わせています。

大学生、修道士、エアフルト大学教授としてエアフルトで暮らし、後に宗教改革を手がけたルターは、ドイツの「偉大な息子」として、その功績が讃えられています。

ルターの足跡・アウグスティーナー修道院

アウグスティーナー修道院(c)norikospitznagel
アウグスティーナー修道院(c)norikospitznagel
アウグスティーナー修道院図書館(c)n.spitznagel
アウグスティーナー修道院図書館(c)n.spitznagel

エアフルトに残る最大の修道院は、1277年に建てられたアウグスティーナー修道院です。 この修道院は、修道院建築文化財として指定されており、教会を併設しています。

マルティン・ルターは、1505年~1511年修道士としてアウグスティーナー修道院に住んでいました。 修道院見学ではルターの展示と部屋の見学も可能です。

6万冊の蔵書がある図書館は、ドイツのもっとも重要な教会書籍収集の場です。この図書館には13,000点の手書写本や1850年前の印刷物、初期刊本、宗教改革文書、ルター全集があります。

ルターが中世哲学/神学を学んだエアフルト大学は1392年に設立され、19世紀に一旦閉鎖されましたが、東西ドイツ統一後1994年に再建されました。それゆえ、ハイデルベルク大学、ケルン大学に続いてエアルフト大学は国内で3番目に古い歴史を持つ大学といわれます。

エアフルト大聖堂

エアフルト大聖堂前にて(c)norikospitznagel
エアフルト大聖堂前にて(c)norikospitznagel

街のランドマーク「エアフルト大聖堂」は、旧市街の小高い丘にそびえ建っています。8世紀中ごろに建てられ、その後12世紀にロマネスク様式、13世紀にはゴシック様式の内陣が加わりました。祭壇は、木彫り芸術の傑作と言われ、十二使徒が等身大で彫られているのが特徴です。

ドーム広場(大聖堂前の広場)に立つと、大聖堂の壮大な階段に圧倒されます。この階段を舞台として開催される野外劇は、夏の一大イベントとして大好評です。

また、ドーム広場で開催されるクリスマスマーケットは市民が待ち焦がれる冬の風物詩です。ライトアップされた大聖堂のもとで焼き菓子やグリューワイン(ホットワイン)からたち上がるシナモンやのアーモンドの香ばしい匂いが漂い始めると、広場は市民のミーティングポイントとなります。

市庁舎のあるフィッシュマルクト

フィッシュ広場・中世に財を成した商人の家(c)n.spitznagel
フィッシュ広場・中世に財を成した商人の家(c)n.spitznagel
市庁舎外観・内部は絢爛豪華です(c)norikospitznagel
市庁舎外観・内部は絢爛豪華です(c)norikospitznagel

市庁舎のある広場はフィッシュ広場と呼ばれ、中世には様々なマルクト(市)がたったそうです。こうしてこの広場は街の中心として発展していったといいます。

この広場の周辺には、かって藍染で財を成した商人たちの華麗な家が立ち並んでいます。どの家も贅沢を極めた装飾が施されており、目を見張るほどの美しさに唖然とすることでしょう。

市庁舎は、1870年から4年かけて建てられた石造りのネオゴシック様式の建物。内部の階段や祝典の間にファウストやワグナーのタンホイザーなどドイツの伝説、ルターの生涯を題材にした多くの絵画や、エアフルト建都から市庁舎建造にいたるまでの絵画などが見られます。館内見学は、市庁舎受付に申しこみます。

商人の橋だったクレーマー橋

ゲラ川にかかるクレーマー橋(c)norikospitznagel
ゲラ川にかかるクレーマー橋(c)norikospitznagel

ここが橋?川の見えないクレーマー橋 (c)norikospitznagel
ここが橋?川の見えないクレーマー橋 (c)norikospitznagel

エアフルト市内を流れる川には142もの橋がかかっているそうです。その中で観光客が真っ先に足を運ぶ橋はゲラ川にかかっているクレーマー橋です。なぜこの橋が注目されているのでしょう。

全長120メートル、ヨーロッパ最長の現存する家屋付の石橋・クレーマー橋から川は全く見えず、足を踏み入れてみても、商店街があるだけなのでここが橋とはわかりません。それがこの橋の魅力でもあるのです。

なぜ橋の上に家屋を立てる必要があったのでしょうか。それは、エアフルトを代表する産業のひとつ藍染に理由がありました。藍染の発展に伴い、東西の交流中心地としてクレーマー橋が利用されるようになると、エアフルトの人口は急増し、土地不足から旧市街には家を建てることができなかったとか。そのため、市政は橋の上に住居を建てることを許したそうです。

橋の両側には工芸品やアンティーク、チョコレート専門店など32軒が所狭しと立ち並んでいます。中世時代は現在の倍近く60軒以上の小売店があったそうで、これが商人の橋といわれた所以とか。

行列のできるチョコレート工房

芸術品です! 味もたまりません。(c)norikospitznagel
芸術品です! 味もたまりません。(c)norikospitznagel

クレーマー橋にあるチョコレート工房ゴルトヘルム(Kraemerbruecke12-14番地)は、連日行列ができる人気の店です。

店主のアレックス・キューンさんは、ジンジャーやチリ入リ、ウィスキーや緑茶入リと実に多種多様なチョコを工房でひとつひとつ丁寧に作り上げています。特に見逃せないのが「ブリュッケントリュッフェル」(橋のトリュフ)と呼 ばれる、エアフルトのシンボルでもあるクレーマー橋にちなんだチョコレートです。

ゴルトヘルムオリジナルのアイスクリームもおすすめ。同店のアイスは、ドイツグルメ雑誌「ファインシュメッカー」による国内ベスト40、そしてテューリンゲン州ナンバーワンの栄光を射止めた絶品です。

アンガー広場とカウフマン教会

エアフルト中央駅から駅通りを歩いて5~6分でアンガー広場に到着します。エアフルトの路面電車はすべてこの広場駅を通るため、いつも賑やかな一角です。

広場周辺には、18~19世紀の富豪の家が連なり、とても豪華な街並みを目にすれば、中世の頃はどんな人達がここを行き来していたのだろうかと想像を駆り立てます。19世紀末の建築様式が美しいアンガー・ショッピングモールは、見るだけでも楽しくなります。

アンガー広場に面しているカウフマン教会はマルティン・ルターが説教をした教会です。また、バッハ一族の縁の教会として、バッハ一族の婚礼や埋葬なども行われた由緒ある教会です。 

ナポレオンとゲーテが会見した場所 代官官邸

かってマインツ選定候の建物だった代官官邸は、現在、テューリンゲン州首相官邸/州庁舎として活用されています。この官邸はルネッサンス・バロック様式の建物で、1808年、ナポレオンとゲーテが会見した場所として有名です。

ゲーテの作品を愛読していたナポレオンはゲーテにフランスで最高位の勲章を与えたとか。一般公開はしていませんが、特別ツワーガイドで見学することができます。

この州庁舎の近くに16世紀の名門貴族ダッヘレーデン家邸宅があり、 ゲーテを初めシラーやフンボルト兄弟など著名人がここのサロンに集ったそうです。 

ナポレオンといえば、彼がが篭城したベータースベルク城も見逃せません。この要塞は、欧州で最もよく保存された要塞のひとつだそうです。1815年のウィーン会議で要塞とエアフルトはプロセインに属することになり、1871年のドイツ帝国成立まで防備設備として使用されていました。

カイザーザール(皇帝の広間)

カイザーザール内部見学は事前予約を!(c)norikospitznagel
カイザーザール内部見学は事前予約を!(c)norikospitznagel

カイザーザールは、1715年に大学の舞踏会ホールとして造られたそうです。現在は会議やイベント会場になっています。カイザーザールは1808年にナポレオンも出席した王候会議が開催された場所としても有名。クララ・シューマン、リスト、パガニーニもここで演奏したそうです。観光局へ事前予約をすれば、特別ガイドツワーで館内の見学ができます。

ゲーテも堪能したソーセージ

地元で食するテューリンガーソーセージは格別!(c)bratwurstmuseum
地元で食するテューリンガーソーセージは格別!(c)bratwurstmuseum

テューリンゲン産のローストブラートヴルスト(テューリンガーソーセージ)は、600年前に生まれたといいます。ゲーテも堪能したというこのソーセージは、炭火焼きにしなければならない、重さが1本約150グラムという決まりがありますが、ソーセージに使う香料やつくり方は各生産者の秘密とか。

このソーセージには、もちろんテューリンゲン産のマスタードをつけて食べるのが決まりだそうです。エアフルトを訪問したら、テューリンゲン産ソーセージを是非食べて見たいものです。

取材協力・ドイツ観光局 

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典共著(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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