新型コロナ後遺症について現時点で分かっていること オミクロンはデルタよりも後遺症が起こりにくい
新型コロナに感染した人の中には、感染してから1ヶ月以上経っても何らかの症状が続くことがあり後遺症と呼ばれています。
現時点で新型コロナ後遺症について分かっていることについてまとめました。
新型コロナ後遺症とは?
新型コロナに感染した人の中には、数週〜数ヶ月間に渡って様々な症状が続く方がいます。
海外では「LONG COVID」「Post-acute COVID-19 syndrome」など様々な呼び方がありますが、厚生労働省は「罹患後症状」と呼称し診療の手引きを作成しており、筆者も編集委員を務めています。
日本国内では「後遺症」と呼ばれることが多いため、ここでは新型コロナ後遺症という表現を使います。
感染症による後遺症という病態は、新型コロナだけでなく、これまでもデング熱、エボラ出血熱、SFTSなど様々な感染症で知られていました。
しかし、新型コロナのように感染者が非常に多い感染症で、決して少なくない頻度で後遺症が起こることはこれまでの感染症の歴史にはなかったことから、社会的な問題となっています。
新型コロナ後遺症でよくみられる症状は?
新型コロナ後遺症としてみられる症状には、
呼吸器症状:咳、痰、息苦しさ、胸の痛み
全身症状:倦怠感、関節痛、筋肉痛、しびれ
精神・神経症状:記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ
消化器症状:下痢、腹痛
脱毛
動悸
味覚障害・嗅覚障害
などがあります。
新型コロナ後遺症の頻度は?
後遺症の頻度の報告は様々ですが、アメリカから新型コロナに感染した人と感染していない人とで、後遺症に関連する症状の頻度を比較した研究があります。
この研究では、新型コロナに感染した人では感染した30日〜1年後までの間に後遺症に関連する症状がみられた人が38.2%であった一方、新型コロナに感染していない人では16%であったとのことです。
つまり、16%の人は新型コロナの感染には関係なく倦怠感や筋肉痛などの症状がみられるものの、38.2%から16%を引いた22.2%の人は新型コロナによる後遺症の症状と考えることができます。
約5人に1人が、感染から1ヶ月以上経過してからも新型コロナによるなんらかの後遺症の症状に悩んでいるということになります。
日本で新型コロナに感染した700人以上を対象にした調査では、最も頻度が高かったのは倦怠感(だるさ)で、診断されて3ヶ月後も21%、1年後も13%の人で倦怠感が残っていたとのことです。
他に頻度が高かった症状は、呼吸困難、筋力低下、集中力低下、脱毛、睡眠障害、嗅覚障害、咳、頭痛、味覚障害、記憶障害、関節痛などでした。
オミクロン株ではデルタ株と比べて後遺症が起こりにくい
感染力の極めて高いオミクロン株では、世界中で過去にないほどの感染者が報告されましたが、オミクロン株ではどれくらいの頻度で後遺症が起こるのかに注目が集まっていました。
イギリスの携帯アプリを用いた研究によると、デルタ株が流行していた時期に新型コロナに感染した人が後遺症を起こす割合(10.8%)と比較して、オミクロン株が流行していた時期に新型コロナに感染した人が後遺症を起こす割合(4.5%)は半分以下であったとのことです。
しかし、オミクロン株では後遺症が起こる割合が低くなったとしても、例えば大阪府ではデルタ株の流行期と比較してオミクロン株の流行期に感染した人は7倍に増えており、後遺症に悩む人の数そのものはデルタ株の流行期よりも増える可能性があります。
大阪府での後遺症の相談件数は、2022年3月までの時点で第5波と同等にまで増加しており、4月以降まで含めると第5波の相談件数を超える可能性が高そうです。
新型コロナ後遺症にならないためには
新型コロナにはワクチンや治療薬が使用できるようになっており、感染を防いだり重症化を防ぐことができるようになってきました。
一方で後遺症については、なぜ起こるのか、どうすれば防げるのか、どうすれば症状が良くなるのか、といったことがまだ分かっていません。
現在のところ、新型コロナ後遺症を防ぐためには、新型コロナに感染しないこと、感染した場合も重症化しないことが重要になります。
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策を心がけましょう。
また、新型コロナワクチンを接種することで感染した場合も後遺症が起こりにくくなることが分かっており、これはオミクロン株になっても変わりありません。
後遺症を防ぐためにも新型コロナワクチンの接種をご検討ください。