長考で読みふける藤井聡太二冠(18)反撃に出る羽生善治九段(49)王将戦リーグ、難解な中盤の攻防続く
9月22日。東京・将棋会館において第70期挑戦者決定リーグ▲藤井聡太二冠(18)-△羽生善治九段(49)戦がおこなわれています。
昼食休憩が終わって12時40分、対局再開。34手目、羽生九段は玉を二段目に上がって形を整えます。
形勢ほぼ互角の中盤戦。藤井二冠は長考に沈みます。中盤で惜しみなく時間を使うのが藤井二冠のいつものスタイル。とはいえ、それでしばしばピンチに陥ることもあります。
本局35手目。藤井二冠は1時間7分考えて、飛車キリマンジャロで得た角を自陣に据えます。藤井陣四段目には角が2枚並びました。
初期位置の角筋とは違う筋に打つ角を「筋違い角」といいます。長考の末に放たれたその筋違い角がはたらくかどうか。
羽生九段はじっと歩を突いて、角を圧迫していきます。
そしてまた藤井二冠は時間を使って考える。そして39手目、40分ほど使って端9筋から攻めていきました。この時に歩の数が足りているのも「横歩取り」で歩を得した効果です。
羽生九段はしばらく受け続けたあと、50手目、藤井陣の弱点である右辺の桂頭をねらって反撃に出ます。
この時点で持ち時間4時間のうち、残り時間は藤井39分、羽生1時間50分。形勢はほぼ互角で推移しているものの、時間は常に藤井二冠が多く消費しています。
マスクをはずしている藤井二冠。口元にハンカチを当て、ときおり苦しそうにも見える表情を見せます。対してグレーのマスクをつけている羽生九段。その表情は変わらないようです。
竜王戦挑戦権を獲得して、50歳でのタイトル戦登場が確定している羽生九段。過去には土居市太郎名誉名人、升田幸三実力制第4代名人、大山康晴15世名人、二上達也九段(羽生九段の師匠)、米長邦雄永世棋聖が50代でタイトル戦に登場しています。
タイトル戦制覇の最年長記録は大山15世名人の59歳。1982年、中原誠名人(34歳)の挑戦を退けて、王将位通算20期という大記録を達成しています。
羽生九段はこれまで王将位を12期獲得。数々の偉大な記録を持つ羽生九段ですが、大山15世名人の王将位20期にはまだ到達していません。
また大山15世名人は63歳での名人挑戦、66歳での棋王挑戦という、信じられないような記録も残しています。
羽生九段はこの先、どこまでこれらの記録に迫ることができるのでしょうか。
藤井二冠は10分考えて51手目、桂で端9筋の香を取ります。残りは29分。
羽生九段が54手目を考慮中に「夕焼小焼」のメロディーが流れてきます。これは東京・将棋会館のある町、千駄ヶ谷で17時に防災無線から流れてくるのものです。多くの人にとってなじみ深いこの童謡は、作詞者の中村雨紅によって東京都八王子市恩方の情景が描かれたもの。そこは羽生九段が育ったところでもあります。