日銀は債券市場の機能を犠牲にしてまで異常な金融緩和策を継続していたことが、あらためて調査で示された
日銀は1日、「債券市場サーベイ・特別調査」として過去25年間の債券市場の機能への評価を問うた調査の結果を公表した。
「債券市場サーベイ・特別調査」
https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2311b.pdf
局面を下記に分けて、70社を対象として、債券市場の機能度の評価を行った
局面Ⅰ:1990年代後半~2013年4月(量的・質的金融緩和<QQE>導入前)
局面Ⅱ:2013年4月~2016年1月(QQE導入後)
局面Ⅲ:2016年1月~2016年9月(マイナス金利導入後)
局面Ⅳ:2016年9月~2021年12月(イールドカーブ・コントロール導入後)
局面Ⅴ:2022年~(足もと)
機能度判断DI(総合判断)の算出は下記のとおり。
(「高い」と回答した先の割合+0.5×「やや高い」と回答した先の割合)-(「低い」と回答した先の割合+0.5×「やや低い」と回答した先の割合)
ただし、「評価できない」と回答した先は除く。
これによる機能度判断DI(総合判断)に関して、局面Ⅰはプラス62、局面Ⅱはプラス5、局面Ⅲはマイナス48、局面Ⅳはマイナス71、局面Ⅴはマイナス60となっていた。
いわゆる異次元緩和と呼ばれた2013年4月の量的質的緩和策によって、日銀が大量の国債買入というかたちで債券市場に関与してきたことにより、債券市場の機能は低下した。
その後、2016年のマイナス金利の導入によって機能度はマイナスとなり、イールドカーブ・コントロール導入後はそのマイナス幅を拡大させた。
局面Ⅴについてはもう少し区分すべきであったと思う。2022年だけ抽出すべきでなかったろうか。
「毎営業日連続無制限指し値オペ」で購入対象となっている10年債カレントの3銘柄の369回、368回、367回、そして債券先物3月限のチーペスト(再割安銘柄)となっていた10年債の358回について、日銀保有が100%超えとなっていたためである。
日銀はこの4銘柄については流動性をなくし、完全に機能停止に追い込んでいたとの事実を見逃してはいけないと思う。
日銀は2022年12月に長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大、2023年7月には上限を1%の目途とすることで、実質的なイールドカーブ・コントロールを形骸化させていた。これによって債券市場の機能度はやや回復を見せた結果、局面Ⅴで機能度のマイナス幅が少し改善したことはたしかである。
それでもまだマイナス60という数値を見る限り、日銀は債券市場の機能を犠牲にして、2%という数値上の物価目標は達成しているのに、無理矢理に金融緩和を継続しているということになろう。
ここにきて日銀が国債買入額を減少させていたのも、この調査結果を意識したものであった可能性もある。