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前年に続き女性パート・アルバイトが大幅減少…非正規社員の現状をさぐる(2022年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
コンビニのパートも非正規社員としてのもの。その実情は(写真:アフロ)

労働市場に関する状況の変化において、注目を集めている事象の一つが非正規社員(職員・従業員)問題。先日総務省統計局から発表された労働力調査の2021年分の結果を基に、現状を確認していく。

最初に取り上げるのは、雇用形態別で区分した、非正規社員に関する直近と近年の人数推移。直近分となる2021年においては、2020年春先から流行が続いている新型コロナウイルスの影響で経済活動が大きな規制を受け、人員調整を受けやすい立場にある非正規職員・従業員が少なからず解雇され、職を失う結果となった。

結果としてパート・アルバイトと契約社員・嘱託は前年比で減少することとなった。一方で派遣社員はわずかだが増加している。派遣社員は雇用する側にとって労働力の調整がしやすいからだろうか。

↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別・男女別・年齢階層別、万人)(2021年)
↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別・男女別・年齢階層別、万人)(2021年)

↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別、万人)
↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別、万人)

↑ 職員・従業員数(前年比、雇用形態別、万人)
↑ 職員・従業員数(前年比、雇用形態別、万人)

特にパート・アルバイトは前年比でマイナス18万人と大幅な減少を示している(前年におけるマイナス46万人と比べれば少ないが)。この大幅な減少の原因は、詳しくは後述するが、新型コロナウイルス流行の影響で営業時間の短縮や休店、閉店に追い込まれた飲食店をはじめとする小売店などで就業していたと思われる若年層から中年層までの女性の解雇によるものである。

「派遣叩き」の影響が薄れた2011年には派遣社員の前年比がプラスマイナスゼロとなり(それまでは「派遣叩き」が世間を騒がせた2009年以降大きなマイナスを示していた)、この期間には同時にパート・アルバイトや契約社員・嘱託が増えているところから、単に労働力が過剰で非正規社員が減らされたのではなく、「派遣社員がバッシングで雇用し難くなったのなら、同じような作業はアルバイトや契約社員に任せよう」との意図を企業が実践していたことが分かる。もっとも2012年にはさらに数は減るものの、その年が2009年以降の動きでは底となる。

2013年では労働力そのものの不足に加え、景況感の回復に伴い労働市場の活性化が生じ、さらに団塊世代の定年退職を受けて高齢層の非正規雇用希望者としての供給が大幅増加。その上、それら高齢層の離職の穴を埋めるための非正規雇用としての求人も増え、いずれの様態でも非正規社員は大きく増加した。ただし雇用者全体数は微増しているが、正規社員は減少し、その分非正規社員は増加していることから、労働の様式そのものの変化(非正規化へのシフト化)が進んでいる現状が改めて見て取れる(正規社員の高齢者が定年退職して非正規として再就職するのだから当然の話なのだが)。

2015年以降は正規社員でも前年比で増加の動きを示しており、同時に非正規社員も増加を継続している。労働市場の回復ぶりや内部構造の変化に加え、企業側の求人内容の変化が生じている実態がつかみ取れる。派遣社員が増えているのは、正規社員・従業員の求人をしても人手を集められない企業が、派遣社員で代用するという需要があるのも一因ではある(景気ウォッチャーのコメントでこの方式を用いている企業の弁が少なからず見受けられる)。

2021年時点では職員・従業員全体の63.3%が正規社員、残りがパートや派遣社員、契約社員などから成る非正規社員との計算になる。もっとも上記グラフにある通り、非正規社員は兼業主婦によるパート・アルバイトが多分に含まれていることに注意しなければならない。各算出値はあくまでも老若男女すべてを合わせた結果である。

↑ 職員・従業員全体に占める割合(雇用形態別)
↑ 職員・従業員全体に占める割合(雇用形態別)

このグラフを見ると、単純に非正規社員の割合が増加の一途をたどっているように見える(2020年以降で減る動きが生じているのは、新型コロナウイルス流行による非正規社員の大量解雇が生じたのが主要因)。しかし、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正規社員数は横ばいか微減」「非正規社員数は増加」との構図、言い換えれば企業は「景気拡大期は非正規社員の増加で、業務拡大に対応していった」のが大きな流れであることが分かる。ちなみに「世間が派遣社員制度を叩き正規雇用を求める動き」と、「不景気で雇用調整が行われ、正規社員が減る時期」「不景気に加えて派遣叩きの世論で派遣市場が縮小する時期」、さらに「パートやアルバイトの増加時期」はほぼ一致する。

2021年における新型コロナウイルス流行が非正規社員におよぼした影響の実情が分かるのが、次の男女別・年齢階層別における非正規社員の増減動向。

↑ 非正規職員・従業員数(前年比、男女別・年齢階層別、万人)(2021年)
↑ 非正規職員・従業員数(前年比、男女別・年齢階層別、万人)(2021年)

2021年においては男性の非正規社員は増加した属性はごくわずか。45~54歳のパート・アルバイトと派遣社員、65歳以上の派遣社員のみが増加している。女性では65歳以上が前属性で増加しており、55~64歳でも減少は無し。45~54歳でもパート・アルバイトが1万人減少したのみにとどまっており、45歳以上ではおおよそ恵まれた状態だったようだ。しかしそれ以下の年齢では特に25~44歳において、パート・アルバイトや契約社員・嘱託・その他が大きな減少を示している。飲食店や小売店で働いていた兼業主婦の多くが、新型コロナウイルス流行に伴う店舗の休業や業務縮小で解雇されたことが考えられる。飲食店などの休業によって、中年層の女性パート・アルバイトの雇用市場が大きく悪化した実情が見て取れる次第ではある。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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