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インドネシア政府、宗教的理由からFacebookに同性愛の絵文字の禁止を要請:LINEもスタンプ削除

佐藤仁学術研究員・著述家

インドネシア政府は2016年2月、Facebookと同社の傘下のメッセンジャーアプリWhatsAppに対して、宗教的な理由から同性愛を想起する絵文字やアイコンを削除するように要請した。ユーザーからの不満やクレームも多かったようだ。

この絵文字があったことを知らない日本人は多いかもしれない(Facebook)
この絵文字があったことを知らない日本人は多いかもしれない(Facebook)
同性愛を想起させるFacebookの絵文字(Facebook)
同性愛を想起させるFacebookの絵文字(Facebook)

インドネシア人のコミュニケーションツールのメインとなったFacebook

インドネシアではスマートフォンが急速に普及しており、Facebookの利用者も7,500万人以上である。FacebookのメッセンジャーやWhatsAppのメッセンジャーアプリも非常に多く利用されており、従来のショートメッセージ(SMS)に代わって、インドネシア人のコミュニケーションツールのメインになっている。

そのFacebookやWhatsAppに同性愛を想起する絵文字、アイコンがある。情報通信省のスポークスマンのIsmail Cawidu氏は「インドネシアで多くの人が利用しているソーシャルメディアは、インドネシアの規範と文化を尊重してほしい」と述べて、Facebookと同社の傘下のメッセンジャーアプリWhatsAppに対して、同性愛を想起する絵文字やアイコンを削除するように要請した。

LINEは同性愛を想起するスタンプ提供で謝罪

「Love is Love」(LINEストアより)
「Love is Love」(LINEストアより)
「ENJOY GAY LIFE」(LINEストアより)
「ENJOY GAY LIFE」(LINEストアより)

インドネシアでFacebookと並んでLINEも人気があり、多くのインドネシア人に利用されている。LINEもインドネシアを重要な海外の市場として位置付けている。

そのLINEで提供されているスタンプ(インドネシアではスティッカーと呼ばれている)で同性愛を想起させる「Love is Love」と「ENJOY GAY LIFE」がインドネシアの利用者からのクレームによって削除された。

LINEインドネシアは同社のFacebookページで、インドネシア人の利用者に不快な思いをさせたことを謝罪した。たしかにLINEのスタンプ作成の審査ガイドラインには「モラル」の箇所で「宗教、文化、民族性、国民性を攻撃し、または特に不快感を与えるもの」と出ている。日本や欧米では問題なくとも、ムスリムの人にとってはタブーであり不快感を与えるものなのだろう。

インドネシアでは同性愛は今でもタブー

インドネシアはムスリムの国であり、いまだに同性愛はタブーである。日本や欧米のように同性愛に対する理解はない。違法ではないので罰せられることはないが、それでも特に地方では差別と迫害の対象にもされている。ジャカルタでも同性愛者同士が歩いているところは、昼間はあまり見かけない。人目につかない夜に、歩いている。インドネシアにはキリスト教徒も多く住んでいるが、彼らも同性愛は受け入れ難い。

2015年6月にアメリカの全州で同性愛が合法化されたことを祝して、Facebookではプロフィール写真をLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の活動シンボルであるレインボーカラーに変換する機能をリリースしたことがあるが、インドネシア人でこの機能を利用して、自分のプロフィール写真をレインボーにした人はほとんどいない。そのようなことをして周囲との関係を悪くしたくないし、実際に同性愛を歓迎をしていない人が今でも多い。

そして同性愛のタブーはインドネシアの長年に渡る国民の意識と文化や風習であり、そう簡単に克服できるものではない。インドネシアだけでなく、他のムスリムの国でも同性愛がタブーや違法な国は多い。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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