29歳。旅行中もスマホばかりの彼女から「他に好きな人がいる」と言われました~スナック大宮問答集70~
「スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催150回を超えた。のべ3000人ほどと飲み交わしてきたことになる。
筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。
その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めてオンラインで対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。
***ヨウイチロウさん(仮名。独身、29歳)との対話***
小説家になること夢。自分でWEBサイトも運営して文章を書いています
――IT企業でマーケティングのお仕事をしているそうですね。どんな業務内容なのでしょうか。
見込み顧客向けのイベント企画やネット記事制作をしています。申し込んだりダウンロードしたりするときに顧客情報を入力してもらうのが狙いです。
私は小説家になることが子どもの頃からの夢で、自分でWEBサイトも運営して文章を書いていますし、スポーツで知り合った人たちとの飲み会を企画したりもしています。社会人のコミュニティになるようなバーを作れたら面白いな、とも思っているところです。飲食店で働いた経験はありませんけど……。
――趣味嗜好も行動も僕と似ていますね(笑)。スナック大宮に参加するためには僕の無料メルマガに登録していただく必要があり、その登録情報をもとにこうしてインタビュー取材の協力依頼をすることもあります。
ライターとして面白い働き方ですね。私はあと何年か会社員として働いて資産を作ることができたら、地方に移住して生活コストを下げながら執筆に集中するのもありだなと思っています。今回のスナック大宮ではチーママ(※会場の選定や当日の会計を手伝ってくれるボランティア)の女性が長野県で農業に携わっている方でしたね。車が必須だったりプロパンガス代が高かったりと田舎は意外なコストがかかると聞いて興味深かったです。でも、農業などのやりたいことがあるので退屈はしないとも聞きました。
ソーシャルアパートメント暮らし。住民の入れ替わりがあるので精神的に疲れます。
――僕も地方在住なので同感ですね。都会と違って受け身で楽しめる商業施設は少ないのですが、アウトドアや料理など主体的に何かやりたい人には田舎暮らしは向いていると思います。
スナック大宮は二度目の参加でしたが、前回と同じ参加者は数人しかいませんでした。いろんな人と知り合えるのも魅力ですね。
――遠方からわざわざ来てくれる人もいますが、多くの参加者は「自宅や職場から近いから」が最大の参加理由です(笑)。特に横浜には地元好きが多く、「他の町には飲みに行かない」「馴染みの店で開催と聞いたから参加した」と言い切る人もいます。全国各地の個性的な飲食店で開催することで、そういったマイルドヤンキー層にも出会えるのがスナック大宮です。
僕は社会人コミュニティに興味があるので、いわゆるソーシャルアパートメントで暮らしています。結婚する以外の方法で家族のようなコミュニティを作れるかどうかを探りたいのです。でも、賃貸の集合住宅は人の入れ替わりが多いので、そのたびに別れたりつながったりするのは精神的に疲れると思っています。
自分の機嫌は自分でとれて、なおかつ何かに一生懸命な同世代女性が好きです
――ヨウイチロウさんは結婚には興味がないのでしょうか。
いえ。大学時代の友人がそろそろ結婚し始めているので、私にも家庭というコミュニティが必要かもと思っているところです。1年前、マッチングアプリで知り合った4歳年下の女性と3カ月間ほど付き合いました。たまたま同じ大学出身だと知って意気投合したのですが、1泊旅行をしたときにスマホをよくいじっているなと少し違和感があり、その後にLINEで「他に好きな人がいる」と言われて……。
――それは残念でしたね。ヨウイチロウさんはよく見るとカッコいいけれど、磨きが足りないのかもしれません。
どう磨けばいいのでしょうか。
――すみません、僕にも具体的にはわかりません。女友だちにハッキリ言ってもらうといいですよ。僕は若い頃にみんなで旅行したときに、女友だちから「レディファーストが身についていない」と指摘されました。意識的に実践するようにしたら、以前よりはモテるようになった気がします。ヨウイチロウさんはどんな女性が好きなのでしょうか。
自分の機嫌は自分でとれて、なおかつ何かに一生懸命な同世代、ですね。自分が好きな仕事で稼げている人はすごいなと思います。でも、バリキャリな女性はもっとハイキャリアな男性を選びがちだと思うので、私は相手にされないかもしれません。
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「バリキャリ女性は自分よりも上であることをパートナー男性に求める」問題について
以上がヨウイチロウさんとの対話だ。おとなしめで淡々とした印象を受けるけれど、好奇心があって自分がやりたいことも明確な29歳。年齢差を感じずに語り合えた。1点だけ言い残したのは「バリキャリ女性は自分よりもハイキャリアであることをパートナー男性に求める」問題について。
確かに、女性がマッチングアプリや結婚相談所などで条件検索をする場合、自分の経歴や年収と同等かそれ以上の男性を探すことが多い。ただし、それはキャリア女性に限らない傾向だ。高い学歴や経済力があり、本当の意味での自信がある女性の場合は、「自分以上」は要求しないケースが少なくない。それを求めると、出会いの幅を狭めてしまうことがわかっているからだ。
では、なぜ一定以上の条件を設けるのか。それは「親しくなれば楽しく対等な会話ができる」男性と出会える確率を高めるようとしているからだ。同じく会社員同士などで勤務先の待遇差があり過ぎるときなどに「パートナーとしての頼もしさ」と感じられる男性ならば問題ない。しかし、卑屈になったり対抗心を燃やしすぎたりすると興ざめだ。また、仕事や世の中について同じぐらいの目線と知力で語り合えることを共働きのパートナーに求める人は男女ともに多い。
自ら飲み会も企画できるヨウイチロウさんの場合は、同世代の女性とのコミュニケーションの中で「手ごたえがあって面白い」と感じることもあるはずだ。何かのテーマに同意見である必要はなく、むしろ反論の中に「おぬしやるな」と相手の実力を悟ったりする。たいていの場合は相手も同じように思っているはずなので、デートに誘ったら応じてもらいやすいと思う。スナック大宮はカップル参加も歓迎なので、今度はぜひ連れて来て欲しい。