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ブリーダーズCに挑戦するオーサムリザルトと、自身の今後について武豊が語る

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
ブリーダーズゴールドCを制したオーサムリザルトと武豊騎手

デビュー7連勝を飾り米国へ

 8月27日、門別競馬場で行われたブリーダーズゴールドC(JpnⅢ)をオーサムリザルト(牝4歳、栗東・池江泰寿厩舎)が快勝した。
 手綱を取ったのはご存じレジェンド・武豊。同日午後4時過ぎに、札幌競馬場の調整ルームから自ら運転するクルマで門別へ移動。道中は轍に溜まった水たまりにハンドルを取られそうになるほどの大雨に見舞われた。

武豊騎手
武豊騎手

 「到着した時には大分、小降りになっていました。とはいえ道悪は避けられませんでした。ここまで悪い馬場は初めてなので、どうか分からない部分もあるけど、まぁ、大丈夫だとは思います」
 それよりも心配は「精神面での難しさ」だと言い、続けた。
 「イレ込む面があるし、返し馬も進んで行こうとしなかったり、逆に掛かって行こうとしたり、掴み切れない面があります。そのあたりが今日はどうかな?という気持ちはあります」
 ところがパドックで跨った感触は悪くなかった。

「今回はイレ込みもマシだった」と武豊騎手が言うブリーダーズゴールドCのパドックでのオーサムリザルト
「今回はイレ込みもマシだった」と武豊騎手が言うブリーダーズゴールドCのパドックでのオーサムリザルト

 「乗った瞬間からパワーアップしている感じを受けました。レース間は開いていたけど、厩舎サイドから『良い状態に仕上がっています』とは聞いていたし、イレ込みもいつもよりはマシだったので、これなら悪くないと思いました」
 返し馬は「今日は止まろうとする感じ」だったそうだが、馬場に関しては問題なく走れているのが分かった。
 こうしてスタートを切ると、向こう正面では早くも進撃を開始した。
 「道中は自分から動こうとしなかったので、少し促したら反応して早めに先頭に立ってしまいました」
 最後の直線では「モノ見をした」が、セーフティーリードを保ち、結局2着のデリカダに5馬身の差をつけ、2分4秒0の時計で快勝。交流重賞連勝をマークすると共に、デビュー以来の連勝を7に伸ばした。

ブリーダーズゴールドCの口取り写真撮影時
ブリーダーズゴールドCの口取り写真撮影時

 3年前の21年、ここを勝利した後、アメリカへ渡りブリーダーズCディスタフ(GⅠ)をも制したマルシュロレーヌ。彼女同様、オーサムリザルトも渡米するという話なので、イレ込みに関しては日本よりパドックの周回時間が短い海外の方が良いのでは?と問うと、天才騎手は首肯して答えた。
 「そうですね。それにスタートが今ひとつの馬なのでゲートボーイを付けられるのも良いし、よりスムーズに走る左回りになるのも、良いでしょう。アメリカ遠征が今から楽しみです」

ブリーダーズゴールドCのレース前に返し馬をするオーサムリザルト
ブリーダーズゴールドCのレース前に返し馬をするオーサムリザルト

その前にある楽しみ

 ただ、楽しみはその前にもあると続けた。
 「凱旋門賞もワクワクしています」
 凱旋門賞(GⅠ)で騎乗を予定しているのはアイルランド、ジョセフ・オブライエン厩舎のアルリファー。前走ではベルリン大賞(GⅠ)を圧勝したが、何よりもこの馬の評価を上げているのは前々走のエクリプスS(GⅠ)だ。ゴール前ではシティオブトロイを相手に差を詰めて1馬身差の2着。勝利したこのダービー馬と、3着のゴーストライターは続くインターナショナルS(GⅠ)でも1、3着した事で、アルリファーの2着が改めて高評価を受ける流れになったのだ。

インターナショナルSの1、3着馬はエクリプスSと同じ。必然的に2着のアルリファーの評価が上がっている
インターナショナルSの1、3着馬はエクリプスSと同じ。必然的に2着のアルリファーの評価が上がっている

 もっとも、レジェンドの視線の先は海の向こうばかりではない。遠くばかりを眺めていたら足元の石に躓きかねないとばかり、今週末は札幌での騎乗に全力で挑む。最終週に、開催リーディングを懸けて騎乗するのだ。
 「良い形で締めくくりたいですね」
 ワールドオールスタージョッキーズでの勝利を含め、現在札幌では16勝をマークし、2位の横山武史に6勝の差をつけている。55歳での偉業達成へ向けたラストスパートに注目しよう。

ワールドオールスタージョッキーズでは準優勝。札幌リーディングへひた走る武豊騎手
ワールドオールスタージョッキーズでは準優勝。札幌リーディングへひた走る武豊騎手

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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