運動部活動の負傷事故 増加傾向
■「ブラック部活」
ブラック企業、ブラックバイトに続いて、「ブラック部活」なる言葉が流行り始めている。『AERA』の「子どもに理不尽強いる『ブラック部活』の実情」と題する記事がきっかけだ。発熱しても休めない、夏の合宿中は毎食どんぶり飯2杯がノルマ、部員の遅刻で全員が丸刈りなど、心身ともに過酷な状況がとりあげられている。
さて、部活動そのものは健全な教育活動の一環である。けっしてブラックではない。ただ、そのあり方次第ではブラックにもなりうる。この点について、学校管理下の事故統計から検討してみたい。
■学校管理下の負傷事故のうち約半数は運動部活動中
そもそも部活動中には、負傷事故が起きやすい。日本スポーツ振興センターが刊行している資料をもとに計算すると、2013年度において、学校管理下のあらゆる負傷事故(スポーツ時に限られない)のうち、中学校では48.7%が、高校では56.8%が運動部活動中に発生している。
全生徒が運動部に属しているわけではないことを考え合わせると、全負傷事例のうち5割が運動部活動時に発生しているというのは、それほどに事故が起きやすいということである。
■高校では事故が増加傾向
身体を活発に動かす以上は、ある程度のケガは起きてしまう。その意味で、運動部活動の事故ゼロを目指すというのは、無意味である。だが、近年の動きとして気がかりなのは、高校において運動部活動の負傷事故件数が増加傾向にあるということである。
図に示したとおり、高校では、部活動中の負傷事故は、2001年度比で約1.3倍にまで増大してきた【注1】。他方で注目すべきは、同じように身体に負荷をかけるはずの体育の授業では、負傷事故は増えていない。(なお、中学校でもわずかながら同様の傾向が読み取れるが、高校ほどに明確な傾向は見出しにくい。)
高校でなぜこのような動きが生じているのか。この点は、さらに詳細な検討が必要である。教育界がその作業を放置し、負傷事故件数の増大に関心を示さないのだとすれば、それこそがまさに「ブラック」な体質であると言える。
【注1】
全国高等学校体育連盟や日本高等学校野球連盟による部員数調査を用いると、この間、高校生全体に占める運動部所属生徒の割合は若干増加していると試算される。ただしその増加幅は、2001年度比で1.1倍程度であるため、図示した負傷事故件数はそれ以上に増えている(2001年度比で約1.3倍)とみることができる。
なお、グラフの横軸には、いくつか欠けている年度がある。これは、日本スポーツ振興センターが負傷事故の件数を不定期に発表(2008年度以降は毎年発表)してきたためである。