「強い疑い」950万人、「可能性否定できず」1100万人…日本の糖尿病の現状
男性27%女性22%が「強い疑い」「可能性否定できず」な糖尿病
生活習慣病において高血圧や肥満と並び、多くの人が発症及びその懸念状態にあるのが糖尿病。糖尿病とは体内の各組織を動かすエネルギー源となるブドウ糖が、細胞内に上手く運ばれず、血液内に留まってしまう症状で、ホルモンの一種であるインスリンが不足したり、うまく細胞に作用しないことで起きる。
糖尿病には大きく4つ「1型」「2型」「遺伝子異常や他の病気が引き金となるもの」「妊娠糖尿病」に分けられる。多くは「1型」「2型」に該当するが、前者は子供のうちに始まることが多く、かつては小児糖尿病などと呼ばれていた。後者は食事や運動などの食生活がもとで、肝臓や筋肉へのインスリンの働きが悪くなったり、インスリンの出る量が少なくなって発症する。日本では95%以上がこの「2型」タイプで、糖尿病が「生活習慣病」の代表的な病症の一つとされるのも、これが起因である。
厚生労働省では毎年「国民健康・栄養調査」を実施し、その結果を発表しているが、5年間隔で糖尿病に関する病状状況についてのリサーチも実施している。昨年12月に発表された2012年分がその最新データに該当し、今回はこのデータをもとに状況を確認していく。
調査対象母集団のうち血液検査を行った者(20歳以上)を対象とし、その検査から取得した各種パラメータや調査票の関連項目をもとに、「糖尿病が強く疑われる者(強度の糖尿病リスク者)」「糖尿病の可能性を否定できない者(弱度のリスク者)」「それ以外」に分類。前者2つについて、世代別に集計したのが次のグラフ。例えば男性70歳以上は「強く疑われる」が23.2%とあるので、男性70歳以上の人のうち、23.2%は糖尿病の可能性が多分にある。
男女別では男性の方が嫌疑率が高い。また世代別では歳を経るほど率が上昇していく。70歳以上では男性で40.9%、女性で37.5%が「強い疑い」あるいは「可能性の否定が出来ない」状態。「強く疑われる」に限定しても、男性では50代で10%を超え、60代で20%に届く。女性は60代で10%超なのと比べると、男性の高さには驚かされる(この理由には女性ホルモンによる予防効果、男性の太りやすい体質やストレスなどが原因とされている)。
「強度の糖尿病リスク者」だけで950万人、漸次増加中
1992年以降の各調査結果に、それぞれの年の人口推計値を掛け合わせ、推定嫌疑人数を算出したのが次のグラフ。
直近の2012年にいたるまで、「強く疑われる者」は増加する一方、「可能性を否定できない者」は2012年では減少を示している。結果、「糖尿病が強く疑われる者」「糖尿病の可能性を否定できない者」双方を合わせた数は減っているが、嫌疑者全体に占める「強く疑われる者」の比率は増加を示している。
この「糖尿病が強く疑われる者」に該当する人のうち、現在何らかの形で糖尿病の治療を受けている人は65.2%に達している。この値は調査年に連れて増加している、つまり医療機関に足を運ぶ人が増えている。それだけ糖尿病に対する問題意識が高まっていると評価できるが、同時に29.0%はほとんど治療を受けておらず、高いリスクのまま日々を過ごしていることになる(5.8%は以前治療を受けたことがあるが、現在は受けていない)。
糖尿病は放置しておくと多種多様な合併症を引き起こす。特に「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」から成る3大合併病は高い発症率とリスクで知られている。人口動態統計(確定数)の最新データによれば、2012年の1年だけで1万4486人が糖尿病を死因として亡くなっている(人口10万人比で11.5人)。
厚生労働省でも「糖尿病ホームページ」のように専用ページを公開し、分かりやすい形で各種情報を提供している。自分自身はもちろん、身近な人の発症を見聞きすることも多分にある。一通りの知識と予防策を学んでおくことをお勧めしたい。
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