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朝鮮半島有事に対する中国の姿勢――中国政府高官を単独取材

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

北朝鮮の発砲に対し韓国が迎撃した事態に関して中国は中立を保ち続ける。いざとなったら中国が守ってくれるだろうというパククネ大統領の期待が叶うことはない。中国の姿勢に関して某中国政府高官を単独取材した。

以下は、某中国政府高官の「個人的」回答の概要である。必ずしも中国政府全体を代表するものではない。

◆中朝間には「中朝友好条約」がある

どんなに経済的に中韓が結びつき、パククネ大統領が習近平国家主席と親密にしても、中国と北朝鮮の間には1961年に締結された「中朝友好合作互助条約」(略称:中朝友好条約)がある。この条約では万一戦争状態になったときに、互いに軍事的に助け合うことになっており、戦争状態にある敵対する相手国の軍事支援はしないことになっている。有効期限は20年で、2回延長されており、現在の中朝友好条約は2021年まで有効だ。

したがって朝鮮半島有事で韓国が危ない状態に置かれても、中国が韓国側に立つことは絶対にない。

かといって北朝鮮側に立って武力介入をすることも現状では(ほぼ絶対に)ない。

なぜなら、韓国の経済は大きく中国に依存しているので、中国もその意味での韓国との緊密関係を維持し、歓迎しているからだ。

また抗日戦争において、韓国も北朝鮮も被害者だったので、中国とともに日本に歴史認識を求めるという立場では一致している。

しかし今般、韓国が北朝鮮の砲撃を受けても中国が北を批難することは一切していないので、パククネ大統領としては不満だろう。かといって抗日戦争勝利70周年記念行事の軍事パレードに参加する勇気をパククネ大統領が持っているかというと、いざとなったらアメリカの顔色を見ている。

パククネ大統領はかつて、万一北朝鮮から砲撃されたときには、すぐ隣にいる中国が韓国を守ってくれるだろうという期待を中国(特に習近平国家主席)に抱いたにちがいない。しかし、中韓接近を嫌ったアメリカの牽制により自制し、あいまいな態度に変わっていった。

それがなかったとしても、中朝友好条約がある限り、中国が韓国側に立って北朝鮮をおおやけに批難することはないし、ましていわんや、武力的に応援することは絶対にないのである。

ただ、あの金正恩があまりに駄々っ子ぶりを全開にすれば、「北への経済的支援を制限するぞと、お灸をすえて」、北を抑制することはある。中朝友好条約には、たしかに「経済、文化、科学技術方面で互いに支援し合う」という項目がある。しかし北が国際常識を著しく逸脱する場合には、「調整」をする可能性はいくらでもある。それは中国にとっても不利になるからだ。ミサイルの矛先を中国に向けてくることだって、やらかすのだから。

◆ロシアとの関係

アメリカのオバマ大統領が自国における外交に関する非難をかわすために、必要以上にウクライナ問題に介入し、ロシアを孤立化させた。プーチン大統領と習近平国家主席は深い信頼関係にあるので、中国としては当然、孤立したロシアを支援しようと動いている。

ロシアはロシアで、孤立化から免れようと、あの北朝鮮でも、一定程度は歓迎する姿勢を見せている。

かといって、ロシアは韓国とも経済的には良好な関係を結んでいたいので、朝鮮半島有事の際に、北朝鮮側に付くなどということはしないだろう。

南北関係の緩和を図るべく調停に動くという範囲を越えないだろうことは、中国と同じだ。

中国から見れば、ロシアが一定程度友好関係を保っている北朝鮮に対して、韓国側に立って行動するということはないという、中露の関係もある。ロシアとの友好関係を重んじ、朝鮮半島の南北どちら側にも立たないう側面も否めない。

以上、どの方面から見ても、中国は朝鮮半島有事に対し、絶対に武力介入はしないだろうというのが、結論として見えてくる。

憐れ、韓国…、いやパククネ大統領……。

軸足がぶれていることは、中国もまた、お目通しだった。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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