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2021年3月度外食産業売上は前年同月比でマイナス2.9%

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 営業時間の短縮要請や酒類提供の時間制限で居酒屋業態は大打撃が続く。(写真:西村尚己/アフロ)

日本フードサービス協会は2021年4月26日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2021年3月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でマイナス2.9%を示した。新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言が首都圏4都県で2021年3月21日に解除されたものの、営業時間の短縮要請は継続されており客入りは今一つ。さらに酒類提供の時間制限が設けられたパブ・居酒屋業態のダメージは大きなものとなった。

全業態すべてを合わせた2021年3月度売上状況は、前年同月比で97.1%となり、2.9%の減少を記録した。これは前回月から続く形で13か月連続の減少。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日・土曜日いずれも1日ずつ少なく、売上にはマイナスの影響。気象環境では雨天日は東京は少なく大阪も少なく、平均気温は東京・大阪ともに高めのため、客足への影響判断はプラスと解釈できる。

他方、新型コロナウイルスの流行による外出自粛や多人数が集まる場所への忌避感は強い。首都圏4都県での緊急事態宣言の再発出は2021年3月21日に解除されたものの、営業時間の短縮要請は継続されており、客数の大幅減が続く状況となっている。また就業者の在宅勤務も続いており、就業者相手の業態では苦戦が続いている。

結果として客数は全体では前年同月比でマイナス5.7%を示した。一方で客単価はプラス3.0%となり、結果として売上はマイナス2.9%に。前回月の売上高マイナス22.3%より随分と改善されたように見えるが、比較対象の前年同月となる2020年3月はすでに新型コロナウイルスの流行により大幅に客数が減っており(前年同月比でマイナス16.6%)、それにより売上もマイナス17.3%と大きく減じていて、それとの比較のため、マイナス幅は最小限にとどまった次第。見方を変えれば、新型コロナウイルス流行直後の自粛時期よりもさらに売上が落ちてしまっていることになる。

業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から転じる形で4か月ぶりのプラス(プラス3.9%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、2014年夏からの相次ぐトラブルをきっかけとした多様な問題点の露呈による低迷から復活の動きを見せている。今回月では「テイクアウトなど巣ごもり需要が堅調」とあり、テイクアウトやデリバリーの選択肢を持つことへの奏功の影響が大きく、また他業態とは異なり緊急事態宣言すらもプラスに作用し、売上はプラス9.1%と大幅なプラスに。

なおマクドナルド単体の2021年3月における営業成績はプラス7.5%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はプラス0.8%だったが客単価がプラス6.6%と大きく伸びていることから、持ち帰り需要を上手くこなしたようだ(マクドナルドの月次報告書にも「安全で利便性の高い店舗でのアクション、ドライブスルー、デリバリー、デジタルの強化、バリュープログラムの継続やお客様との繋がりを強化するマーケティング活動 といったこれまで実施してきた取り組みにより、ベースセールスが着実に上昇しています」との表記がある)。

牛丼チェーン店を含む和風は、客数はマイナス7.1%、客単価はプラス4.8%となり、売上はマイナス2.6%。麺類は客数マイナス9.0%、客単価はプラス1.9%となり、売上はマイナス7.3%。和風は「持ち帰りとともに新メニュー展開が寄与したものの、店内飲食は影響を受け」とあり、新型コロナウイルスの感染拡大や営業時間短縮要請で勢いが打ち消されてしまったようだ。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス9.4%。「(回転寿司が)雛祭りや卒業などの、家庭の慶事需要を取り込みテイクアウト好調、また店内飲食需要に回復が見られ」とあり、洋風同様に巣ごもり需要の恩恵を受けたようだ。

ファミリーレストラン部門は客数ではマイナス12.4%、客単価はプラス3.0%、売上はマイナス9.7%。全体として「宣言解除後も営業時間の制限が続いた影響」とあり、特に営業時間短縮要請が打撃となったようだ。焼き肉は「夜間営業時間の短縮が続き」との言及があり(売上はマイナス9.7%)、営業時間の短縮要請が大きく響いたようだ。

ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はマイナス1.4%、客単価はプラス2.5%で売上はプラス1.1%を示した。「前年(同月)は、宴会需要が大きく減少したことに加え、立地する百貨店の休業などで売上は大きく減少」「(今回月は)営業時間短縮の中でも営業できたこと、宣言解除後に短縮時間が緩和されたことで集客が回復」との説明がある。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2021年3月度分)(日本フードサービス協会報告書より抜粋)
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2021年3月度分)(日本フードサービス協会報告書より抜粋)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2021年3月度)
↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2021年3月度)

現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が運用している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。疫病の影響である以上、仕方がないとはいえ、衝撃的な値には違いない。特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。さらに営業時間の短縮要請や夜の酒類提供時間の短縮がダメージをより大きなものとしている。

次回月の2021年4月分では、新型コロナウイルス流行状況は悪化しており、まん延防止など重点措置が2021年4月5日以降一部地域に(終了はいずれも同年5月11日までの予定)、緊急事態宣言が2021年4月25日から東京都・京都府・大阪府・兵庫県に(終了は同年5月11日までの予定)発出されるなど、外食産業には厳しい環境が続いた上での数字となる。感染者数も増加しており、心理的影響として外食店への利用が控えられる可能性もある。今回月同様に悪い値が出てしまうことだろう。

ただし今回月同様、前年同月の2020年4月ではすでに新型コロナウイルス流行による大きな影響(全体で売上は前年同月比マイナス39.6%)が生じており、それとの比較となるため、見た目の下げ幅はそれほど大きなものとはならない、さらにはプラスすら示すかもしれない。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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