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ヤマハ「MT-09」の2018モデルに「SP」登場 高性能サスペンション装備の上級スペックだ!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA MT-09 SP ABS

3気筒クロスプレーンコンセプトで登場

水冷3気筒エンジンをネイキッドとスーパーモタードの“異種混合”スタイルに搭載したスポーツネイキッド、ヤマハ「MT-09 ABS」の2018モデルが登場、3/20から発売される。そして今回、その上級モデルである「MT-09 SP ABS」がタイプ設定された。

2014年に国内デビューしたMT-09は1970年代半ばに存在した「GX750」以来のヤマハの3気筒マシンである。MTとは「マスター・オブ・トルク」を表す略語で、水冷直列3気筒845cm3エンジンの等間隔爆発による滑らかなトルク特性と高回転での伸びが特徴。

クランクシャフトの回転によって生まれる慣性トルクの変動が少なく、スロットル操作に対してリニアなトラクションが得られる「クロスプレーンコンセプト」がウリであり、その意味ではMotoGPマシンやYZF-R1に採用されているクロスプレーン型クランクシャフトとも共通する設計思想を持ったモデルと言っていい。

また、3気筒レイアウトはエンジン幅を狭められるため、物理的に軽量スリムでコンパクトな車体作りが可能となるメリットも併せ持っている。

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▲MT-09 ABS

運動性能を引き出すモタード的スタイル

そこで生きてくるのが、スーパーモタード的なスタイルだ。これはカタチだけでなく走りのエッセンスとして組み込まれたものだ。

たとえば、3気筒エンジンのスリムで軽量な車体を生かした足着き性の良さも長所。モタードマシンを思わせるフラットシートと幅広バーハンドルが形作るアップライトなライポジにより、まるでオフ車を扱うような感覚でライダーが自由に着座位置を変えながら、上体をフレキシブルに動かしつつ積極的にマシンをコントロールしていく乗り方もできる。

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▲MT-09 ABS

足まわりもユニークだ。長めのサスストロークによって路面追従性を高めることで、しなやかなで安心感のある乗り心地とともにツーリングでの快適性も実現。さらに豊富なストローク量を生かした前後の荷重移動による車体の姿勢変化を積極的に作っていくことで、コーナリングにおける旋回力も高めている。ちなみにサスペンションを動かす方向でマシンを仕上げていくのは現代のスポーツライディングのセオリーにもなっている。

以上は、ヤマハのMTコンセプトの解釈と自分が初代MT-09から現行モデルまで試乗してきた印象だ。

電子制御パッケージが自在な走りをサポート

その他の装備としては、クラッチレバーの軽い操作感とともに過大なエンジンブレーキによる車体姿勢の乱れを抑止するアシスト&スリッパー(A&S)クラッチや、クラッチ操作なしでシフトアップ操作が可能なクイック・シフト・システム(QSS)、モーター駆動によるスロットルバルブが最適な吸気量を制御することで“意のままの出力と操作感”を実現したYCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)、路面状況やライダーの好みに応じて介入度を「1(弱)」「2(強)」「OFF」から選択できるモード選択式TCS(トラクション・コントロール・システム)、3つの走行モード(「A」「STD」「B」)が選択できるD-MODE(走行モード切替システム)など、スポーティかつ快適な走りの楽しさをサポートする多彩な機能を搭載しているのも見逃せないポイントだ。

スーパースポーツ並みの「足」が与えられたSP仕様

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▲MT-09 SP ABS

さて、今回あらためて注目したいのが「SP」仕様だ。スタンダードモデルはカラー変更だけだが、新たに加わった「MT-09 SP ABS」は前後に高性能サスペンションを装備することで、より高い次元の走りと質感を実現している。

具体的には“スーパースポーツモデル並みの減衰力を発生する”と表現されたスペシャル仕様のKYB製フロントサスペンション、および、フロントとのバランスを合わせた上でバネレートと減衰力を最適化したOHLINS製リアサスペンションを採用。前後ともフルアジャスタブルタイプとなっている。

さらに細かく見ていくと、フロント側のKYB製サスペンションは左右両側に伸側と圧側の減衰力調整機構を装備し、特に圧側には「高速」と「低速」の2つのアジャスターを備えている。つまり、ストロークスピードに応じて多様な路面状況と走り方に対応したセッティングが可能ということ。

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▲MT-09 SP ABS

また、リヤ側のOHLINSはプリロード調整にリモートアジャスターを装備し、特別な工具を使わず素早く簡単にセッティング変更が可能。減衰力も伸側30段階・圧側20段階という細かな調整ができる本格的なタイプだ。

これ以外にも「SP」には質感の高いダブルステッチ入りシートや、ネガポジ反転マルチファンクションメーター、「MT-10 SP ABS」と同じ専用の高品質な塗り分け塗装を採用することで上級仕様としてのハイグレードな存在感を強調している。

元来の3気筒のクリアな鼓動感とレスポンスに優れるトルクフルなエンジンに加え、スーパースポーツ顔負けの強靭な足まわりを得た「SP」は、パフォーマンス的にもクラス最強レベルの走りを見せつけてくれることだろう。

気になる価格だが「MT-09 SP ABS」が111万2,400円(税込)ということで、「MT-09 ABS」の100万4,400円(税込)に対しても、かなり魅力的なプライスタグが付けられていることも嬉しい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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