基本は現金とクレジットカード…二人以上世帯の代金支払い方法の移り変わりをさぐる(2020年公開版)
少額は現金、金額が大きくなるとクレジットカードも
対価支払いには現金だけでなくクレジットカードや電子マネーなど、多彩な手段を用いることができる。二人以上世帯における、お金の決済手段の移り変わりと現状を、金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。
まずは直近2019年における、金額別主要決済手段。4つの選択肢のうち「主なもの2つ」を答えてもらっている。
二人以上世帯の場合、小口決済でも電子マネーなどが使われる状況はあまりない。大体が現金支払いで、金額が大きくなるに連れ、クレジットカードの比率が高くなる。1万円を超えると現金以上の使用率にまで上昇する。
ここで、電子マネーの利用頻度の低さに首をかしげてしまいそうになる。スマートフォンの普及、対応店舗数の拡大に伴い、少額決済が便利な電子マネーはもっと普及しているはずではないか、と。
質問用紙を確認すると、文言には「あなたのご家庭では、日常的支払い~」とある。つまり世帯構成員のプライベートでの支払いではなく「世帯全体の家計として」との認識で回答している可能性が高い。
クレジットカードを家族全体の買い物に使うことはあっても、基本的に個々の持ち物である(スマートフォンなどの携帯電話に組み込んでいる)電子マネーを「家庭全体向けの」買い物に使うことは多くない。電子マネーは「家計全体のお財布」ではなく、「世帯構成員本人のお小遣い・お財布」的な要素が強い(例えば無断で自分の電子マネーで、妹の漫画雑誌や家族全員の夕食の材料を買われたら、怒らないはずが無い)。そのように考えれば、二人以上世帯で電子マネーの「日常的支払」比率が低いのも納得できる(必然的に家庭(世帯)の支払い=個人の支払いとなる単身世帯では、電子マネーの利用頻度も高い結果が出ている)。
それでも少しずつ増える電子マネー利用率
二人以上世帯では現金とクレジットカードが主流で、電子マネーなどはあまり使われない。これが基本となるが、時代の流れとともに少しずつ変化も見受けられる。
グラフには直近分を含め過去12年間の値を反映させたが、12年の間で現金の値は各金額領域で漸減し(ただしごく少額の支払いにおいては現金の値はあまり変わらない)、クレジットカードや電子マネーの利用が少しずつ増加しているのが分かる。特に電子マネーは2010年以降急増しており、「おサイフケータイ」普及が大きなトリガーとなったことは容易に想像できる。また、その時期においてもクレジットカードの少額決済での利用頻度は落ちておらず(むしろ増加中)、現金の比率が1000円超の金額では減少していることから、「おサイフケータイなどの電子マネーが現金の代わりに(少しずつながらも)使われ始めた」と考えれば道理は通る。
また電子マネーの動向を詳しく見ると、5000円以下ではますます利用率が高まるのに対し、それを超えると利用率の上昇度合いは半ば足踏み状態。少額決済の便利ツールとしての認識が強まり、クレジットカードとの使い分けが進んでいるようだ。
なお今調査の直近年分は2019年6~7月に実施のため、キャッシュレス・消費者還元事業の影響は生じていない。2020年分ではクレジットカードや電子マネー・デビットカードの値が大きく伸びるに違いない。
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※家計の金融行動に関する世論調査
直近分となる2019年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2019年6月14日から7月23日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は40.3%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する人に対し、2019年6月21日から7月3日にかけて行われたもので、対象世帯数は2500世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。