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「洪道場100段突破記念祝賀会」に行ってきました

内藤由起子囲碁観戦記者・囲碁ライター
洪清泉四段と洪道場出身棋士で記念撮影=2024年7月15日、筆者撮影

一力遼棋聖、芝野虎丸名人、藤沢里菜女流本因坊らを育てた洪道場出身棋士の段位が合計100段を突破したことを記念して、7月15日に祝賀会が行われました。31人の棋士と道場生、スタッフや師範の棋士たちとともに関係者が多く集まり、ペア碁ありサイン会ありと賑やかで温かい雰囲気になったのは、ひとえに主宰する洪清泉四段のお人柄によるところでしょう。清泉四段が韓国から日本に来てちょうど20年の節目の慶事となりました。

2009年に平田智也八段が洪道場出身棋士で初めてプロ入りしてから15年、現在は31人で合計106段となりました。平田八段は「ここまでくるとは、当時想像もしていなかった」と感慨深げ。洪四段は「皆さんの応援があったからこそ」と感謝を述べていました。

洪道場は日々修行の場です。

例えば一力棋聖や平田八段の師匠は宋光復九段、藤沢女流本因坊の師匠は藤沢秀行名誉棋聖と、師匠がばらばらの仲間たちが集まって切磋琢磨しています。洪四段は「大事なお弟子さんたちを預からせていただいた」と、師匠らとの信頼関係なくしては今日がなかったと語っていました。

当日は、出身プロ棋士だけでなく現在修行中の子どもたち、その親御さん、師範やスタッフに加え、囲碁界で活躍する多くの人々が集まりました。

私の斜め前に座っていた道場生のお母さんが、息子のこれからを心配している話をしていました。

プロになれるか、なれなかったらどうするか、どこまでがんばったらいいのか。親としても悩みはつきないものですね。

そのお母さんの真ん前に座っていたのが、囲碁インストラクターのNさん。Nさんはトップアマのひとりで、若い頃はプロを目指して修行していましたが断念し、今は息子さんが洪道場に通っているのをサポートしています。

Nさんいわく、「プロになるチャンスがあるのなら、本人がギブアップするまで挑戦させるべきです。僕も自分であきらめるまでやりきりました。がんばりきった努力は、のちのどんなことにも生きます」と話していました。

体験したからこそできる話ですね。文字にしてしまうとそれまでですが、その場で熱く語っていた様子を見ていて、とても感動しました。本人が納得するまでやらせるというのが重要だということ。

囲碁は盤上では決断、選択の連続です。自分の人生は自分自身で決めることが大事なのですね。

私たちライターは、プロになったいわば成功者に主に話を聞いていますが、このような方々にもスポットを当てるべきだと強く思いました。

洪道場出身の一力遼棋聖、芝野虎丸名人そして藤沢里菜女流本因坊ら皆、人としてもとても好感が持て、ファンの皆さんからも愛されるお人柄です。囲碁の修業を通して、魅力ある人間に成長していっていることも、洪道場のすばらしさといえると改めて感じた1日となりました。

囲碁観戦記者・囲碁ライター

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。著書に『井山裕太の碁 AI時代の新しい定石』(池田書店)『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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