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「爆発で体がバラバラに」脱北者の命を奪う中朝国境の地雷原

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
軍事境界線に北朝鮮が仕掛けた地雷が爆発した瞬間。詳細は↓(韓国軍合同参謀本部)

 国境を越えて脱北を試みるも、国境警備隊員に銃撃されたり逮捕されたりしてあえなく断念する事例は以前からあった。最近になって増えているのは、地雷を踏んで死傷する事例だ。

 咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、先月中旬に茂山(ムサン)で、川向うの中国に渡ろうとしていた5人が、地雷を踏んで死傷する事件が起きたと伝えた。5人が一斉に動けば危険だと判断し、2つのグループに分かれて川を渡ろうとしたものの、両方とも地雷の餌食になってしまった。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

 当局は脱北を防ぐために今年8月から、地雷の埋設作業を行っている。中でも川幅が狭く脱北が多いところには、数多くの地雷を設置した。

 以前に埋設したものは、時間が経ちすぎて踏んでも爆発しないものが多かったが、最近埋設したものは、踏めばほぼ確実に爆発するため、脱北や密輸を試みる人々にとって脅威になっている。埋設した方の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士も度々犠牲になっている。

 別の情報筋は、9月の埋設直後に、別の3人が脱北を試みて地雷を踏んでしまい、即死する事故が起きたと伝えた。

「地雷が爆発して豆満江の方から爆発音が聞こえて、赤い炎が立ち上がった」(情報筋)

 いずれも韓国を目指していたのではなく、なんとか生きていくために中国に出稼ぎに行こうとしていた人たちだったが、「爆発で体がバラバラになってしまい、葬儀もできないほどだった」という。

 川を渡るのに成功したとしても、今度は中国の公安当局が待ち構えている。監視カメラや赤外線センサーを設置し、24時間体制で監視しているため、逮捕されてしまう可能性が非常に高い。

「どれだけ生活が苦しければ死ぬ覚悟をして祖国(北朝鮮)から出ていこうとするだろうか。商売の種銭でもあればなんとか食べていけるが、それすらない人々は死ぬかもしれないことをわかっていながら川を渡ろうとする」(情報筋)

 合法的に中国に働きに行く方法もあるにはある。しかし、思想的に問題のない平壌市民を中心に選ばれ、厳しい監視の中でクラスことを余儀なくされ、給料もほとんどが国からピンはねされる。それならば命がけで川を渡り、薄給であっても働く方がいいのだろう。

 しかし、出稼ぎを終えて帰国するのも命がけだ。地雷原を無事通り抜けたとしても国境警備隊に逮捕されずに国境を通過するにはそれなりの準備が必要だ。また、中国滞在中に捕まって強制送還されれば、儲けたお金はすべて奪われてしまう。そんなリスクがあっても出稼ぎに行こうとするほど、北朝鮮国民は困窮しているのだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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