正社員58.8%、パート・アルバイト29.2%…日本の雇用形態の現状をさぐる
正規・非正規それぞれの人数と比率は
正社員やパート・アルバイトなどの非正規社員の実情はことある度に注目され、論議の対象となる。総務省統計局による社会生活基本調査(※)の公開データから、その実情を確認する。
まずは雇用形態別の人口と比率。直近年となる2016年時点では正規職員・従業員(正社員)は3285.0万人、雇用されている人全体に占める比率は58.8%。役員や自営業者などは該当しない。
今件のようなグラフで必ず受ける誤解が、男性正社員・非正規社員のみをイメージした上で「正社員比率が低すぎる」といったもの。今件グラフは主婦層のパート・アルバイトまでをも合算したもので、例えば男性のみで正社員・非正社員比率を計算すると74.9対25.1となる(女性のみだと39.8対60.2となり、正社員・非正社員率の大小が逆転する)。また昨今では高齢者による定年退職後の契約社員などの立場での再雇用例も増えており、これもまた正社員比率を押し下げる一因となっている。
平均的な労働時間の実情
それぞれの労働形態における、平均的な労働時間は次の通り。正社員は7時間強、契約社員は6時間強、パートは約4時間となる。
今件は土日も含めた上での平均なので、例えば正社員の場合は平均で1週間あたり7時間09分×7=50時間03分働いている。今件には法定労働時間(週40時間)に残業や副業も含まれているため、仮に週休2日制として概算すると、勤務日では毎日2時間ほどの残業・副業をこなしていることになる。かなりハードな状況、かもしれない(一部では「それでもまだ短い」とする意見もあるだろうが)。またパートやアルバイトの就業時間の短さや、派遣社員や契約社員の時間の長さに、それら職種への認識を改める人もいるだろう。
世間一般では「正社員の数が減り、その分非正規社員が増えた」と言われている。それを確認するため、今世紀以降の調査分も合わせ、雇用形態別労働人口の変移をグラフ化する。なお2001年から2006年の調査結果は雇用形態の区切りが簡略化されている(その他非正規社員に契約社員と嘱託が含まれている)ので注意が必要。
雇用されている人全体の数は漸増。正社員は減少傾向だが2016年では微増、パートとアルバイトを合わせた数は漸増。「派遣バッシング」とそれに伴う法改正など社会情勢の変化を受け、派遣社員は2011年に大幅減となったが、2016年は2006年を超える値にまで増加している。
2016年に限れば景況感の改善に伴う労働市場の活性化を受けて、正社員も非正規社員も大きく増加している。減っているのはアルバイトぐらい。ちなみに年齢階層的には正社員は主に若年層が、パートは中堅の女性、契約社員や嘱託や派遣社員は高齢層の増加(上記説明の通り定年退職後の再雇用)が主な増加理由ではある。
総労働量を仕事の総時間でチェック
雇用形態別人口の比率変化、つまり労働市場における正社員・非正規社員の配分の変化に伴い、市場全体の総労働時間(≒全体の労働力)や、個々の労働形態の立場にある人たちの労働時間はどのような変化を示しているのだろうか。併せて直近調査分における前回調査分からの、雇用形態別の一人・一日あたりの平均仕事時間の変化を確認する。
労働者の数は漸増しているが、短時間労働者の非正規社員増加が度合いとしては大きいため、仕事時間総量の伸び方は穏やか。2011年では前回調査比で減少までしている。
そして5年前と比較した、直近年の一人あたりの一日平均労働時間だが、すべての雇用形態で減少している。雇用されている人全体の数の増加ぶりと比べ、仕事時間総量の増え方が穏やかな一因は、それぞれの雇用形態における残業が減ったことによるものだろう。
数字の上でも正社員の比率が減り、非正規社員が増えていることは事実に他ならない。一方で、世間一般に言われているような状況とは異なる実態であることも、今件データからは見えてくる。毎年更新される「労働力調査」の結果と合わせ、正しい現状を認識したいものだ。
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人口動向も含めた正規・非正規就業者数などの詳細をグラフ化してみる
※社会生活基本調査
5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。