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暑さ寒さも彼岸の中日まで 台風13号・14号の北上を妨げ猛暑をもたらしていた高気圧が後退

饒村曜気象予報士
台風14号の東から南東に広がる広大な雨雲(9月18日15時)

台風14号が沖縄直撃

 台風14号が、沖縄本島を通過して東シナ海に入りました。

 中国大陸に上陸して熱帯低気圧になった台風13号の後を追うように進んでいますが、台風13号と違い、速い速度で移動しています(図1)。

図1 台風14号の進路予報と衛星画像(9月19日0時)
図1 台風14号の進路予報と衛星画像(9月19日0時)

 沖縄本島地方と大東島地方では、高波に警戒し、強風、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水、落雷や竜巻などの激しい突風、高潮による浸水や冠水に十分注意してください。

 台風14号の中心付近の最大風速は、台風13号より弱いのですが、東側や南東側には広い範囲の雨雲を伴っていますので、この雨雲の動向にも注意が必要です(タイトル画像)。

 令和6年(2024年)は、台風の発生が遅く、第1号がフィリピン近海で発生したのは、5月26日でした。

 台風の統計がある昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日で、令和6年(2024年)は、史上7番目の遅さということになります。

 7月も平年に比べて台風発生数が少なかったのですが、8月は平年並みに6個発生し、9月1日21時にフィリピンの東で台風11号が、9月5日15時に日本の東で台風12号、9月10日21時にマリアナ諸島で台風13号、9月15日21時に同じマリアナ諸島で台風14号が発生しました。

 台風13号は、西日本から東日本太平洋側に猛暑をもたらしている高気圧に北上を妨げられ、北西進しながら発達して鹿児島県・奄美大島近海を通って東シナ海に入りました。

 台風14号も、西日本を中心に猛暑をもたらしている高気圧に北上を妨げられました。

 と同時に、暖かくて湿った空気の流入が続いています。

9月になっても熱中症警戒アラート

 今年は、気温が高いだけでなく、湿度も高いことから、熱中症になりやすい状態が広い範囲で、記録的に長く続いています。

 暖かくて湿った空気の流入は、日射によって熱中症になりやすい湿った暑さになりますが、同時に大気を不安定にさせますので、局地的に積乱雲が発達し、落雷や局地的豪雨がセットで続いています。

 気象庁と環境省は共同で、全国58地域(都府県毎、ただし北海道・鹿児島県・沖縄県は細分)に対して熱中症警戒アラートを発表しており、9月18日は西日本を中心に22地域に対して発表されましたが、これは9月として最多の熱中症警戒アラート発表地域です。

 そして、9月19日も西日本を中心に13地域に対して発表になっています(図2)。

図2 熱中症警戒アラートの発表(9月19日:前日発表分)
図2 熱中症警戒アラートの発表(9月19日:前日発表分)

 熱中症警戒アラートは発表となっていませんが、関東地方などは、暑さ指数が31以上の「危険」となっている地域がかなりあります。

 暑さ指数31以上の所は、高齢者においては安静状態でも熱中症が発生する危険性が高い地域です。外出はなるべく避け、室内の涼しい所に移動してください。

 熱中症警戒アラートの発表回数は、9月19日の前日発表分までで、のべ1691地域と、早くも記録的な暑さだった昨年を37パーセントも上回っています(図3)。

図3 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)
図3 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)

 例年であれば、9月に入ると、熱中症警戒アラートの発表は殆どなくなります。

 記録的な暑さだった昨年もそうでした。

 しかし、今年は、9月に入っても熱中症警戒アラートの発表が続いています。

 それだけ、今年は、熱中症になりやすい湿った暑さの日が多く、しかも長く続いているといえるでしょう。

東京などで遅い猛暑日の記録

 9月18日に一番気温が高かったのは、京都府・舞鶴の37.9度、次いで、福岡県・朝倉の37.8度で、気温を観測している全国914地点のうち、132地点(約14パーセント)で、最高気温が35度以上の猛暑日でした。

 東京都心でも35.1度と猛暑日となり、明治8年(1875年)6月の観測開始以来、150年で一番遅い猛暑日となっています。ちなみに、これまでの記録は、昭和17年の9月12日でした。

 そして、534地点(約58パーセント)で最高気温が30度以上の真夏日、767地点(約84パーセント)で最高気温が25度以上の夏日でした(図4)。

図4 猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(9月19日以降は予想)
図4 猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(9月19日以降は予想)

 ただ、今週末の9月21日になると猛暑日、真夏日、夏日は、ともに減っています。

 特に、これまで猛暑日や真夏日が減っても、あまり減らなかった夏日が大きく減ってくるのが目立ちます。

暑さ寒さも彼岸の中日まで

 各地の10日間予報を見ると、西日本から東日本で猛暑日は21日の土曜までで、その後は、最高気温が30度前後の日が続く見込みです(図5)。

図5 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図5 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 北海道を除いて傘マークの日も多くなり、そろそろ秋雨の季節に入りそうです。

 「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があります。

 冬の寒さ(余寒)は春の彼岸の入りの頃(3月20日前後)まで、夏の暑さ(残暑)は秋の彼岸の入りの頃(9月20日前後)までには和らぐという意味です。

 今年の秋の彼岸の期間は、9月19日から25日までですので、彼岸の入りが9月19日、彼岸の中日(ちゅうにち)が9月22日で(秋分の日)ということになります。

 多くの地方では、9月19日でも気温が高く、「暑さも彼岸まで」とはならない予報ですが、彼岸の入りのあとに秋雨前線が南下して気温が下がりますので、「暑さも彼岸の中日まで」ということにはなりそうです。

 ウェザーマップが発表している東京の16日先の天気予報をみると、9月20日と21日は最高気温が35度以上で、9月18日に記録した遅い猛暑日の記録を更新しそうです(図6)。

図6 東京の16日先までの天気予報
図6 東京の16日先までの天気予報

 しかし、降水の信頼度が、5段階で一番低いEや二番目に低いDが多い予報ですが、秋分の日以降は最高気温が30度を超えない予報となっています。

 これまでが異常に暑かったことから、肌寒く感じられる方が多いと思いますが、これで平年並みです。

 季節の変わり目ですが、長く続いた暑さによって、体が弱っていることが考えられます。十分な栄養補給と休養をとって、実りの秋を迎えて欲しいと思います。

タイトル画像、図1、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:環境省ホームページ。

図3の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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