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居住可能な惑星が地球以外に存在する?太陽系外スーパーアースの大気中から水蒸気を検出

木村正人在英国際ジャーナリスト
K2-18b(手前)の図(C)ESA/Hubble, M. Kornmesser

[ロンドン発]居住可能な温度の「スーパーアース(巨大地球型惑星)」の大気中から水蒸気が世界で初めて検出されました。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のアンゲロス・チアラス博士らの研究で分かりました。

論文は天文学専門誌ネイチャー・アストロノミーに掲載されました。

この惑星は米航空宇宙局(NASA)のケプラー宇宙船によって2015年に発見された地球と海王星の間の質量を持つ惑星、数千のスーパーアースの一つで、「K2-18b」と名付けられました。

しし座。赤い矢印が「K2-18b」を指している(UCLのプレゼン資料より)
しし座。赤い矢印が「K2-18b」を指している(UCLのプレゼン資料より)

地球から111光年先にある、しし座内の赤色矮星「K2-18」の周りを33日の周期で公転しており、地球の質量の8倍、大きさは2倍です。現在、生命を維持できる水と温度の両方を持つ唯一の惑星として知られ、太陽系外にあるそうです。

太陽のように自ら光を発する天体は恒星と言います。質量が小さく暗い赤色の光を放つ恒星が「赤色矮星」です。

ちなみに太陽の光は地球に8分弱で届きます。熱力学温度でみると太陽は6000ケルビン。一方、太陽の半分の大きさの「K2-18」は3500ケルビンです。

上が太陽系の居住可能ゾーン(緑色)、下が「K2-18」の居住可能ゾーンのイメージ(UCLのプレゼン資料より)
上が太陽系の居住可能ゾーン(緑色)、下が「K2-18」の居住可能ゾーンのイメージ(UCLのプレゼン資料より)

「K2-18」と「K2-18b」の距離は太陽と地球の距離より近いけれども、温度が低いので「K2-18」の周囲には太陽系と同じように居住可能ゾーンが広がっているそうです。

研究チームは欧州宇宙機関(ESA)とNASAのハッブル宇宙望遠鏡で収集された16年と17年のデータを使用し、「K2-18b」の大気中を通過した星明かりを分析。その結果、水蒸気の分子的特徴が明らかになり、大気中に水素とヘリウムが存在していることもうかがえました。

ハッブル宇宙望遠鏡(C)ESA/Hubble, M. Kornmesser
ハッブル宇宙望遠鏡(C)ESA/Hubble, M. Kornmesser

窒素やメタンを含む他の分子が存在する可能性があると考えられますが、これまでの観察では、まだ検出されていません。雲の範囲と存在する大気中の水蒸気の割合を推定(0.01~50%のシナリオを想定)するには、さらに研究が必要だそうです。

大気中の水蒸気の割合が50%の場合、大気は水蒸気と水素ガスで構成され、水蒸気の割合が減ると水蒸気、水素ガス、窒素ガスに、水蒸気の割合が0.01%の場合は水蒸気、水素ガス、上空は雲に覆われていると想定しているそうです。

赤色矮星の活動が活発なので「K2-18b」の気象は地球より激しく、人が生存するのに適した環境ではありません。より多くの放射線にさらされる可能性があり、生命のサインは見つかっていません。しかし現時点では「K2-18b」が最も居住可能とみられる惑星の候補だそうです。

論文の筆頭著者、チアラス博士は記者会見でこう話しました。

「地球以外の、潜在的に居住可能な世界で水を見つけることは信じられないほど刺激的です。 K2-18bは“地球2.0”ではなく、かなり重く、大気の組成が異なります。しかしながら『地球は唯一無二の存在ですか?』という根源的な問題に対する答えに近づくことになります」

共著者のインゴ・ウォルドマン博士はこう付け加えました。

「次の20~30年で新しいスーパーアースがたくさん発見されるでしょう。潜在的に居住可能な惑星は多くあり、これは最初の発見に過ぎない可能性があります」

「K2-18bのようなスーパーアースが私たちの銀河で最も一般的な惑星で、太陽よりも小さい赤色矮星が最も一般的な恒星だからです」

次世代の宇宙望遠鏡は、より高度な機器を搭載するため、大気をより詳細に分析できます。 28年に打ち上げられる予定のESAのアリエールによって千の惑星を観察して精密な画像を取得できるようになります。

右からウォルドマン博士、ティネッティ教授、チアラス博士(筆者撮影)
右からウォルドマン博士、ティネッティ教授、チアラス博士(筆者撮影)

UCLのジョヴァンナ・ティネッティ教授は「4000を超える太陽系外惑星が発見されましたが、その組成と性質についてはあまり知られていません。惑星の大規模なサンプルを観察することにより、それらの化学、形成、進化に関する秘密を明らかにしたいと考えています」と話しました。

ティネッティ教授によると、1990年に知られていた惑星は水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星の9つしかなかったそうです。それが今では確認された惑星だけでも4044個、惑星候補は3682個、惑星系は2946もあります。

発見される惑星の数はどんどん増えている(UCLのプレゼン資料より)
発見される惑星の数はどんどん増えている(UCLのプレゼン資料より)

太陽系外に居住可能な世界が見つかるのも時間の問題かもしれません。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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