様子見のFRBの本意とは
10月29日、30日に開催されたFOMCでは予想されたとおり、金融政策は現状維持とし、850億ドルの債券購入ペースを維持する方針を決定した。FOMC後に公表された声明文では、住宅部門の改善は最近数か月でやや減速との表現が加わり、金融状況の逼迫が経済の改善を遅らせる可能性があるとの文言が削除されたが、全体のトーンとしては、大きな変更はなく前回9月の内容をほぼ踏襲した格好となった。
16日間に及ぶ政府機関一部閉鎖の影響で経済指標の発表が遅れただけでなく、景気そのものへの影響も懸念されており、声明文の内容もテーパリング(資産購入規模縮小)開始に向けた姿勢に変化があり、先送りされるイメージが強まるとの見方もあった。しかし、声明文ではそれに対する懸念等は表記されておらず、これにより市場でのテーパリング開始時期の見方に再び変化が現れてきた。
テーパリングの開始の決定は、政府機関の一時閉鎖による経済指標発表の遅れ、さらに一時的なデフォルト懸念も加わっての米経済への影響等を見極めるためにも、年内は難しいとの見方が強まったことで、市場参加者のコンセンサスは年内、つまり12月の決定ではなく、来年3月以降との見方が強まった。ところが、30日のFOMCの声明文のトーンに変化がなかったことで、12月での開始もありうるかとの見方が再び出てきたようである。
バーナンキ議長としては、自ら行ってきた非常手段の幕引きの道筋を自らつけたかったと思われる。それが年内のテーパリング開始に向けた姿勢に現れたとのではなかろうか。ところが、財政を巡る与野党の攻防がFRBが予定したスケジュールに大きな影響を与えた。9月のFOMCでテーパリングの開始を見送くらざるを得なかったことで、市場との対話にも齟齬をきたすようになってしまった。
10月のFOMCの声明文での大きな変化がなかった背景にはいくつかの理由が考えられる。ひとつは、16日間に及ぶ政府機関一部閉鎖による具体的な影響の度合いをまだ完全には把握できておらず、今後発表される経済指標等を含めてそれを確認しなければならないため、憶測的な表現は避け、あえて前回からの表現を繰り返したとの見方ができる。つまり様子見をいったん決め込んだ可能性がある。
しかし、財政問題を巡る与野党対立による政府閉鎖への言及がそもそもなかった。懸念材料として取り上げてもしかるべきではなかったのか。これは年内のテーパリング開始を含め、その可能性を残しておきたい意向があった可能性もある。株価がどれだけ景気の動向を反映しているのかは定かではないが、ここにきてダウ平均やS&P500種株価指数は過去最高値を更新している。もちろんFRBのテーパリング開始予測が先送りされたためとの要因もあろうが、景気そのものも決して悪くはないことも背景にあろう。直近高値とかではなく過去最高値なのである。もし政府機関閉鎖の影響が一時的で、米経済への影響は限定的との認識が出てくれば、12月もしくは1月のFOMCでのテーパリング開始の可能性はありうるのかもしれない。
ただし、米国の債務上限問題は片が付いたわけではない。予算は2014年1月15日までの暫定であり、債務上限引き上げも2月7日までの一時しのぎにすぎない。このあたりを含めてどのような判断を下すのか。今後のFRBの動向も注意する必要がある。