単身世帯と核家族世帯と三世代…世帯構成別の平均世帯所得金額をさぐる(2024年公開版)
世帯の所得はその構成や各世帯の事情によって大きな違いを示す。例えば三世代世帯で稼ぎ頭が複数いれば世帯所得は大きく増え、単身世帯で年金暮らし・財産所得も無ければ世帯所得は小さなものとなる。そこで今回は、厚生労働省の定点観測調査「国民生活基礎調査」(※)の公開値から、世帯における世代構成による、平均世帯所得の違いを確認していく。
次に示すのは、最新値となる2022年分(今調査最新分は2023年に調査が実施されているため、1年を通した所得=年収が確認できるのは2022年分となる)における、世帯の世代構成別の平均世帯所得。全世帯とは今調査の調査対象母集団全世帯における平均。核家族世帯とは親とその子供が基本となる世代構成。ただし子供がいない夫婦のみの世帯も該当する(グラフ中で用いている表現「二世代」と区分するにはやや難があるが、利便上こちらに区分する)。そして三世代世帯とは祖父母・親・子供がいる世帯。
まず目にとまるのは単身世帯の世帯所得の低さ。構成人数が一人のみでは稼ぎ頭が一人しかおらず、さらに昨今では定年退職を迎え年金のみで暮らしている人における単身世帯も増加しており、平均額を押し下げる形となっている。全体では278.7万円、男性は338.4万円、女性は235.7万円。
これが二世代=核家族世帯全体となると、平均額が627.3万円にまで上昇する。勤労世帯が多いことに加え、共働き世帯も多分に加わることが影響している。また夫婦のみの世帯と比べると、子供が加わった世帯の方が額面は上になるが、これは養育費がかさむために共働きをする世帯が多くなる結果によるものと考えられる。
一方、母子世帯や父子世帯などが該当する「ひとり親と未婚の子のみの世帯」の世帯所得は424.1万円。就業者が基本的に一人に限定されるため、所得も限られたものとなってしまう。逆に三世代世帯は就業者、あるいは所得を有する人が三世代にわたる可能性が多分に出てくるため(例えば祖父母が年金所得、親と子供がそれぞれ就労している)、世帯としての所得は大きく跳ねる形となる。
これをデータが取得できる1985年分からの推移で見たのが次のグラフ。項目が多いので、一世代世帯と二世代以上世帯に分けている。縦軸の区分が異なることに注意。
まずは一世代世帯。当然ながら全世帯と比べてかけ離れた低い額しか得られていない。そして全年で男性の方が女性より高い値を示している。
また、全世帯では前世紀末から漸減の動きがある(ここ10年ほどでは微増の動きに転じていた)が、一世代世帯に限ればほぼ横ばい、下げても微弱な額にとどまっている。全体は世帯単位での所得のため、世帯構成世代数の減少が大きく影響していることが分かる。そして直近の2022年では女性の単身世帯以外で下げが確認できる。逆に、女性の単身世帯が上がっているのが印象深い。
二世代・三世代世帯もおおよそ前世紀末、バブル景気の崩壊後あたりをピークとして、今世紀初頭にわたって下げ、それ以降はほぼ横ばいの動きを示している。ただし上昇の気配はなく、三世代世帯や夫婦と未婚の子のみの世帯ではじわりと下げる雰囲気すらあった。他方ここ10年ほどに限れば、底を打ち、緩やかな上昇の気配を示していた。そして直近2022年では、夫婦と未婚の子のみの世帯やひとり親と未婚の子のみの世帯以外での下げが確認できる。特に三世代世帯での減少ぶりが著しい。
各世代構成毎の世帯所得の立ち位置に変化はない。母子世帯・父子世帯に該当する「ひとり親と未婚の子のみの世帯」の所得が、厳しい状態にあることに変わりはあるまい。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2023年6月1日に世帯票、同年7月13日に所得票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収、または政府統計共同利用システムにより回答され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票が4万471世帯分、所得票が4674世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2023年分)は簡易調査に該当する年であり、世帯票と貯蓄票のみの調査が実施されている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。