コロナ休業で危機の映画界。劇場や制作社を政府が支援した韓国の場合
新型コロナウイルス感染症の拡大で緊急非常事態宣言が発令されて、もうすぐ1か月。外出が自粛され、飲食店をはじめさまざまな業種に休業要請が出されている。
映画館も休業要請対象となり、シネマコンプレックスや多くの劇場か休業状態にある。
非常事態宣言が出る前から映画館は外出自粛の影響で客足が遠のき、予定だった大作映画や人気作の公開が延期されたが、それは韓国も同じだ。
韓国では感染者が増加しはじめた2月中旬頃から劇場を訪れる観客数が激減し、公開予定だった映画も続々と延期された。
2月中旬と言えば映画『パラサイト 半地下の家族』が第92回アカデミー賞で作品賞を含む6冠に輝いた直後。日本でも映画はもちろん、メインキャストのセレブ妻を演じた女優チョ・ヨジョンが注目されたりもしたが、韓国でも『パラサイト』で盛り上がっていた矢先だっただけに、新型コロナウイルスの痛手は大きかった。
(参考記事:【写真】『パラサイト』美人奥様役で日本でも注目!女優チョ・ヨジョンの“人生観”)
韓国の映画振興員会によると、2月の観客動員数は前年同月で半減。3月1日〜30日に至っては172万人で前年同時期(1319万人)よりも87.7%も激減したという。売上も前年同期(1203億ウォン)よりも88.2%も少なくなった142億ウォンにとどまった。
こうした状況を受けて、韓国映画プロデューサー組合、韓国映画監督組合など、映画関連団体約15団体が声明を発表。
「韓国映画産業の全体売上のうち約80%を占める劇場売上の減少は、映画産業全体を覆う屋根の崩壊を意味する」として、「新型コロナウイルスにより映画産業崩壊の危機にある。政府の支援が切実だ」と、韓国政府に緊急支援を求めたほどだった。
ただ、韓国政府の対応は早かった。4月1日に「新型コロナ対応経済関係長官会議兼第3回危機管理対策会議」を開き、観光、放送、通信分野と合わせて映画業界への支援も発表している。
例えば劇場の負担軽減のために、映画発展基金の賦課金を一時的に減免することを決定。映画発展基金とは、観客が購入する入場チケットに含まれているもので(チケット価格の3%)劇場は毎月納付する義務があったが、今年2月分から減免するとした。
また、新型コロナの影響で封切りが延期・中止となった映画に関しては今後の公開予定が決まり次第マーケティングを支援し、小規上映館200本余りの映画館で"映画上映企画展"を運営するように支援する方針だ。
さらに、新型コロナの影響で制作が中断された作品20数本に対する制作支援、休業・失業状態の映画スタッフら400人を対象に職務再教育および職業訓練手当てを給付することを決め、新型コロナの猛威が収束し次第、映画観覧の活性化ために100万枚規模の割引券を市民たちに提供することを発表している。
もちろん、これらの支援が十分かと言えばそうではない。
映画館の場合、賃料や人件費などの固定費負担が解決されたわけではないし、コロンビアで撮影されていたソン・ジュンギ主演の『ボコタ』など海外ロケができなくなり制作が一時中断してしまった作品も多く、イ・ビョンホンとソン・ガンホが共演する『非常宣言』など韓国国内で撮影開始だった作品なども予定通りにクランクインできなかった。
それでも映画館の負担を少しでも軽減させ、制作会社への支援はもちろん、映画の世界で働くスタッフたちの保証と雇用問題にも取り組んでいることは評価できるのではないだろうか。
ちなみに映像振興院は4月15日から撮影中の長編映画に対して最大1000万ウォン(約100万円)を助成し、撮影現場の防疫消毒および感染予防に努められる支援も行っている。
日本ではまだ映画界への具体的な緊急支援が出ていないが、苦境の立つミニシアターなどを救うためにも、ぜひとも何らかのアクションを期待したいものだ。