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ハリル・ジャパンの6月Aマッチを韓国メディアはどう伝えたか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国メディアも清武の先制点は高く評価していたが……。(写真:フォトレイド/アフロ)

“ハリル・ジャパン”が初のタイトル獲得を目指して臨んだ『キリンカップサッカー2016』の戦いぶりは韓国でも報じられた。

例えば初戦のブルガリア戦。香川真司と吉田麻也の2ゴールなどで7-2の大勝を収めた結果は、こんな見出しが付けられている。

「香川-吉田がマルチゴール。日本、ブルガリアに7-2の大勝、11試合連続無敗」(サッカーメディア『スポータル・コリア』)

「日本、ブルガリアを7-2で大破、“青きお祭りの雰囲気」(スポーツ新聞『スポーツ朝鮮』)

日本がブルガリアに大勝した3日前に欧州遠征に出ている韓国代表がスペイン代表相手に1-6の惨敗を喫し、その後に強敵チェコ戦も控えていたこともあって、日本の快勝を羨むような論調の記事もあった。

『ヘラルド経済』紙は「行き違ったサッカー、日本はブルガリア大破で“ひらひら舞った”、韓国は歴代未勝利のチェコ戦に腐心」と題した記事の中でハリル・ジャパンをこう評している。

「日本サッカーはひらひらと飛んでいる。立て続けのゴールでブルガリアを制した。韓国代表がスペイン代表に6-1で惨敗したのとは明らかに対照的だ。日本の大勝と韓国の大敗。FIFAランキングで見るとブルガリアは69位、スペインは6位で韓国のほうが難しい模擬試験を受けたが、サッカーも結局は心理。韓国としては惨敗の沼から抜け出すための足場が緊要だ」

記事では「日本サッカーの活躍に国内サッカーファンたちの心情も気が楽ではない」とも付け加えられ、実際に記事にぶら下がっている書き込み欄には、「日本人になりたい…」というコメントもあったほどだった。

もっとも、韓国代表が敵地でチェコ代表相手に2-1の金星を挙げると、メディアの論調も一変。ボスニア・ヘルツェゴビナに1-2の逆転負けを喫した日本代表についても詳細に報じた。

「日本、ボスニアに逆転負け…Aマッチ8連勝で終了」(ネットメディア『マイデイリー』)

「日本、ボスニアに1-2の逆転負け…優勝失敗」(サッカーメディア『インターフットボール』)

ネットメディア『デイリーアン』などは「日本-ボスニア、ホームで逆転負けの反応“やはり韓国が…”」と題した記事の中で、「ボスニアは主力が大量に抜けた2軍だった。また、デンマークとの準決勝では延長含め120分戦いPKで勝ち上がった。さらにホーム・アドバンテージなどさまざま面で日本が有利だった。それでも日本はボスニアを圧倒できなかった。カウンター2発に崩れ、逆転負けした。清武は先制点を決めたが、そのほかのチャンスではミスを連発した。もちろん、“欧州組”の本田や香川は抜けたが、2人を除けばほとんどが主力。ハリルホジッチ監督の表情が固まった理由がそこにある」と指摘したほどだ。

それどころか「日本ボスニア、逆転負けに日本の反応“アジアの盟主は韓国”」(ネットメディア『ワールドトゥデイ』)と題した記事では、日本のネット掲示板サイト『2ちゃんねる』に書き込まれた日本のファンたちの反応を翻訳して伝えるメディアもあった。

「アジアの盟主はチェコに2-1で勝った韓国で確定」

「チェコに勝利した韓国がもっと強い」

「アウェーでチェコを破った韓国>>>ホームで2軍に負けた日本」

など、日本のネット住民たちの反応がそのまま記事になった格好だ。

韓国が惨敗すれば日本を羨み、逆に韓国が金星を挙げて日本が黒星に終わると、丁寧にネット住民の反応まで記事にして伝えた韓国メディア。日本でも韓国のことが比較対象としてなにかと引き合いに出されるが、日韓が対照的な結果に終われば終わるほど、その論調の振り幅も大きくなる。6月のAマッチデーは、そんな日韓の宿命を浮き彫りにさせたと言えるのではないだろうか。

(初出:『サッカーダイジェストWEB』【韓国メディアの視点】一喜一憂の6月Aマッチ。惨敗で「日本人になりたい…」が、金星で「韓国>>>日本」に 6月9日掲載)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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