大学生の2015年9月末時点での内定率は66.5%で前年同期からマイナス、解禁日の後ろ倒しが原因か
採用選考活動の開始時期の後ろ倒しで負担増、内定率にも影響?
厚生労働省は2015年11月20日、2015年度(平成27年度、2015年4月1日から2016年3月31日)における大学や短期大学、高等専門学校、専修学校の新卒者就職状況に関する最新調査結果を公開した。それによると2015年10月1日(9月末)時点の大学卒業予定者の就職内定率(就職希望者に対する就職内定者の割合)は66.5%となり、昨年同時期と比べ1.9%ポイントの悪化が見られたことが明らかになった。つまりそれだけ同じ時期における就職状況が悪化したことになる。
今回の調査結果では大学で全般的にマイナス値が出ているが、これはいわゆる解禁日(民間企業の大学・短期大学における学生の採用選考・面接解禁時期)がこれまでの4月から8月へと大幅に後ろ倒しとなったことが影響している。今発表リリースと同時に発表された「平成27年度就職・採用活動時期の変更に関する調査結果について(速報版)(10月1日現在)(文科省)」でも、就活の実質的な負担増加、時期の長期化、卒論制作へのリソース不足など、マイナスに作用したとの意見が多分に出ている。
これを受けて経団連では選考開始のスケジュールについて、2016年からは6月に前倒しする旨の発表を行っており(「記者会見における榊原会長発言要旨(経団連、2015年11月9日)」)、今後も学生の就活は大人の事情に振り回されそうな感は否めない。
国公立と私立大学、男女別に見ると
このうち大学(国公立・私立の合計、個別)にスポットライトを当て、男女別にその動向を確認したのが次のグラフ。
今グラフで対象とした区分においては、前年同期比で上昇を示したのは皆無。解禁日の影響が性別・大学種類別を問わず生じていることが分かる。
元々10月1日時点では男性よりも女性の方が内定率は高い傾向にあるため、同等の影響が生じるならば女性の方が%ポイントでは下げ幅が大きくなるのが道理だが、国公立では男性の方が下げ幅が大きくなってしまっている(男性はマイナス3.2%ポイント、女性はマイナス0.1%)。国公立大学の男子学生の苦痛が数字からにじみ出てきそうではある。
中長期的な動向
厚生労働省が定期的に発表している今件就職(内定)率において、過去のデータを逐次抽出し、金融危機ぼっ発直前からの動向を推し量るため、過去11年間における動向をグラフ化したのが次の図。リーマンショック後下げ続け、2011年3月卒分を底とし、それ以降は少しずつ回復基調にある状況が容易に把握できる。それだけに、今回解禁日の大幅後ろ倒しに伴い就活学生側に混乱が生じ、2年前と比べればまだ上だが、内定率が落ちてしまったのは残念でならない。
大学生などの就職(内定)率は、その時の経済状態や企業の景気判断、とりわけその時点の景況感では無く、今後の見通し的なものと深い関係にある。現在景気が良くても、今後の見通しに不安があれば、わざわざ人材を増やしてリスクを底上げする酔狂さを持つ企業はさほど多くない。逆に企業の先行きが明るければ、それを見越して事業拡大を図るため、人材の追加確保に勤しむことになる。
つまり学生諸子の就職率を底上げし、安定化させるには、(非常に大雑把な話ではあるが)景気回復こそが一番の対策となる。それと共に安易な、大人側の一方的な思惑で人生設計を揺るがすような変更をスナック感覚で行うことなく、十分な思慮の上での決定が求められよう。
■関連記事: