アベノミクスと黒田バズーカ2で相次ぐ「円安倒産」
日銀の「黒田バズーカ2」で円安が急速に進む中、10月の「円安関連倒産」(負債1千万円以上、法的整理のみ)が39件にのぼり、昨年1月以降で最多を記録したことが11日、帝国データバンクのまとめでわかった。
青色の棒グラフが倒産件数、オレンジ色の折れ線が負債総額だ。先月末の黒田バズーカ2でさらに円安は進んでいる。日銀の通貨安政策で、倒産に追い込まれた中小企業の経営者は泣くに泣けない心境だろう。
円建ての奨学金でロンドンに留学している若者からは「これ以上の円安は勘弁してほしい」「黒田バズーカ2でも死にそうなのに、消費税先送り解散でさらに円安が進むと予算オーバーになる」と悲鳴が上がる。
ひと昔前、日銀関係者から「急激な為替変動は経済にマイナス。変動を和らげるため為替介入するのは正当だ」という解説を聞かされたことがある。しかし、今や日銀の異次元緩和が急激な為替変動を招いている。
帝国データバンクによると、2014年1~10月の累計では倒産件数は 259 件にのぼり、前年同期(92 件)の2.8倍。円安は電機、自動車など輸出関連企業の業績改善につながるが、原材料を輸入する中小・零細企業には致命的な打撃となっている。
中小・零細企業は円安による原材料価格の高騰を価格に転嫁しづらい。安倍晋三首相が経済政策「アベノミクス」をぶち上げて以来、円安が進み、原材料価格の上昇、電気料金の高騰などで経営が悪化した。
黒田バズーカ2で一段と円安が進み、今後、円安関連倒産が本格化する恐れがある。
名目賃金は上昇しても実質賃金は下がる一方。厚生労働省の速報によると、9月の現金給与総額は前年比0.8%増の26万6595円となり、7カ月連続で増加したが、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比2.9%減と15カ月連続でマイナス。
4月の消費税増税による反動減は想像以上に深刻だった。だから消費税の再増税を先送りして解散という流れになってきた。永田町でいったん解散風が吹き始めると、止めるのは難しい。
11月のNHK世論調査では政党支持率は自民党が36.6%、野党の民主党が7.9%。今、解散すれば自民・公明の連立与党は勝てるという算段だ。
アベノミクスと黒田バズーカ2で設備投資のため銀行の貸出が増えたという話は聞かない。貿易赤字は27カ月連続。1万7千円台となった日本の株式市場のシェア6割は外国人投資家。
アベノミクスで笑ったのは輸出関連企業と外国人投資家、安倍首相。インフレで政務債務が目減りした財務省もさすがに、消費税再増税先送り解散となると複雑だろう。
安倍首相は政権を浮揚させるために日銀を動員、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用を見直し、法人税の引き下げ。さらには消費税再増税先送りのため解散という「奥の手」まで繰り出そうとしている。
危機は非連続的に起きると言われるものの、長期金利は0.5%を下回ったままだ。長期金利と株価をにらんだ安倍政権の高笑いはいつまで続くのか。
(おわり)