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兵役チャン・グンソク「出待ち禁止」と「違反者は出入り禁止」の背景と妥当性とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
チャン・グンソク(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

韓国の成人男子の義務である“兵役”を務めるために、芸能活動を一時中止している人気俳優チャン・グンソク。そのチャン・グンソクの所属事務所が昨日8月1日、公式ホームページに「警告」とも受け取れる異例の要請をファンたちに行なった。

「チャン・グンソクの配属先に訪れたり、出退勤の姿を見たいという理由で道端に立ったり建物の近くで待ち伏せしないようにお願いしたい」と、したのだ。

今はスターではなく「兵役中」の身

要するに“出待ち”はしないでほしいということで、この要請に一部のファンからは当惑の声も上がったというが、所属事務所の要請は当然だろう。

というのも、まずチャン・グンソクは今、スターでも芸能人でもなく「兵役」を務めている。

かねてから兵役の入隊時期に関して注目され、一時は兵役免除の資格獲得に動いているという憶測も流れたこともあったが、“躁うつ病”を患っていたことを告白したうえで兵務庁の兵役判定検査で4級判定を受けた社会服務要員として兵役を務めている。

(参考記事:「えっ、そんな理由で?」兵役を免除された20人の韓国芸能人を一挙紹介!!

チャン・グンソクだけではなく、人気俳優イ・ミンホらも務めている社会服務要員とは国家機関、地方自治団体、公共団体、社会福祉施設で社会サービス業務や行政業務などに従事することが兵役と見なされる制度だ。

チャン・グンソクは7月16日から4泊5日の社会服務基本素養教育を受けたあと、7月27日に所属事務所の発表によって配属先も明らかになった。

ソウル消防災害本部に勤務しているグンちゃん

チャン・グンソクが配属されたのは、ソウル消防災害本部。日本で言うところの東京消防庁だ。

社会服務要員は軍隊での兵役生活と違って、自宅から通勤でき土日も休めるなど一般社会と隔離されることはないが、「公務員に準ずる身分」ということになっている。

わかりやすくいえば、勤務している職場の職員と同じような身分だということだ。

(参考記事:チャン・グンソクの「兵役中の給料」はどのぐらい? 一日のスケジュールは?

つまり、チャン・グンソクは消防職員という立場にある。

詳しい任務については明らかにされていないが、ソウル消防災害本部には「消防行政課」「災難対応課」「予防課」「安全支援課」といったさまざまな部署があり、いずれもソウル市内で火災や災害が起きたときには、人命救助優先で出動しなければならない。

そんな一刻を争う場所やその周辺に出待ちの“ファン”が多数いては職務どころではなくなるだろう。

事務所側が「チャン・グンソクの勤務先は、命と安全を扱う場所として普段から一般人の出入りを禁止するほど厳しい規則が設けられている。チャン・グンソクがそこに配置されたことでファンの不要な訪問が発生し、勤務者らに迷惑がかかる場合、チャン・グンソクに深刻な不利益を及ぼす恐れがある」として出待ちをせぬよう促すのも当然なのだ。

ストーカーよりも恐ろしい“サセン”たち

チャン・グンソクのことを想う多くの賢明なファンたちが、事務所の発表に理解を示しているはずだが、ただ、本当にごく一部だがその要請を守らない人々がいるのも事実なのだろう。いわゆる“サセン”ファンたちだ。

「サセン」とは、漢字で書くと「私生」となる。

文字通り、「スターたちのサセンファル(私生活)を追いまわすファン」たちのことだ。芸能人が乗った車をタクシーで追いかけたり、家やホテルの前で待っていたりするのは基本中の基本だ。

日本風で言えば“追っかけ”だが、韓国のサセン・ファンたちはときに常軌を逸した行動に出て、スターやアイドルなどを困らせ苦しめる。中には自宅を一日中監視したり、芸能人の留守中を見計らって芸能人の自宅に侵入したりする者もいるほどだ。

チャン・グンソクも、かつてとあるサセン・ファンたちに執拗に追いかけられ、ツイッターなどでその被害を明かし、怒りを露わにしたこともあった。

(参考記事:歪んだ愛情が爆発…!! 韓国アイドルたちの悩みの種、サセン・ファン暴走事件簿

チャン・グンソクの所属事務所は、「ルールを守らない方は現場で摘発し、ファンクラブの強制退会および今後の公演場出入り禁止など、いかなる活動も出来ないよう措置を行なう」と強調しているが、そうした強硬姿勢を示したのは、一部とはいえサセン・ファンたちの行動にも楔を打つためだろう。

静かに見守り待つことも激励であり愛情表現

ファンクラブ強制退会や公演会場の出入り禁止など、言葉にするとかなり厳しい制裁のような気もするが、こうでもしなければ収拾がつかなくなるし、「問題が起きたあとでは遅い」という判断がその決断に踏み切らせたと思うが、チャン・グンソクのことを想ってのことであることは間違いないはずだ。

兵役を務めるチャン・グンソクに一言激励の声をかけたいと思うファンの気持ちがわからないわけではないが、彼が職務に集中できる環境を整えることも愛情表現のひとつではないだろか。

静かに見守り待ち続けてくれることを、チャン・グンソクもきっと願っているに違いない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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