日本代表・田中史朗、フランス代表戦後に語った「スマート」の意図とは。【ラグビー旬な一問一答】
エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチの時代より、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制のいまのほうが頭を使っている。
国際リーグのスーパーラグビーへ初めて挑戦した日本人、田中史朗は改めてそう言った。
4年に1度のワールドカップ日本大会を2年後に控える日本代表は、現地時間11月25日、敵地ナンテールのUアリーナで同大会準優勝3回のフランス代表と対戦した。
32歳のスクラムハーフである田中は5点差を追う後半21分から出場。テンポの良いパスさばきと要所でのキックで、23-23のドローに持ち込んだ。
試合後の取材エリアに出た田中は、記者の質問に応じる形で前体制と現体制の違いを改めて説明。今回のツアー中に見られた成果についても語った。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――改めて、試合を振り返っていただきます。出場の際はどんなイメージを持っていましたか。
「相手のフォワードが疲れていたので、スペースにボールを運んだり、スペースを突いていったり、早いボールを出して(周辺で)ペナルティーを誘ったり…ということをしようとしていました」
――味方のカウンターアタックで前進して間もなく、背後のスペースに鋭くキックを放ったシーンも。
「相手が前に出ていたので、スペースがあったというだけですね」
――11月4日には神奈川・日産スタジアムでオーストラリア代表と対戦。30-63で大敗しています。その時と比べ、何が進化しましたか。
「ディフェンスの部分。ジョン・プラムツリー(新ディフェンスコーチ)が来て、いきなりの(新しい)ディフェンスシステム(の導入)。(最初は)戸惑っていて、オーストラリア代表戦ではいい部分と悪い部分が出たという感じだったのですけど、今回は彼の考え方を理解しながらできていた」
――ジョセフ就任後の1年を振り返って。
「自分たちで考える、ジェイミーのラグビーを理解するという部分ではレベルアップしています。準備の段階で全部が決まっていると言われている。しっかりと準備して、この結果になってしまったのですが、まだまだもっと(向上)しないといけないということ(見方)もありますし、逆に、これだけ準備をしてきたからこういう結果になったというところ(見方)もあります。まだまだ満足してはいけないですけど、昔の日本代表と比べるとレベルアップしているなとは感じます」
2013年から4シーズン、スーパーラグビーのハイランダーズでジョセフの指導を受けている田中は、ジョーンズ率いる日本代表の一員としても2015年のワールドカップイングランド大会に出場。ジョーンズの敢行した苛烈な猛練習には、かねてから一定の理解を示しつつもかすかに異議を唱えていた。
ジョセフと田中が時間を共にしたニュージーランドでは、選手と首脳陣の対話が日常的とのこと。田中は、トップダウンではないシステムの醍醐味と難しさを知る1人でもあろう。
――ジョーンズ体制から異なる方向へ舵を取ったなか、対応の難しさは。
「それは人それぞれだと思います。エディーの時はまぁ、ラグビーが嫌になるようなしんどさもあったんですけど、そこまでしないと勝てないというの(側面)もわかりました。ジェイミー(体制)は、身体はそこまでしんどくはないですが、その分、スマートに。きょうもスマートにスペースへボールを運んで、1人もミスをしなければ後半最初のようにトライを取り切れる(ハーフタイム明けにノーホイッスルトライが決まった)。
どちらがいいとは言えないですけど、できれば、オーストラリアやニュージーランドのように日本全体で(戦術などを共有し続ける)となればいいんですけど、いまはジェイミーのやり方でやるしかない。信じていく。
周りでも、『エディーの時は言われたことをやったらいいだけですけど、いまは自主性(が大事だ)』と考えられている。(普段の選手たちを)見ていても、空いている時間にビデオを観て話し合う時間が多くなった。それは日本のレベルアップだと思います。
リーダー陣がしっかりしてくれていますし、ジェイミーが言うんじゃなく、自分たちからやろうという意識ができてきている。自分たちから日本のためにレベルアップをするという感じです」
ジョセフもフランス代表選後、「いまはスタッフと選手でいい連携が取れている」と発言。今後はその実相に、一層の注目が集まる。