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米ツアー選手が初のコロナ陽性判定。周囲の反応と米ツアーの今後が気になる

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
写真は先週の再開初戦。ワトニー(中央)とマキロイ(右)は一緒に練習していた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

米ツアー選手に初めて新型コロナウイルス感染者が出てしまった。再開2戦目のRBCヘリテージ2日目の朝、体調に不調を感じたニック・ワトニーは自主的にPCR検査を受けたところ、陽性と判定され、即座に棄権。約10日間、近郊で隔離されることになった。

米ツアーは大会開幕前に選手やキャディ、関係者など369人にPCR検査を行ない、その全員が陰性と判定されており、火曜日に検査を受けたワトニーもそのうちの1人だった。だが、わずか3日後に発症し、判定も一転して陽性になった。今後の大会でも、これと同じケースが起こる可能性はある。

【懸案?課題?】

今回、検討すべき問題点も浮上した。米ツアーはPCR検査を受けた選手が検査結果を聞くまでの間、クラブハウスなどの施設の利用は禁じているが、コースや練習場を使用することは認めている。そのため、ワトニーは金曜日のPCR検査後もコースへ行き、練習場にも行っていた。

「練習場でニックを見た」「駐車場でニックを見た」そういう目撃談が多数出ている。その際に濃厚接触がなかったかどうか、誰かと出会ったとしても、その際にソーシャル・ディスタンスを常に保っていたかどうかが気になる。

いずれにしても、PCR検査後にコースや練習場の使用を認めている以上、この問題と懸案は今後も解消されないことになる。

【周囲の反応】

ワトニーが陽性と判定されたことは、すぐさまキャディのトニー・ナバロに伝えられた。初日に同組でプレーしたリーク・リスト、ボーン・テイラーは、すでに第2ラウンドをプレー中だったが、米ツアーのオフィシャルを通じてワトニーの感染が伝えられると、「正直、ショックだ」と動揺を隠せない様子だった。

しかし、金曜日の朝、練習場でワトニーと遭遇し、会話を交わしたというローリー・マキロイは、きわめて冷静だった。

「ニックは距離を取って話をした。感染したとしても、それは仕方のないこと。僕は理解できるとニックに言った」

「今年中にアメリカのコロナによる死者数は20万人に達しそうな状況の中、このPGAツアーでも、いつか誰かが感染することは避けられないとみんな思っていた。誰かは感染する。ニックがその最初の感染者になってしまったが、感染してしまった以上、ニックは自主隔離して、やるべきことをやるしかない。僕らは、あと36ホールのプレーが残っている。そう、試合中の僕らはプレーをするだけのこと。僕はこの場は安全だと感じている」

【手厚いサポート】

ワトニーは、試合会場の近郊で10日間ほどの隔離生活に入ったが、その間、「米ツアーのスタッフがワトニーをフルサポートする」という内容の声明が米ツアーから出されている。

試合会場の近郊となれば、選手にとっては、馴染みの薄い場所であるケースも起こりうるし、今は感染防止対策として、選手の家族やマネージャーも試合会場へは同伴できない規定ゆえ、米ツアースタッフが隔離生活をサポートするというのは、素晴らしい取り組みだ。

しかし、もしも感染者が増えていったら、どこまでもサポートできるのだろうかと心配にもなるのだが、逆に言うと、サポート体制が底をつくほど感染者が増えるようでは、ツアーは続行できないはずだから、それは要らぬ心配と考えたい。

とはいえ、すでに下部ツアーのコーン・フェリー・ツアーでは先週も今週も選手やキャディに感染者が出ており、「米ツアーでも時間の問題かも?」と囁かれていた中で、ついに初の陽性反応が出てしまった。

とりあえず、試合はそのまま続行される予定だが、米ツアーの今後の方針と対策が注目される。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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