カラーテレビの普及率の現状を詳しくさぐる(2022年公開版)
インターネットの普及に伴い大きなゆらぎを見せながらも、今なおメディアとしては絶大な影響力を持つテレビの業界。そのテレビ本体の浸透の実情を、内閣府の消費動向調査(※)の結果から複数視点で確認する。
最初に示すのは、直近2022年の全般的なカラーテレビの世帯普及率。単身世帯は87.5%、二人以上世帯は95.7%。やや単身世帯が低めなものの、実質的には前者が9割近く、後者は10割近くと表現できる。
続いて世帯主の年齢階層別普及率。男女別とクロスしたデータと、男女合わせた値だがより細かい年齢階層区分のデータが取得できるので、双方をそれぞれグラフ化する。
各年齢階層とも単身世帯より二人以上世帯の方が普及率は高い。この理由については上記の通り。また単身世帯では若年層の普及率が低い傾向にある。今流行の「若年層のテレビ離れ」との言葉が当てはまりそうな感もあるが、それでも8割前後の普及率では少々無理がある。もっとも今件はあくまでも普及率=テレビ放送受信機保有率の話で、テレビ番組の視聴状況はまた別の話なのだが。
続いて世帯年収別。実のところ世帯年収別では大きな変化は見られない。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300~400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。
どの属性も100%に近い状態に違いはない。テレビ視聴は基本的に無料(初期投資以外に電気料金は必要。また、有料放送も無料では視聴できない)。そのため世帯年収による普及率の差はほとんど見られない。多少の違いはあれど法則性は無く、また多い少ないも誤差レベル。「テレビは貧富の隔てなく楽しめる娯楽」「もっとも安価な大衆娯楽」との言葉に間違いはない。
最後に時系列的な推移。消費動向調査はかつて二人以上世帯のみを対象としており、単身世帯は別途「単身世帯消費動向調査」で調査が行われていた。そこで単身世帯では一部に「単身世帯消費動向調査」の結果を用いている(現在は消費動向調査の時系列データとして収録されている)。
単身世帯の方が普及率は低い。これは昔も今も変わらず。そして二人以上世帯の普及率が高いまま推移する一方、単身世帯では多少の上下がありながらも、少しずつ値が減っているように見える。
またブラウン管テレビの除外(※※)に伴う普及率の急落だが、単身世帯の方が下落率が大きい。単身世帯ではブラウン管テレビから薄型テレビへの買い換え率が低いと考えられる。外部周辺機器を使うなどでブラウン管テレビでも地デジ放送を視聴することは不可能ではないが、画質などの点であまり合理的ではない。一人暮らしだから我慢できる、同居人の反対も無いといったところだろうか。
ブラウン管除外で大きく下落した後は、少しずつだが元の値に戻りつつあったのも事実。しかし2016年にはブラウン管除外後のピークを早くも迎え、二人以上世帯は急落の後になだらかな、単身世帯ではなだらかな動きの後に急落の形で下落の動きを示している。2014~2016年の動きは半戻しと呼ばれる反動的な動きだったようだ。
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※内閣府の消費動向調査
今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査は毎月1回実施され、その月の15日時点の状況が対象となる。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。
毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2022年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。
※※ブラウン管テレビの除外
消費動向調査では2013年までは薄型テレビとブラウン管テレビの双方をカラーテレビとして対象としていたものの、2014年からは薄型テレビのみを対象としており、ブラウン管テレビは除外されている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。