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【東京都杉並区】荻窪『鳥もと本店』の名物店長が運営するロックフェスが、3年ぶりに開催される!

酔街草エディター・ライター(東京都杉並区)

鳥もと本店

中央線駅近の老舗焼き鳥店の御三家と言えば、吉祥寺『いせや』、西荻窪『戎(えびす)』、そして、荻窪『鳥もと』の名前がすぐ挙ることだろう。

中でも『鳥もと』は、駅近どころか荻窪駅の北口を出たすぐ真横に鎮座していたので、覚えておられる古き呑兵衛諸氏も多いと思う。創業したのは昭和27年(1952年)なのだが、焼き鳥屋の前身は、戦前から営んでいた小さな寿司屋だったそうだ。

荻窪駅の南口に銀行が建設中だった頃。(写真協力:「鳥もと本店」)
荻窪駅の南口に銀行が建設中だった頃。(写真協力:「鳥もと本店」)

当時は、焼き鳥の煙と匂いが駅のホームまで漂い、夕方ともなると帰宅途中のサラリーマンたちが、まるで夢遊病者の如くバラック造りの店内へ吸い込まれていく光景を、よく目にしたものである。

2つの焼き台の前方の大皿には、下焼きを済ませたモツの串が種類ごとにずらりと並べられ、注文を受けてから温め直して出すシステム。立ち呑みスタイルが常套とあって、長居は不粋とばかり、とにかく客の回転が早いのが印象的だった。

「レバーやハツは、タレ〜」「タンやカシラは、塩〜」と部位ごとに味付けは決まっていたのだが、ある日、古参の常連客の真似をして「レバとハツを塩で〜」と頼んで以来、どうやら自分は天邪鬼な客のひとりとして今に至っているようだ。

とある事情があって、この駅前からの移転を余儀なくされたのが平成21年の夏。翌年の6月に2号店が先駆けてオープンし、9月に本店が続くことになった。この移転を契機に焼き鳥専門店だった『鳥もと』は、海鮮や一品料理を取り入れた居酒屋へとメタモルフォーゼして行くのだが、『鳥もと2号店』については、おいおい触れるとして、今回は『鳥もと本店』に焦点を当てるとしよう。

最初に断っておくが、本店の店主は強面でかなり癖の強い人物であるからして、一見で訪れる際は心して臨んで欲しい。

一応、左がメインの表口とされている。冬場は炬燵席が設けられることもある。
一応、左がメインの表口とされている。冬場は炬燵席が設けられることもある。

JR荻窪駅の北口から線路を右手に見ながら阿佐ヶ谷方向へ2分ほど歩く。串カツ屋の角を左に入り、1本目の細い路地を右折すると『もつ焼カッパ』の右隣りに『鳥もと本店』の第1の入り口が見える。

そう、この店は、青梅街道側から荻窪銀座商店街に入って1本目の路地を左折するとすぐにある第2の入り口との2箇所から入店できるという、風通しのいい佇まいなのだ。

カウンターの上段や棚の上には、ミニュチュアカーや日本酒の瓶のコレクションがずらりと並ぶ。
カウンターの上段や棚の上には、ミニュチュアカーや日本酒の瓶のコレクションがずらりと並ぶ。

鰻の寝床のように 細長い店内は、カウンター席を中心にテーブル席やテラス席も用意されており、グループでも幼児連れのファミリーでも利用可能だ。駅前時代からの常連客は、今だに焼き台前で立ち呑みスタイルなのがご愛嬌。

店内のいたるところにディスプレイが施される。*お酒は二十歳になってから!
店内のいたるところにディスプレイが施される。*お酒は二十歳になってから!

店内には屋台を模したようなテーブル席も用意されており、店主の遊び心が店中に充満している感じだ。平日は昼の13時からの営業だが、夕方までは割とまったりとした雰囲気が続く。ただ週末ともなると、昼呑み目当ての客が次から次へと席を埋めて混み合って来る。

「レモンサワー」(ここでは「ハイサワー」が通名!450円)と「皮とピーマン」(1本120円)は、ブレること無き鉄板の組み合わせ!
「レモンサワー」(ここでは「ハイサワー」が通名!450円)と「皮とピーマン」(1本120円)は、ブレること無き鉄板の組み合わせ!

”店は変わっても、焼き鳥の味は壊さない”を信条とする、名物店主ヤスと弟シゲの似顔絵イラストが入ったジョッキグラス。ビールメーカーから無償で提供してもらったものだそうで、本店のトレードマークになっている。

焼き鳥については多くを語る必要はないだろう。昔から変わらぬ味を堪能したいなら、「タレの盛り合わせ」(600円)や「塩の盛り合わせ」(700円)を頼んでみていただきたい。

定番のメニュー以外にも黒板にびっしり!
定番のメニュー以外にも黒板にびっしり!

本店がオープンしてから間も無く、常連客たちを驚かせたのが魚介の登場だった。しかも、並の品揃えではなかった。「マツカワカレイ」(800円)や「時しらず」(1500円)をはじめ、天然のキングサーモンと呼ばれる「マスの介」(2000円)や、1万匹に1匹、獲れるかどうかという幻の鮭「鮭児」(時価)など、超高級魚が今も当たり前の様に黒板の品書きに並んでいる。

北海道出身の店主が、かつて魚屋に勤務していたり、トラックで鮮魚の配送をしていた経験を活かしての産地直送ルート開拓だったそうだ。北海道の「白糠(しらぬか)漁港」で水揚げされた新鮮な魚介類が日々直送されて来るとあって、魚食いにとってはたまらない穴場かもしれない。

「ハーフ3点盛り」は、仕入れ状況によって変わる。
「ハーフ3点盛り」は、仕入れ状況によって変わる。

この日は、刺身の「ハーフ3点盛り」(1200円)を注文。左から「ミンク鯨」、「殻付き帆立」、「赤ホヤ」の面々。あまりの旨さに、日本酒の猪口を置くタイミングを逸してしまうほどだ。

ちなみに、『鳥もと』で供される野菜類も、店主の実家である所沢の農園で育てられた無農薬・有機栽培ものを使用している。この店のこだわりのネタは、どこまでも尽きないのだ。

お銚子に架けられた銘柄札が可愛い!
お銚子に架けられた銘柄札が可愛い!

北海道からの直送ともなれば、いよいよ寒くなって来ると自分の大好物「本ししゃも」の登場となる。「本ししゃも焼き(雌雄2匹)」(800円)、「本ししゃも鍋」(1200円)が楽しめるのだが、入荷のタイミングが合えば「本ししゃもの刺身」(時価)に遭遇できることも!

”東京広し”と言えども、本ししゃもの刺身にはそうそうお目にかかる機会はないだろう。さらに運が良ければ、超限定の「兜焼き」(時価)にあり付けるかもしれない。

「豊盃」の飲み比べができるのも、この店ならでは。
「豊盃」の飲み比べができるのも、この店ならでは。

日本酒にも並々ならぬ強いこだわりがある。青森県弘前市に蔵元がある銘酒『豊盃(ほうはい)』が、ほぼ全種類揃えられているのも、おそらく都内ではこの店だけかもしれない。自分も東北では3本の指に入る好きな銘柄だけに、新酒や秋あがりなど季節ごとの出来栄えを楽しませていただいている。

ただ、”酒良し、肴良し”と、口の肥えた方には良いこと尽くめの店なのだが、調子に乗って呑み過ぎると結構な勘定になるので、その点はくれぐれも注意しよう。

「危険人物」と書かれたリボン胸章がトレードマーク!?
「危険人物」と書かれたリボン胸章がトレードマーク!?

”荻窪界隈で彼の顔を知らないのはモグリ!?”とまで評される名物店主が、この伊與田康博(いよた・やすひろ)氏である。トレードマークのパンチパーマとドスの効いたダミ声は、あたかも任侠映画のワンシーンから飛び出て来たような印象を受けるかもしれない。

客の前でも無頓着に酒を呑み、煙草を燻らせ、従業員を怒鳴り散らすなんぞは日常茶飯事。その光景に慄いて、そそくさと店を後にする客の姿もたまに目にするが、大抵は彼の素性を知らぬ一見客であろう。

店の移転によって遠のいた客を魚介や地酒で呼び戻し、コロナ禍でも「従業員のためだから」と営業を続けるなど、実際は不言実行の好漢であることに太鼓判を押そう。

普段は目に付かないだろうが、駅前から店まで通じる路上を清掃していたり、商店会の会長となって街のために奔走している地道な姿があることも、ぜひ知っておいていただきたい。

さて、彼の熱血ぶりは、ロック・コンサートを主催するまでに至っている。すでに5回に渡って開催されているので、ご存じの方も多いだろう。

駅前の店の時代からの常連客で、荻窪と高円寺にライブハウスを経営するオーナーの粋な計らいで、往年の有名ロック・ミュージシャンが荻窪に集結することになった。矢沢永吉が在籍した『キャロル』をはじめ、『ダウン・タウン・ブギウギ・バンド』、『シーナ&ザ・ロケッツ』など錚々たる人気バンドの元メンバー達が顔を揃える。

「夢みたいな話でしたね。高円寺には『阿波おどり』、隣りの阿佐ヶ谷には『七夕まつり』がある。荻窪にもクラシックの音楽祭はあるけど、それらに匹敵するイベントはなかったんで、何か一発やらかしましょう!と意気投合して・・・」と伊與田氏は当時を振り返る。

『鳥もと本店』が企画・運営の中心となって、2016年に初開催が決まった。場所は、奇しくも元の店があった駅前の広場だった。コロナ禍ではライブハウスでの縮小開催からの中止を余儀なくされたものの、今年はステージを「タウンセブン」の屋上に移して3年ぶりの開催となる。

荻窪ロックフェス2023

開催日時:10月22日(日) 11:00〜

場所:荻窪タウンセブン8F屋上「あおぞらぱーく」

入場料:無料

問合せ:荻窪ロックフェスティバル実行委員会 03-3392-1877

出演者リスト:(順不同)

★BACA-BACCA
内海利勝(exキャロル)
新井武士(exダウン・タウン・ブギウギ・バンド)
長洲辰三(ex宇崎竜童BAND)
松本照夫(exウエストロードブルースバンド)

★藤井美陽BAND
藤井美陽
浅田孟(exシーナ&ザ ロケッツ/ARB)
Tsutomu Rodoriguez
小川トオル

★Ryu The Daddy Band

★リトル南椎&RUDIE JAP

★加藤喜一&箱崎昇(ex.SALLY) feat 山崎真也 川口伸王 村山政太

★BOBOBO LTD

★THE BRICK'S TONE

DJ/春太郎DYNAMITE/NICEONEKAZ
MC/エミィ松澤、伊與田 康博(鳥もと本店)

店主とは駅前時代からの旧知の中。彼の実直で豪放磊落な性格を知れば知るほど親しみが湧いて来るから不思議だ。何かと世知辛い今の世の中、こんな個性的な店主がいる酒場がひとつぐらいあってもいいと思うのだが、いかがだろうか?

鳥もと本店  Rettyページ

住所:東京都杉並区上荻1−4−3

電話:03-3392-0865

アクセス: JR中央・総武線荻窪駅北口より徒歩3分

営業時間: [月火木金]13:00~24:00[土]12:00~23:30 [日・祝]12:00~23:00

定休日なし(10月〜)

公式サイト:鳥もと本店

エディター・ライター(東京都杉並区)

中央線沿線の街並みとお酒をこよなく愛する、元・雑誌編集者です。長年に渡って杉並区の荻窪に在住。居酒屋をはじめ、グルメに関する話題・スポットを中心に、皆さんの役に立つ情報を発信して行きます。

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