全米プロでは試合中も距離測定器の使用OKとなった、その背景とは?
全米プロを主催するPGAオブ・アメリカが驚きの発表をした。今年の全米プロからは、本戦中も距離測定器の使用を認めるというもの。全米女子プロや全米シニアプロでも使用を許可し、さらには、コンパスの使用もOKにすることを決めた。
とはいえ、距離測定器の使用そのものは、ゴルフルールをつかさどるUSGA(全米ゴルフ協会)が「カジュアルなプレーや試合では使用してよい」と定め、実際、USGAが主催する全米アマチュアでは2014年から試合中もその使用を認めていた。
しかし、それでも多くのプロの大会では、ローカルルールとして「試合中は距離測定器の使用はできない」とされていたのが実情。米PGAツアーでも、練習ラウンドでは使用できるが、試合の4日間は使用できないとされており、USGAが主催する全米オープンでも、そして全英オープンでも同様に試合中は許可されていない。
その背景には、プレーの手助けとなる道具を試合で使うこと、それを許可することには、やっぱりどこかに抵抗感があるからだろう。長年、NGとされていたことをOKと捉えることに抵抗感があることは当然である。
それなのに、なぜUSGAが2006年に「OK」と定め、そして今回、PGAオブ・アメリカが初めてメジャー大会の本戦中でも「OK」と決めたのか。
その最大の理由は、プレーペースの迅速化のため。つまり、スロープレー対策だ。
距離測定器が使用できれば、もはや選手やキャディは予期していなかった場所、あるいは予想外の状況下、グリーンやピン、あるいは別のターゲットまでの距離を知るために、いちいち歩測しなくて済む。迅速にプレーを進行する上で、この道具が役立つという点が何より重視されたからこそ、使用が認められたのだ。
それゆえ、条件も付けられている。距離測定器にはレーザー方式やGPS方式、あるいは双方のミックスタイプもあり、その種類にもよるのだが、測定可能な項目は、距離、方向、高低差、風向き、グリーンのスピード、クラブ選択等々、多岐にわたる。
だが、今回、「距離測定器で調べても良い」とされたのは「距離と方向」のみ。それ以外の項目は、スイッチをオフにして情報が入ってこない(見えない)状態にすることが条件付けられている。
しかし、うっかりオフにし忘れることもあるため、あらかじめ「距離と方向」以外の情報が得られない距離測定器を使うことが推奨されるのだそうだ。
そのあたりの理解や認識が徹底されなかったり、混乱を招いたりする心配もあると言えば、ある。だが、長年の懸案であるスロープレー撲滅のために、距離測定器が役立つから使用OKというのが、PGAオブ・アメリカが出した結論だ。
それを、どう受け止めるのかは、今後のそれぞれのツアーや大会の判断に委ねられる。果たして、他のメジャー大会や米ツアーはどうするのか。今後の行方に注目したい。