健康意識と医療サービスの利用実情をさぐる(2019年公開版)
高齢者は加齢により心身が衰えることから、医療サービスの利用頻度が高まり、健康への意識も強いものとなる。それらの日本と諸外国の実情を、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」(※)から確認する。
まずは日本と諸外国における、60歳以上の高齢者(日本では「高齢者」は65歳以上を指すことが多いが、他国と合わせるために今件では60歳にしている)の、健康についての意識を尋ねた結果。日本では自分自身の状況について、現在健康であると答えた人は約2/3となっている。
韓国の「病気がちで寝込むことあり」がやや多めなのが目に留まる。他は日本とアメリカ合衆国、スウェーデンが同水準で、ドイツの「健康である」が半分程度となり、その分「あまり健康だとはいえないが病気では無い」が多い(57.2%)。今回登場した諸国ではドイツが一番多い値となっている。
もっとも赤系統色の項目は本人の自己判断によるもので、意識の持ち方・国民性や環境要素、厚生インフラの対応も反映されるため、青色と灰色の部分、つまり軽くはない「病気」を持つ割合のみを特に注視すればよい(日本の場合は得てしてネガティブな反応を示しがちだが、今件では他国と変わらない良好な値が出ているのが興味深い)。しかしながらその観点でも、やはり韓国が一番多く、ドイツがやや多めとなっている。
一方自己判断ではなく、実際にカウントできる医療サービスの利用頻度を尋ねた結果が次の図。高齢者自身の健康意識ではアメリカ合衆国やスウェーデンと並び高水準(健康のように見える)だった日本が、韓国と同程度の高頻度での利用傾向(色々と体に支障があるように判断できる)にあることが分かる。
日本の「月一以上の利用」が約6割、「週一以上の利用」が2割強との回答は、最初の「健康意識の回答」とは随分とかけ離れているように思える。
健康面で何らかの自覚症状を持ち、通院を繰り返していても、その通院が日常生活化している(当たり前だと認識している)、「通院しているが健康だ」「通院しているから健康を維持できている」と、各高齢者が考えているのかもしれない。その推測も含め、医療サービスの利用姿勢の点で、他国との差異がある可能性は否定できない。
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※高齢者の生活と意識に関する国際比較調査
直近分となる2015年分は日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンの60歳以上の男女(施設入所者は除く)を対象とし、2015年9~12月にかけて個別面接聴取調査によって行われたもので、各国とも1000サンプル回収を原則としている。5年毎の定点観測調査で、過去の調査も(調査対象国に違いはあるが)ほぼ同じ条件で実施されている。
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