Yahoo!ニュース

出遅れスタートになったとはいえ今季の筒香嘉智に期待したい山本由伸と同じ領域にいる独特の感覚

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ようやくチームに合流できた筒香嘉智選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ようやくチームに合流できた筒香嘉智選手】

 日本の主要メディアが報じたところによると、レンジャーズとマイナー契約を結び、招待選手としてメジャーキャンプに参加することが決まっていた筒香嘉智選手が、ようやくキャンプ地入りしチームに合流できたようだ。

 2月6日にメディア向けにオンライン囲み取材を実施した際に、まだビザを取得できておらず渡米日が決まっていないことを明らかにしていたが、まさかここまで遅れるとは予想もしていなかった。

 レンジャーズは2月20日にバッテリー組に加え野手が加わり、本格的なスプリングトレーニングに突入していたのだが、その際にMLB公式サイトで筒香選手がキャンプ地入りしていないことを報じていた。

 その後日米ともに筒香選手に関するニュースが報じられてこなかったので、3月に入りアリゾナにいる球界関係者に確認したところ、まだキャンプ地に入っていないという連絡を受けていたので、心配していた直後のことだった。

 開幕メジャー入りを目指していた筒香選手にとっては相当不利なスタートになってしまったが、ようやくスタートが切れることを喜びたい。

【シーズン開幕まで与えられるチャンスは限られる】

 実は筒香選手のようにビザ取得が遅れ、チーム合流が遅れて悲しい思いをした日本人選手を取材していた過去がある。

 1999年に横浜ベイスターズからレッドソックスに移籍した大家友和投手だ。彼も招待選手としてメジャーキャンプに参加する予定だったのだが、筒香選手のようにビザ取得が遅れ、オープン戦がスタートした後での合流になってしまった。

 そのためチームとして開幕メジャー入りを争う投手たちに優先的にチャンスを与えたいこともあり、実戦登板まで準備が必要な大家投手をメジャーキャンプに参加させないままマイナーキャンプに回す決定を下されてしまった。

 もちろん大家投手と筒香選手では同じ招待選手ながら、その境遇はまったく違う。大家投手はNPBでも実績もほとんどない若手有望選手として扱われていたのに対し、MLB在籍4年目の筒香選手はメジャーの戦力として期待されているベテラン選手と考えられている。

 とりあえずメジャーキャンプに合流し、準備が整えばオープン戦に出場する機会が与えられることになりそうだが、3月30日のシーズン開幕戦まで残された時間はわずかで、その分開幕メジャー入りをアピールできるチャンスも限られてくる。

【メジャー昇格のチャンスは必ず訪れる】

 ただ開幕メジャー入りを果たせなかったとしても、メジャー昇格できるチャンスは十分にある。前述した通り、レンジャーズはメジャーの戦力になり得ると判断したからこそ、筒香選手とマイナー契約を結んだわけだ。

 今ではどのチームも、40人枠の選手だけでシーズンを乗り切れるとは考えていない。選手の負傷を織り込み済みで、少しでも戦力ダウンを回避するため、実績あるベテラン選手たちをマイナーに置いておくことが常套手段になっている。

 マイナーリーグに回ることになっても、チームからメジャー昇格候補だと考えられる立場をキープしていれば、必ずメジャー昇格できるだろう。そのためにも筒香選手は、彼本来の打撃を披露し続けなればならない。

【オンライン囲み取材で語っていた筒香選手の言葉】

 2020年に念願のMLB移籍を果たしてから、筒香選手はわずか3年間でレイズ、ドジャース、パイレーツ、ブルージェイズの4チームを渡り歩いてきた。

 その間筒香選手らしい打撃を披露できた時期もあったが、負傷なども影響して期待通りの成績を残すことはできなかったし、周囲の評価もかなり厳しいものになってしまった。

 今オフはメディアの間でNPB復帰が囁かれるなど、MLB挑戦続行を決めた筒香選手に驚いた人も少なくなかったのではないだろうか。

 だが前述のオンライン囲み取材で筒香選手の言葉を聞いて、確証はないものの今シーズンの筒香選手に何か期待めいたものを抱き始めている。

 「自分の中でスイングの感覚が良くて、勝負できる状態にあると思います。

 自分の感覚の中で感じているものなのですが、やっと1つにまとまってきたなという感覚があります。体の中に丸さのようなものができてきたような感じです。

 (周りからは)去年より軸がしっかりしているように見えるかなという感じですかね」

【我々とは違う領域にいる筒香選手の感覚】

 すでに球界では有名になっているが、筒香選手はオリックスの山本由伸投手と同じ指導者の下で身体づくりを行い、ウェイトトレーニングを一切取り入れていない。

 中学時代から指導者を信頼し続ける筒香選手は、立ち位置の確認やブリッジ、三点倒立等々、独特のエクササイズを行いながら、身体本来の動きを追求し続けている。

 そのため、筒香選手のみならず山本投手の言葉を聞いていても感覚的な部分の説明が多く、彼らは明らかに一般人が理解しにくい領域で自分たちの身体、エクササイズと向き合っているのが理解できる。

 そんな筒香選手が何か手応えを掴んだと説明しているのであれば、同じ領域にいない我々からすれば、彼の感覚を信じるしかない。後は筒香選手自らが証明するしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事